ネットに溢れる「がん免疫療法」に要注意! ノーベル賞レベルとは“雲泥の差”

カテゴリ:ワールド

  •  画期的研究がノーベル賞受賞!
  •  一方、ネット上に散見する高額治療の効果は?
  •  ぜひセカンドピニオンを!

免疫細胞の“ブレーキ”外す画期的治療法

ノーベル医学・生理学賞の受賞者に、京都大学特別教授の本庶佑先生が選ばれました。
免疫細胞を抑える物質を発見し、がんに対して免疫が働くようにする新たな治療薬開発に貢献したこと等が高い評価を受けての受賞となりました。

健康な人間の体でも、1日に数千個ものがん細胞が出来ていますが、実は免疫細胞が退治して、排除してくれています。
ただ、免疫細胞には、その働きが過剰になって、からだを傷つけないように抑制する「免疫チェックポイント」という“ブレーキ”があります。
何と、がん細胞は免疫細胞に攻撃されると、この「免疫チェックポイント」に信号を出し、免疫細胞に“ブレーキ”をかけて、攻撃を抑えてしまうことがわかってきました。

攻撃力の弱った免疫細胞をかいくぐり、がん細胞は大きく成長してしまう訳です。
本庶教授は、この免疫細胞のブレーキを担う物質の一つが「PD-1」というたんぱく質であることを突き止めました。
そこで、体内で「PD-1」が働かないようにする⇒免疫細胞の“ブレーキ”が外れる⇒再び免疫細胞が活性化⇒がん細胞を退治…という、画期的ながん治療薬「免疫チェックポイント阻害剤」=『オプジーボ』が開発されたのです。

従来の抗がん剤は、がん細胞を直接攻撃するというものですが、「免疫チェックポイント阻害剤」は、自身にある免疫力を高めて、がんを退治するという、全く新しい発想から生まれました。
日本では7種類のがんに対して治療が認められ、米国など60か国以上でも承認されています。また、さらに多くの種類のがんで臨床試験が進んでいます。

成果出せない“黒歴史”が続いた…

実は、「がん免疫療法」は、数十年前から多くの試みが行われてきました。
しかし、期待を集めるものの、思うような効果は得られないまま終わる・・・ということの繰り返しだったのです。
だからこそ、本庶教授の研究成果や『オプジーボ』の開発は画期的なことだったのです!
現在も、複数の「がん免疫療法」と呼ばれるものがありますが、これまでの研究では、ほとんどの「がん免疫療法」では治療効果が認められていません。
一昨年、日本臨床腫瘍学会が「がん免疫療法ガイドライン」を作成し、本当に効果のある免疫療法とそうでないものを明確にしました。
現在、臨床研究で効果が明らかにされているものは、「免疫チェックポイント阻害剤」などの一部の薬に限られ、ほとんどの「がん免疫療法」は研究開発中という状況です。

ネットに溢れる高額「免疫療法」の実態は?!

にも関わらず、インターネット上には、「がん免疫療法」を提供するクリニックが多数表示されます。『最先端』『末期でもあきらめない』といった文言と共に…。
手術・抗がん剤・放射線という標準治療を受けて、思わしい結果が得られない患者さんにとっては、最後の光明のように見えてしまう気持ちは理解できます。
“わらをもすがる”思いで、こうしたクリニックのドアをたたくケースが多いと聞きます。

では、こうしたクリニックで提供される「がん免疫療法」は、どういったものでしょうか。
多くのクリニックでは、「免疫細胞治療」と言われる施術を行っているようです。
免疫細胞を採取して増強させ、体内に戻すという治療法ですが、本庶教授が開発に携わった「免疫チェックポイント阻害剤」とは、全く違うものです。
実は、「免疫細胞療法」や「がんワクチン療法」の安全性や有効性は確立されておらず、標準治療にもなっていません。「がん免疫療法ガイドライン」にも推奨する治療として記載されていません。
有効性がはっきりしていないため、保険診療としても認められていません。
したがって自由診療となり、クリニックにもよりますが、一連の治療で200万~300万円、あるいはそれ以上も請求されるケースもあるそうです。

セカンドオピニオン得て、見極めを!

今回、本庶教授が「がん免疫療法」の道を開き、ノーベル賞を受賞されたことは素晴らしいことです。
しかし、前段で記載した、高額だけれども有効性が確立していない“免疫療法”まで『画期的で、有効な治療法なのでは』といった誤解が広がることは深く懸念されます。
もし、患者さんやご家族が治療の選択に困り、自由診療での「がん免疫療法」を考慮される場合には、公的制度に基づく臨床試験、治験などの研究に熟知した医師に、セカンドオピニオンを求めることをお勧めします。

『オプジーボ』の効果があるのは、対象となるがん患者全体の2~3割と言われますが、今後 免疫機構の解明が進めば、より多くの患者さんにも有効となるかもしれません。
また、免疫研究の分野においては、日本人研究者が優れた成果を次々と出してきています。
今後も、世界をけん引するような研究が進み、より多くの患者さんに寄与していくことが期待されます。

【執筆:かなまち慈優クリニック 院長 高山 哲朗(医学博士)】

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