北海道・東北のFNN各局が取材した、シリーズ「2025年、コレに注目」。山形は、2024年夏の豪雨による甚大な被害から復興へ歩みを進める観光地・最上エリアに注目した。

寒さを気にせず舟下りを堪能

2024年7月25日、山形県の北部に記録的な大雨が降った。
「大雨特別警報」の発表は1日に2度。全国的にも初めての事態で、被害は住宅や田畑・観光地に及んだ。

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山形・戸沢村の観光の目玉、最上川舟下りもその一つ。運航する「最上峡芭蕉ライン観光」の船乗り場はすっかり水につかり、16隻ある舟のうち11隻が流された。中には、約100km離れた秋田沖で見つかった舟もあった。

最上峡芭蕉ライン観光船頭・山科亨さんは「半分以上使えませんでした。舟底に穴が開いたり、いろんな所がダメになっていた」と、当時の惨状について話した。

川の地形が変わりルート変更を余儀なくされながらも、大雨の1週間後に、残る5隻で営業を再開した。そして2024年10月からは、最上川の名所を望みながら約12kmを1時間かけて下る通常ルートでの運航に戻った。

冬の舟下りの楽しみが期間限定の「こたつ舟」。ぬくもりを感じながら寒さを気にせず舟下りを堪能できる。

船頭のユニークな案内と舟歌を聞きながら、いざ出航。
冬の最上峡は川の左右にそびえたつ山々が雪化粧し、「水墨画」に例えられる美しさ。

そして、「日本の滝百選」の一つ「白糸の滝」。落差120メートルの立派な滝は、年中枯れることも凍ることもない。

最上峡芭蕉ライン観光船頭・山科亨さん:
「うわぁ、きれい」と、本当にストレートな声がすごくありがたいなと。実際には災害の爪あとはいっぱい残っているが、それ以上にこちらが元気をもらっている。

2024年12月、戸沢村の舟下りは「プロが選ぶ水上観光船」で4年連続1位に選ばれた。一度は見てほしい冬の峡谷美だ。

自慢の風呂が土砂に埋め尽くされ…

そして、戸沢村から約20km離れた最上町の瀬見温泉。
江戸時代から続く老舗の宿「観松館」には、2024年6月にリニューアルした大浴場がある。

銀世界となった日本庭園を眺めながらの「雪見風呂」は格別。

しかしこの自慢の風呂が、リニューアルの約1カ月後の大雨で大量の土砂に埋め尽くされた。宿の裏山で大規模な土砂崩れが起き、流れ込んできたのだ。
館内のポンプや浄化槽も壊れ、被害の総額は3億5000万円に上った。

ゆめみの宿観松館・高橋裕社長は「災害直後はかなりひどい惨状だったので、今後どうしていったらいいのかとすごく不安だった」当時の心境について語った。

県の内外から駆けつけたボランティアの協力もあり、約3カ月で土砂の片付けや設備の改修が完了。2024年11月に営業再開を果たすことができた。

こだわりの料理でおもてなし

その「観松館」の自慢は風呂だけではない。料理長が厳選した地元食材にこだわった料理もおすすめだ。

山形のご当地サーモン「ニジサクラ」はお造りで。清らかで豊富な水を引き込んだ町内の養殖場で育てられている。

そして、隣町の特産品「舟形マッシュルーム」は香味焼でいただく。
マッシュルームとエビのムースを交互に挟みガーリックバターで焼き上げた宿の名物。

さらに、営業再開にあたって始めた新作デザート。ドライアイスを使った演出には、「これまで以上にもてなしたい」という恩返しの思いが込められている。

ゆめみの宿観松館・山田公次郎調理長:
中に入ってるデザートの果物は何気ないものだが、目でも楽しんでいただけるように工夫をした

実は、宿の再建にはクラウドファンディングで支援が呼びかけられ、1000万円以上の寄付が集まった。

ゆめみの宿観松館・高橋裕社長は「人に支えられながら商売していたことをあらためて再確認した。恩返しのつもりでおもてなししたい」と話した。

大きな被害に負けず、復興への歩みを進める山形の観光地。訪れてその魅力に触れてみてはいかがだろう。

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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