「すごく富山って美しい場所。立山以外にも富山県全体の魅力を伝えたい」

両親を続けて亡くしたことで描く力を失った漫画家が、富山県の北アルプス大日岳の麓にある山小屋での仕事を通じて生きる力を取り戻していく実体験を描いた漫画がある。

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喪失から始まった山小屋での日々

去年12月に第一巻が発刊された『父と母を亡くし富山の山小屋で働く話』は、青森県在住の漫画家・仁山渓太郎さん(36)の実体験を描いた作品である。仁山さんは4年前に父親を、そして翌年には母親を相次いで亡くした。

「すごく無気力だった。ずっとやる気がない。体に力が入らない感じ。これはどうにかしなきゃと思って」と仁山さんは当時を振り返る。

そんな時、SNSで見つけたのが標高2501メートル、北アルプス大日岳の麓にある大日小屋のアルバイト募集だった。登山経験がまったくなかった仁山さんがこのバイトに応募したのには、父親との特別な繋がりがあった。

名前に込められた父の思い

教員時代に登山部の顧問だった父・隆緒さん(享年71歳)は山を愛し、渓谷の一文字をとって息子に「渓太郎」と名付けた。

「自分が生まれた意味を考えた時に、自分の中に渓太郎という父が山を好きになってほしいと(名前を)つけてくれたのを思い出して、自分の人生を見つめ直したい」

山に登ることで父の人生とつながれるのではないかという思いから、3カ月にわたる山小屋生活が始まった。

人との出会いが癒やした孤独

仁山さんを変えたのは、山小屋のスタッフや登山客など多くの人との出会いだった。

「一人じゃない、一人の寂しさを埋めてくれたのが楽しかった」

作品には立山の雄大な自然に触れ、少しずつ生きる力を取り戻していく様子が描かれている。仁山さんは作品に込めた思いをこう語る。

「色んな生き方を知れて、人生を思い詰めすぎずに逃げてもいいんだなって。人生の生きづらさを感じてる人が読んで、癒されて前を向けるような作品になればいい」

富山の魅力を全国へ発信

仁山さんは山小屋での勤務の合間に、レンタカーで富山県内を巡った。五箇山や雨晴海岸など、立山以外の富山の魅力も実感したという。

「すごく富山って美しい場所。立山以外にも富山県全体の魅力を伝えたい。富山県民の皆さん全員に読んでほしい」

最新話では、一度訪れた八尾のおわら風の盆を盛り込みたいとも語っていた。山小屋での体験とどうつなげるか頭を悩ませているようだが、それだけ富山の良さを広めたいという思いの表れだろう。

第二巻は今年春以降に発刊予定とのこと。父の思いを胸に抱き、富山の自然と人々に支えられた仁山さんの物語の続きが楽しみだ。

(富山テレビ放送)

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