民主党政権で原発担当相を務め、2021年に自民党に移籍した細野豪志衆院議員と立憲民主党の小川淳也前政調会長は12日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、電気料金値上げ申請をめぐる原発再稼働問題と、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出問題について意見を戦わせた。

細野氏は、「原発が動いているところは電気料金が低いのは厳然たる事実だ」と指摘。液化天然ガス(LNG)などをめぐり世界中でエネルギーの取り合いが起こり、途上国が苦しんでいる状況で、日本には動かせる電源施設があるのに動かしていないことを自覚すべきだとして、安全が確認された原発の再稼働を進めることは「国際的な責任だ」と強調した。

小川氏は、原発の新設やリプレース(建て替え)などは認めず、将来的な「卒原発」を改めて主張。再生可能エネルギーの活用や省エネを強力に進めるよう訴えた。

一方、福島第一原発で発生する原発処理水の海洋放出について、細野氏は処理水の安全性を重ねて強調。万が一風評被害が起きた場合などを念頭に「補償もすべきだ」との考えを示した。政府は今年春から夏にかけて放出したい意向だ。

小川氏は、「安全と安心は別だ」と指摘。「長い影響(を見れば)、安全だと言い切るのはわからない。基準はそうだ(満たしている)と言うのにとどめるのが誠意ある態度だ」と述べ、政府の姿勢を批判した。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
電気料金の値上げ申請の状況を見ると、複数の原発が稼働している関西電力や九州電力は値上げ申請をしていない。原発が動いていないところが値上げ申請をせざるを得ないという構図が見える。
            
細野豪志氏(元原発相、自民党衆院議員):
原発が動いているところは電気料金が低いのは厳然たる事実だ。ただ、国全体として原発の再稼働をしなければならない理由はこれだけではない。世界を見るべきだ。いま世界中でエネルギーの取り合いをやっている。LNGは引っ張りだこだ。日本もそこに参入している。欧州が一番苦しいが、実は見えないところで途上国がエネルギーを得るのに苦しんでいる。そういう状況で、日本には動かせる電源施設があるのに動かしていないことを我々はもう少し自覚すべきだ。原子力規制委員会が厳格に審査をして動かせるものは動かしていく。そのために政府としてやるべきことをやるというのは国際的な責任だ。

松山キャスター:
政府は、原発の運転期間延長や、次世代原子炉の開発・建設という新しい方針を出している。これまでの政策の大転換とも言われている。小川さんは、将来的には原発のない社会を目指し、原発の新設・増設は認めない方針か。
            
小川淳也氏(立憲民主党前政調会長):
立憲民主党内では、新設やリプレースなどは認めないという声が圧倒的に強い。私もそういう意見だ。運転停止期間分だけ運転期間を延長できるという議論になっているが、減価償却はしていく。安全面に問題がある施設ほど運転できていない。そういう施設ほど長く動かせるというのは矛盾している。エネルギー価格高騰対策が目の前の電気代・ガス代の引き下げに偏りすぎではないか。住宅の断熱化や再エネ活用の推進(もやるべきだ)。ドイツなどは各家庭の電力使用量について節約を促すインセンティブを効かせている。省エネや構造改革を進めていくような価格高騰対策を合わせてやるべきだ。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
小川さんが「卒原発」ということについては、政治家の理想、考え方としてはありだ。2011年、僕が大阪市長の時に細野さんと大激論した。当時の原発の安全性の仕組み、原発行政の中で、大型商業原発をどんどん推進していくのはもうやめるべきだということは細野さんとも合致した。ただ、政治は悪い部分を改めていく。新しい安全基準ができ、原子力規制委員会もできた。新しい原発の技術の可能性まで政治が排除していいのか。大型商業原発は改める、原発行政も改める。小川さんの考え方でいくと、新しい原発技術まで全部否定してしまう。新しい原発技術からまた違う技術が生まれるかも分からない、違うイノベーションが生まれるかも分からないものを閉ざしてしまうのではないか。

小川氏:
例えば、小型炉は新しい発想だと思うが、3分の1ぐらいの出力だと、結局、スケールメリットでコスト面では弱くなる。大きなものを作った方がコスト面ではいい。小さくなるとは言え、崩壊熱や暴走した時のリスクは本質的には同じだ。更に言えば最終廃棄物の問題もあるので卒業するという意思はいずれにしても必要だ。ただ、核融合炉は暴走する危険性はない。今のところ現実化の見通しはないが、核融合技術だけは捨て去るには躊躇する。

細野氏:
3・11は原発事故の危機だったのは間違いないが、もう一つの側面があった。エネルギー危機だ。当時の橋下大阪市長と大飯原発の再稼働問題で大喧嘩したが、その後再稼働した。つまり、エネルギーが供給できないと人が死ぬという現実に我々は直面したわけだ。久々にそういう局面にいま我々は直面している。当時よりエネルギー事情は悪い。原発がなかなか動かない状況は変わらないが、そもそも化石燃料が手に入りにくい。温室効果ガスの削減目標も迫ってきている状況で、原子力という選択肢をここで捨てるのか残すのか。政府はリプレースと言っているが、簡単なものではない。今の電力会社の経営陣の判断でそれだけ長期の投資ができるか。金融機関が(資金を)貸すかという問題もある。ただ、ここでその選択肢を残さないと、将来我々の子どもたちは再エネだけでやらなければならなくなる可能性がある。ブレイクスルーがあり、蓄電もできて安定的に燃料が供給できていればいいけれども、これはわからない。その時に原子力という選択肢も残すとすれば、もう最終局面だ。いま欧州では、英国やフランスは原発回帰が比較的うまくいっているが、ドイツはあまりうまくいっていない。なぜかというと、早い段階に脱原発をしたから産業がない、サプライチェーンがない、技術者がいない。日本も恐らくあと5年もすればそうなる。もうギリギリだ。原発の作業員も経験ない人が多く、新しい人材がなかなか入らない。ギリギリのタイミングで将来のために選択肢を残すのであれば、ここでやはりリプレースは判断であり、選択肢だ。

小川氏:
国策としてすごく大事な議論だと思う。これに優る熱意で、いかに再エネを中心としたエネルギー供給網を作り上げるかというメッセージが伝わってくるのなら、百歩譲って私は(細野氏に)同感だ。3月1日に発表された米エネルギー省によるシンクタンクへの委託調査によると、日本は10年で電力の70%を再エネに持っていけるはずだという。残り2割に原発は残る。ということは9割が脱化石燃料だ。10年の投資額は約40兆円。しかし、毎年4兆円買っている油が要らなくなるので、10年ちょっとで元が取れるという分析を米国がしている。なぜこれを日本でやらないのだと言いたい。

橋下氏:
そういう議論を専門家を交えて最終決定に持っていってもらいたい。再生エネルギーのキーポイントは蓄電だ。バッテリーのコストをどう下げるかというところもある。ただ、野党が政権を担う政党になるためにも、国家としての選択肢のカードを政治家が勝手にどんどんどんどん捨てていくというのには少し不安を感じる。新しい技術、新しいチャレンジの芽生えを奪ってしまうような方向というのは(いかがか)。どうしても野党は理想を掲げて、そこへまっしぐらになってしまう。与党は現実の選択肢を抱え込みながらやっていく。現実をもう少し強調した発想も必要なのではないか。

細野氏:
歴史をもう一回きちんと検証すべきだ。世界はエネルギーをめぐって戦争してきた。エネルギーを供給できない国家は弱体化するしかない。場合によっては崩壊する。もちろん高い目標を掲げるのは悪いことではないが、ロマンではできない世界がある。現実にどういう選択肢があるのかを見極めて、将来にあらゆる選択肢を残す。これがいまの政治の責任だ。

橋下氏:
与党としてずっと逃げてきたのは、使用済み核燃料の最終処分場の問題だ。1970年に原発の火が灯った時に、ワンセットでやるといったことが60年経っても解決できていない。政府が前に出るといっても全然前に出てきていない。原子力発電環境整備機構(NUMO)などに任せるのではなく、与党が気合入れて、ある意味、与野党、野党も含めてだが、政治家が場所まで決めなければいけない。

松山キャスター:
その最終処分場の問題と合わせて海洋放出される処理水問題をめぐる議論をこの後やりたい。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
福島第一原発をめぐり大きな決断が下されようとしている。処理水の貯蔵タンク数が1000基を超え、敷地内に保管可能な貯蔵量の96%に達している。政府は処理水の海洋放出を春から夏ごろに開始したい意向だ。処理水はトリチウム以外の放射性物質を取り除き、基準値以下にしたもの。海へ放出する際は、国の基準の40分の一、世界保健機構(WHO)の飲料水基準の7分の1まで海水で薄めて放出する方針。福島第一原発では処理水でヒラメを育てているが、細野さんはご覧になってどうだったか。

細野氏:
去年第一原発に行ってきた。このヒラメを食べさせてほしいと頼んだが、まだダメだということだった。

松山キャスター:
基本的には食べられるぐらいの基準だということか。

細野氏:
食べられる。全然問題ない。ヒラメは元気にピチピチ泳いでいた。

松山キャスター:
今月4日の福島県内の有権者に対する世論調査では、処理水の海洋放出で風評被害が起きると懸念している声は合わせて9割以上に上っている。やはり地元はかなり心配している様子が見て取れるわけだが、国内の理解をどうすれば得られるか。
            
小川氏:
まさに安全と安心は別だ。政治は科学であると同時に、政治はやはり政治なので、これは為政者の側の姿勢、東電を含めて、が問われているのだと思う。同じ世論調査だと思うが、政府、東電の説明、説得の誠意が不十分だという回答が確か65%と、7割近い人が納得してない。政府は「あらゆる関係者の納得なくして放出はしない」と言い切って約束している。漁業関係者はじめ反対の旗を下ろしてないのは、その辺に原因がある。科学とは別の部分、政治姿勢の部分に問題があると感じている。

松山キャスター:
処理水の海洋放出については、中国の外相が「人類の健康に関わる」と言って懸念を示すような意見を出している。
            
橋下氏:
トリチウムが入った水は世界各国がどんどん放出している。福島第一原発の処理水は数字で見ればかなり低い数字だ。

細野氏:
福島の皆さんが心配するのはわかる。これまで散々苦しめられてきたから。福島の皆さんには丁寧に説明すべきだし、理解を求めるべきだし、何かあった場合は補償もすべきだ。世界(の原発など)で放出してきたものを認めておいて、なぜ福島はだめなのかということは問わなければならない。、例えば、フランスのラ・アーグ再処理工場は1年間で1京ベクレルだ。福島は処理水総量でだいたい1000兆ベクレルだ。福島の処理水全量を1か月で放出していいぐらいの量をフランスのラ・アーグで出している。中国や反対している人たちはラ・アーグについて何か問題視したか。誰もそんなことしていない。だから科学的にはもう決着がついている。
            
松山キャスター:
1000兆ベクレルというのは、いま貯蔵されている処理水総量の合計か。

細野氏:
合計値だ。それを何十年もかけて放出すると言っているのだから、安全基準としては世界でも最も厳しいレベルで出すことになる。ぜひ皆さんに分かってもらいたいのは、現状これ以上放置できないこと。もう大熊町側は全部埋まっている。このままいくと、双葉町側に新しいタンクを作らなければならない。でも、あそこは取り出した燃料デブリや、さらには焼却施設を作って廃棄物を処理する場所として空けておかなければならない。万が一、ここで処理水を出せないと、廃炉作業そのものに非常に大きなブレーキがかかる。それは誰も望んでないはずだ。原発作業員はタンクの水漏れがないかを毎日点検して回っている。台風や竜巻などが来ると漏洩するリスクもある。そういうリスクを取るよりは、きちんと処理をして、国際原子力機関(IAEA)のチェックも経て安全性が確認できたものについては海洋放出する選択肢以外にない。そのことを福島の皆さんにも分かってもらいたいし、福島以外の方々には、(処理水放出に)反対することはおかしいという声を上げてもらいたいと強く思う。

小川氏:
あえて言いたいが、今の世界の文明をああいうトリチウムの排出で支えているわけで、それを否定するわけにはいかない。しかし、それが安全だと言い切るのは、長い影響(を見れば)、わからない。「基準はそうだ(満たしている)」と言うのにとどめるのが誠意ある態度ではないか。とは言え、では、沼津に持ってきて流そうとか(にはならない)。橋下さんがかつて大阪湾に流せばいいのではないかと(言っていた)。凄い度胸だ。皆で毎日(処理水の)風呂に入ろうと言ったって、それは気持ち悪さ、不安があるのは当然のことだ。やはり基準を冷静に説明することだ。もう一つ、なぜ政治家の言葉が信用されないのか。福島で大量に発生している放射性廃棄物や除染廃棄物について30年間中間貯蔵すると言っているが、皆、それは本当なのかと思っている。その場その場、その時その時のご都合主義で政治家の言葉がタラタラと流れていくので、根本的に信用できないというのがベースにある。そのことは大いに意識すべきだ。

細野氏:
政治家が信頼されないことに関しては、私らもしっかり考えなきゃならない。しかし、政治の仕事は一つ一つ結果を出していくことだ。処理水ついては残念ながら先延ばしできない。しっかり決断することがいま政治の最大の役割だ。

松山キャスター:
政府は春から夏にかけて海洋放出方針だ。どう説明するかが問われている。

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