また、ブレイン・ストーミングの課題でも、目標を設定した集団は、単に「最善を尽くせ」と指示された集団よりも多くのアイデアを生み出すことができていました(※Wegge & Haslam(2005))。

このように、集団場面での明確な目標設定は重要です。個人の社会的手抜きを防ぐだけでなく、チーム全体の成果も向上させるのです。

■1-c:集団の凝集性を高める
メンバーが自分の属する集団自体を重要なものとみなすことも、欠かせないものです。

集団の凝集性(ぎょうしゅうせい)、すなわち「一丸となって課題に取り組む集団の結束力」を強化することは、社会的手抜きを減らす上でも効果的です。

結束力の強化も社会的手抜きを減らす(画像:イメージ)
結束力の強化も社会的手抜きを減らす(画像:イメージ)

異論を許さないような、いわば負の凝集性は集団に悪影響をもたらします。しかし、集団のまとまりのよさ自体はチームが高い成果をあげるために必要なものです。

これまでのさまざまな研究で、凝集性が高い集団では社会的手抜きが生じにくいことが示されてきました(※Karau, & Hart(1998); Karau & Williams(1997); Liden et al.(2004))。また、メタ分析研究でも、自分にとっての集団の評価が高い場合には、社会的手抜きが生じにくいことを示しています(※ Karau & Williams(1993))。

目標を設定することと同じく、集団凝集性もまた、チームワークにポジティブな影響を与えます。集団凝集性を高める取り組みは、社会的手抜きのみならず、チーム全体の成果の向上に寄与すると言えるでしょう。

個人の成果を「見える化」する

【手抜きを抑制するには(2)一人ひとりの成果を「見える化」し、フィードバックを与える】

社会的手抜きを防ぐためには、個人の成果がきちんと見えるようにすることが重要です。自分自身の成果がどれだけのものかが分かることで、「自分が行動しなければ」という意識が高まります。