午年(うまどし)の今年、野生馬が生息する岬の魅力を一人でも多くの人に伝えようと奮闘する女性ガイドがいる。地元・宮崎県串間市出身の世良田明呼(せらだ・あきこ)さんだ。一度は故郷を離れた彼女が、なぜUターンして野生馬の案内人となったのか。自然の中で逞しく生きる馬たちの姿と、その魅力を発信し続ける世良田さんの活動を追う。

岬に息づく国の天然記念物

宮崎県の最南端に位置する串間市都井岬(といみさき)

都井岬の草原で草を食む御崎馬
都井岬の草原で草を食む御崎馬
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約550ヘクタールの敷地には、国の天然記念物に指定されている野生の御崎馬(みさきうま)106頭が生息している。

写真撮影に馬が入り込む
写真撮影に馬が入り込む

都井岬には、708年に創建され、航海安全と縁結びの神を祀(まつ)る御崎神社や、航行する船舶の目印となる都井岬灯台などがあり、年間を通して大勢の観光客が訪れる。

観察ツアーのガイドを務める世良田明呼さん
観察ツアーのガイドを務める世良田明呼さん

この地で御崎馬の観察ツアーガイドを務めるのが、世良田明呼さんだ。串間市出身の世良田さんは地元の高校を卒業後、大阪で生活していたが、やりたいと思える仕事に出会えず、26歳でUターンした。その後、結婚し、現在は2人の子どもの母親だ。

故郷の価値を再発見した30代

世良田さんが都井岬に魅了されたきっかけは、市の観光協会でガイドとして5年ほど勤務したことだった。そして2023年8月から、個人で御崎馬の観察ツアーガイド「おぷしょん」を立ち上げ、より深く御崎馬の魅力を伝える活動を始めた。

観光客に都井岬の魅力を語る世良田さん
観光客に都井岬の魅力を語る世良田さん

野生馬ガイド「おぷしょん」 世良田明呼さん:
観光協会で働いていた時に 県外の方がたくさんいらっしゃって、みなさん都井岬の事をなぜ知っているんだろう?と思った。理由は様々で、小さい頃の教科書に載っていたよとか。

野生馬を興味深く観察する外国人観光客
野生馬を興味深く観察する外国人観光客

世良田さんは、外国人がわざわざ訪れるような貴重な観光資源が地元にある事実に驚き、「串間にはすごい所がある」と気が付いたのだという。

逞しく生きる野生馬の日常

世良田さんは、御崎馬の最大の魅力は「逞(たくま)しく生きる姿」にあると感じている。

草原で家族を作り移動する御崎馬の群れ
草原で家族を作り移動する御崎馬の群れ

野生馬ガイド「おぷしょん」 世良田明呼さん:
都井岬の馬たちがこういうふうに自分たちで家族をつくっていくんだよ、とか、毎日食べ物を一生懸命探して暮らしているとか、毎日懸命に生きている姿がかっこいいなと思いました。

母馬のあとを懸命に追う春生まれの子馬
母馬のあとを懸命に追う春生まれの子馬

春になれば、生まれたばかりの子馬が生きるために必死に親の後を追う。雨の日も日照りの日も、ただシンプルに生きることに毎日を捧げる姿に、世良田さんは感銘を受けたという。

 江戸時代から続く共生の歴史

御崎馬に関する歴史や生態の知識は、すべて世良田さんの頭に入っている。

観光客に都井岬の魅力を語る世良田さん
観光客に都井岬の魅力を語る世良田さん

ツアー客から、都井岬にはいつから馬がいるのかと問われれば、「江戸時代初期に高鍋藩(たかなべはん)の秋月家が軍馬を育てるために牧場を開いたのが始まり」と即座に答えていた。

地域住民の手で守られてきた都井岬の風景
地域住民の手で守られてきた都井岬の風景

世良田さんによると、時代の流れとともに明治時代の廃藩置県(はいはんちけん)があり、この牧場も手放される候補の一つであったが、地域住民が共同財産として守ることを決断して手をあげ、その権利を代々子どもたちに引き継いできたという。地域の人々の強い意志があったからこそ、馬たちが自由に暮らせる環境が現在に残されているのだ。

観光客に都井岬の魅力を語る世良田さん
観光客に都井岬の魅力を語る世良田さん

「馬は夜はどこで寝るんですか?」という質問に対しては、「どこで寝てると思いますか…?実は、夜も草を食べています」と、楽しそうに説明していた。

人間は日中活動して夜は休むが、馬は「食べて、疲れたら寝る」を24時間繰り返しているのだという。

五感で味わう贅沢な時間

ガイドの時間は主に60分から90分。

岬の起伏を案内するガイドツアーの様子
岬の起伏を案内するガイドツアーの様子

世良田さんは参加者の体力に合わせて起伏のある岬を歩いて回り、御崎馬の自然な姿に出会えるよう、心を配っている。

草原で背中を地面にこすりつけて転がる馬
草原で背中を地面にこすりつけて転がる馬

撮影を続けていると、世良田さんが「あ、始まりました!」と声を上げた。見ると、馬が背中を地面にこすりつけてゴロゴロと転がっている。

転がり続ける馬
転がり続ける馬

「何をしていると思いますか?」と、世良田さん

野生馬ガイド「おぷしょん」 世良田明呼さん:
背中がかゆくて、物理的に手が届かないので、ああやって地面にこすりつけてゴロゴロして、「かいーかいー」して、いま立ち上がったところです。誰もかいてくれないので。

御崎馬1頭が1日に食べる草の量はどのぐらいなのだろうか。

草を食む馬
草を食む馬

なんと30キロから40キロにもなるという。本来、馬はずっと口を動かしていたい動物だそうだ。ここ都井岬はそれを誰も制限しないので、馬たちが自由に、馬として暮らすのが許されている、「特別な尊い場所」と、世良田さんは評する。

 午年を駆け抜ける決意

都井岬の魅力を感じた観光客から「また馬や景色に会いに来る」と言ってもらえることが、世良田さんにとって最大の喜びだ。

馬と海と太陽
馬と海と太陽

時間に追われて暮らす人ほど、ここでゆったりと流れる時間の使い方もあるんだな、と、新しい体験をされるのもすごくお勧めしたい。馬が草を食む音、流れる海の波の音、光の輝きを見つめているだけで、本当にぜいたくな時間の使い方ができていると、幸せな気持ちになりますよ。

笑顔で今年の抱負を語る世良田さん
笑顔で今年の抱負を語る世良田さん

ひとりでも多くのお客様に、御崎馬ってこんなにチャーミングだし、魅力的だし、面白いところがたくさん分かってもらえるといいなと思いながら、駆け抜けたいと思います。うま年!

なお、都井岬で御崎馬を観察する際は、餌(えさ)を一切与えず、体に触れないことが鉄則。また、馬が道路を歩いたり急に飛び出したりする場合があるため、周辺を走行する車両は制限速度の時速30キロを厳守してほしい。マナーを守って楽しんでほしい。

(テレビ宮崎)

テレビ宮崎
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