妻が姿を消して17年

高橋幸夫さん:
あれから17歳、歳を取って76歳か。疲れた。くたびれたというのが心境。これから展望があるのかといったら無い

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妻の妙子さんが事件に巻き込まれたのは、もう17年も前のこと。

2002年6月3日、高橋さんが仕事から帰ると妙子さんの姿はなかった。風呂場のシャワーは出しっぱなしで、間もなく、電話のベルがなった。

高橋妙子さん:
もしもし、妙子ですけど。身の危険はないから心配しないでください

ーーどうしたん?

高橋妙子さん:
車でぐるぐる連れまわされて、今ちょっとどこまで行っているかよく分からないけど、多分岡山ぐらいだと思います

ーー連れまわされとん?誰に?

高橋妙子さん:
警察に言わないでください

これが、妙子さんとの最後の会話だった。その後、高橋さんの銀行口座から現金700万円が引き出された。
引き出したのは、チューリップハットの33歳の女。

事件後、津山市のアパートから姿を消した。突然消えた主婦と、チューリップハットの女、そして、多額の現金。高橋さんは謎めいた事件の渦中にいた。

高橋幸夫さん:
捜査に協力していただくように、犯人一人でもあげていただけるような方向の報道を宜しくお願い致します

ほどなくして、捜査線上に女と親しくしていた50代の男が浮上。妙子さんを自宅まで運んだことがある元タクシー運転手だ。

警察は男を逮捕し、妙子さんの居場所を聞き出すはずだった。しかし、事件から3週間後、警察の尾行を振り切り、男は公園で自殺。
さらに、女も山の中で自殺しているのが見つかった。。妙子さんの行方を知る手がかりは無くなった。

高橋幸夫さん:
せめて、遺骨だけでも戻ってくることを僕は望んでいる。ここまでやったんだよと僕言ってやりたいね

張りつめた心は限界に

高橋さんの自宅には事件当日、妙子さんがたたんだ洗濯物がずっとそのままにしてあった。高橋さんは「自分の手で片付けることはできない。妙子をこの世からなくすような感じ」と話す。
妙子さんの消息はつかめぬまま。張りつめた心は、限界に達していた。

事件から6年後、高橋さんは自宅を逃れ、子供たちに近い神戸に移り住んだ。そして、失踪宣告を裁判所に申し立て、法律上、妙子さんを亡くなったことにした。

高橋幸夫さん:
生きている妙子という僕の生き方から、限界を感じてきた

高橋さんは精神科の医師を務めながら、犯罪被害者らで作る「あすの会」に参加し、犯罪被害者の権利を守る法律の成立や、刑事裁判に参加できる制度の実現に力を尽くした。もう、誰にも同じ苦しみを味わってほしくない、そんな願いに生きる希望を託して。

高橋幸夫さん:
後に残った者がいかに苦しいか、いかに生きていくかが大きな出来事だろうと、事件はその後の方が大変だなと思うね

自分の居場所を見つけ新たな出発

事件から17年、高橋さんの机に最新の医学書が加わった。週に1回だが、神戸市の診療所で新しく働き始めた。犯罪被害者ではない自分の居場所だ。

高橋幸夫さん:
生きていてもいいんだ。生きる場所がそこにはある。それを求めていた。僕もそこに生きてもいい場所がある。この部屋の外に

17年前に止まっていた時計の針は、いま新しい時を刻み始めた。

岡山県警は妙子さんの発見を最重点に、現在22人態勢で捜査を進めている。情報提供は津山警察署(0868-25-0110)へ。

(岡山放送)

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