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住友林業グループのホームエコ・ロジスティクス株式会社が提供する、住宅建材の共同配送サービス「JUCORE 物流」。商流と物流を分離し、複数のメーカーの資材を1つの配送センターに集約して建築現場へ効率的に配送するシステムで、建材物流の非効率や業界課題をDX(デジタルトランスフォーメーション)によって解決することを目指したサービスだ。新築だけでなくリフォーム現場にも対応し、配送回数やコストを削減し、ドライバー不足や環境負荷低減にも貢献。首都圏、関西で展開し今後、中部、九州エリアをはじめ、全国への拡大を目指している。 建材が現場に届くまでの工程は非常に複雑で、例えば形状の異なる各種部材を品番と一つ一つ照合するなどアナログな慣習も根強く残る。その仕組みを根本から変えるべくプロジェクト初期から参画したのが、物流経験者として中途入社した佐藤光洋と飯田健太の2人。事業スタートから現在進行形で物流の現場と向き合い続けている彼らに、本事業取り組みの背景や課題と仕事への思いを聞いた。
物流の経験を未踏の「住」の領域で発揮したい
住友林業株式会社に佐藤が2022年、飯田が2023年入社。2024年の事業化と共にホームエコ・ロジスティクスに出向。それぞれが異業種の物流業界からの転職だった。20年にわたり衣・食の物流に関わってきた佐藤にとって「住」の物流は初めての領域だ。
「触れたことのない世界だからこそ、純粋に惹かれました。住友林業が建材物流をDXで効率化しようとしている。異形物や長尺物があるような建材物流でのDXというイメージがつかなかったので、これは手応えのあるミッションだと武者震いをしましたし、その挑戦に自分の経験を活かせると感じたんです」
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ホームエコ・ロジスティクス株式会社 営業部 課長 佐藤光洋
一方、飯田は「建材業界の新しいベーシックをつくる」という住友林業が掲げていたビジョンが入社の決め手になったという。
「私は長年精密機器を扱う物流に従事していて建材物流は初めてでした。建材各商品の管理データがデジタル化されておらず紙べ―スでの管理が中心で、現場を見に行ってこんなにアナログなのかと驚きました。だからこそ変える余地があるし、面白い挑戦だと感じ入社を決めました」
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ホームエコ・ロジスティクス株式会社 営業部 係長 飯田健太
2人が入社する前から、住友林業は2024年問題(※註)やドライバー不足、物流費の上昇などを見据えて、建材物流の効率化・合理化の構想を練っていた。それらをサービスとして具現化するフェーズで佐藤と飯田が参画することになったのだ。
※働き方改革関連法により、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年960時間に制限されたことで、輸送能力の低下、物流コストの上昇、ドライバーの収入減、さらなる人材不足などを引き起こす問題のこと。
ゼロから始まった構想。正解のないスタートライン
建材物流は、品目数の多さ、形状の多様さ、現場ごとに変わる納品場所など、一般物流とは違う難しさがある。佐藤と飯田も物流業界での経験は豊富だったが入社して驚いたこともあったという。
「取扱点数が多すぎて、それを識別するJANコード(※註)のような統一コードがないことに驚きました。メーカーや問屋の範囲でのコードはあっても、業界を通した統一のものが無いので、何の商品かを把握するところからのスタートでした」
そう語るのは佐藤だ。「まるで20年くらい前の物流ではないか」と衝撃を受けたという。飯田も同様な思いを抱きつつ、まったくの異業界なので最初は苦労の連続だった。
「商品名を聞いても形が浮かばない。数千点の部材を理解するところからでした。家を建てる工程や、どの部材をどのタイミングでどこに使うのかを理解するのにも苦労しました。また、DX化するためにはとにかくデータが必要です。そのデータを集めるために流通事業者、工務店、現場監督に話を聞きに行き、どうすればスムーズにそして確実に配送できるのか、皆さんそれぞれ価値観も違いますから…。本音を引き出すところから苦労しました」
※日本で使われている商品識別用のバーコード(バーコード番号)のこと。Japanese Article Number(日本商品番号) の略。
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「JUCORE 物流」のサービスイメージ図。建材流通業者から住宅資材の配送を受注し、配送センターから各納品現場までの配送業務を担う。見積もり・受発注・配送・決済までをワンストップで行うサービス化を目指す。
建材物流は納品現場が毎日変わるため、一般的なルート配送とはまったく異なるマネジメントが求められる。「BtoBのようで、実態はほぼBtoC配送に近い」と2人は口をそろえる。前職では小売店へのルート配送を管理していた佐藤も、その点で苦労したと振り返る。
「関わる人も多くそれぞれの利害を一致させていくのが難しかったです。ただ、住友林業グループ内に実際の戸建て住宅の建築、請負を担い現場を動かしている事業部門があるので、机上のアイデアを試せたことは救いでした」
住友林業の住宅事業部門と連携し、2022年1月以降およそ2年間何度も試験運用を行いながら、ようやくサービスの骨格が整っていった。複数棟が一度に着工し建築工事が進んでいく住宅事業部門の分譲物件現場は、さまざまな資材・建材の配送マネジメントを検証する上で最適な環境であり、多大な協力のもとトライアルを実施することができた。
サービス開始後の現実。 計画変更との戦い
2024年1月にサービスを始動させて以降、2人がまず痛感したのは、建設現場ならではの計画変更の多さだった。
「建築の進み具合や天候、職人の配置など、さまざまな要因によって工事のスケジュールは日々揺れ動きます。『明日急に必要になった』『今日中に持ってきてほしい』といった依頼は珍しくなく、そのたびに組み上げた配送計画は白紙に。オペレーション担当者は都度段取りを再構築し、現場の要求に応えていく必要があります」(佐藤)
「お客様(主に流通事業者)の困りごとを解消するために効率化を進めていますが、まだまだ完成形には届いていません。現場調整の手間を私たちが引き受けるというコンセプトですが、現状では困りごとを移管しただけの形で改善の余地が多分にあります。工程に応じた配送計画で建材流通業者や工務店、建材メーカーなどの物流負担を軽減し現場の生産性の向上をめざします」(飯田)
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「JUCORE 物流」のパートナーである翔和サービス西東京営業所のドライバーさんと。
さらに、DX化を推進するうえでの根本的な問題として、「データが存在しない」という現実とも改めて向き合うことになった。建材のほか、現場の進捗状況もデジタルで取得できず、必要な情報を「まずアナログで集める」という膨大な作業が現在進行形で続いている。こうした状況を複雑にしているのが、建材流通に関わるプレイヤーの多さだ。メーカー、問屋、流通事業者、工務店、現場監督…。それぞれが自社内だけで通じる閉じた仕組みを持ち、情報が部分最適のまま分断されているのだ。佐藤は「JUCORE 物流」サービスの課題を次のように捉えている。
「本来つながるべき情報が断絶しているので、そこを橋渡しするのが僕らの役目だと思っています。必要な情報を集めつつ、計画に対する進捗管理や顧客ごとの特性の把握、天候要素も含めた需要予測などをDXで進めていく必要があると考えています」
配送の混乱、データの欠如、分断されたサプライチェーン。これら業界特有の課題を、ひとつひとつ解きほぐしながら前に進めていくこと。それが、「JUCORE 物流」サービスの挑戦の本質でもある。
2030年に向けたロードマップ。
物流を業界インフラへと進化させるために
2人が描く未来は、単なる物流サービスの拡大ではない。目指しているのは、建材物流の在り方そのものを変え、2030年までに業界の共通インフラとなる仕組みを築くことだ。「JUCORE 物流」サービスの挑戦は、まだ始まったばかりだが、その歩みは着実に進んでいる。
「まず、土台となるのは確実に運べる仕組みを全国規模で整えることです。現在は関東、関西で運用が進んでおり、今後は中部、九州へとサービスを広げていきます。建材は地域ごとに文化も流通構造も異なるため、単純な横展開ではなく、地域特性に合わせたオペレーション構築が欠かせないと考えています」と佐藤は語る。
次に重要となるのが、様々な業務のIT化によるデータ活用である。現在、建材はメーカー、建材流通店、工務店等各事業者間で個別に情報がやり取りされており、同じ内容を何度も入力するなど、非効率な作業が多く発生している。これらがデジタルでつながれば、ミスの削減はもちろん、工期の遅延防止、コスト最適化、関係者の負担軽減につながる。この構想は単なる業務効率化ではなく、建材流通の「ルールそのものを変える」可能性を秘めている。
「JUCORE 物流を使えば一気通貫で完結する。そんなワンストップの世界を実現したいんです」と飯田の弁にも熱がこもる。
そしてより深刻なのは、建設業界の人材不足とそれを補う外国人労働者などの多様化に耐えうる仕組み作りである。建設現場の大工や職人、物流ドライバーは高齢化が進んでおり、若手の参入は決して十分とはいえない。外国人ドライバーの登用も増えつつあるが、現場とのコミュニケーション課題など、すぐには解決できない壁がある。2人は「JUCORE 物流」は人材の多様化を前提にした仕組みづくりでもある」と強調する。
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物流業界全体の問題でもあるドライバー不足。建材をトラックに積めるのはドライバーの采配によるもの。DX化を進めて少しでもドライバーの負担を減らしたいという。
「今の物流は経験の豊富なドライバーによって支えられていますが、経験の浅い人や外国人労働者など誰が来ても同じ品質で仕事ができる仕組みが必要なんです。物流のハードルを下げることが、業界全体の持続可能性につながると考えています」
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営業が集めた現場の声をエンジニアがシステム化。仮説と想像がDXを通して生きたサービスへと進化する。
迷いなく進む。“運べる・つながる・続けられる”未来を信じて
2030年に向けたロードマップはまだスタートしたばかり。佐藤、飯田ともにやっと自分たちが登る山の全貌が見えてきたところだという。くしくも佐藤の趣味は山を走るトレイルランニングで飯田の趣味は野営。山道の状況に臨機応変に対応しながらクリアしていくトレイルランニングも、不自由な中で最適解を探す野営も今の仕事に通じるものがある。まさに天職といえるのではないだろうか。そんな2人が目指す『運べる・つながる・続けられる』建材物流の実現に向けて日々様々な問題や課題が湧き上がるが、現場主義の飯田は「悩んだらやってみる」を仕事の信条にしていると言う。
「とにかくチャレンジ、試してみようという気持ちでいます。悩んだらやってみる。後悔しないようにすることを心がけています。」
チームを俯瞰しながらまとめる佐藤は、常識を一度逆から捉え、非常識の位置に身を置くことで新しい発想を生み出すようにしているという。
「今日動いた一歩が、誰かの役に立つならそれでいいかなと。住友の事業精神の一つである『自利利他』(自分の利益だけでなく他者の利益も考える)の考えが、自分にしっくりくるんです。社会課題の解決に向けて一歩近づいたと思えれば、モチベーションも上がります」
建材物流は長きにわたりアナログなままだった。その当たり前を覆し、データでつながる新しい産業モデルを構築していく。「JUCORE 物流」サービスの挑戦はまだ始まったばかりだが、2人が歩みを進める先には、確実に建設業界の新しい未来が広がっているはずだ。山頂にたどり着いた時、2人には、そして建設業界にはどんな景色が広がっているのだろうか。
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理想のサービス化の実現に向けて、一歩一歩着実に課題を解決していく。
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