島根・松江市ゆかりの明治の文豪・小泉八雲とその妻のセツをモデルにしたドラマ「ばけばけ」。

9月に放送が始まってから約3か月…舞台となった松江市などでは、観光面での波及効果が様々なところに広がっている。

一方で、せっかくのこの効果をどのように持続させるかが課題として残されている。現状を検証するとともに、そして地元がどのように取り組むべきか探った。

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八雲の「怪談」雪女をモチーフにした和菓子に…八雲の好物にちなんださまざまなグルメ…。

ドラマ「ばけばけ」の放映をきっかけにさまざまな関連グッズが誕生。

松江来訪から135年、八雲は経済効果でも一役買っていた。

経済効果は期待以上 宍道湖シジミの売り上げも増加

シジミ汁
シジミ汁

宍道湖漁協の渡辺和夫組合長は「放送開始から非常に反響が強いものがあります。うちの直売所も嬉しい悲鳴です」と喜ぶ。

ドラマでは“松江人の血液”と例えられた「シジミ汁」。

「GI・地理的表示」に登録された宍道湖産のシジミ
「GI・地理的表示」に登録された宍道湖産のシジミ

宍道湖漁協によると、宍道湖産のシジミの売り上げが増加!11月には、地域ならではの農林水産品のブランド保護制度「GI・地理的表示」に登録されたのも追い風に、さらなるドラマ効果に期待している。

そして、ドラマ効果による売り上げ増はほかにも…。

たなべ匠味・白石尚さんは「銀座シックスなどでのポップアップでも販売したんですが、八雲という名前もあって購入してくれる人がいる」と語る。

奥出雲和牛のローストビーフ(たなべ匠味)
奥出雲和牛のローストビーフ(たなべ匠味)

この会社が販売する「奥出雲和牛のローストビーフ」…「八雲塩」が添えられている。

この商品が返礼品に採用された雲南市の「ふるさと納税」の寄付額は前の年に比べ約30%増加。

雲南市は、ドラマ効果によるものかはわからないとしているが、注目度の高まりが感じられる。

たなべ匠味の白石尚さんは、「朝ドラによって島根県への注目が高まっていると思うので、これをきっかけに奥出雲和牛の良さを島根県内外の多くの人に広めたい」と意気込む。

八雲ゆかりのスポットに押し寄せる観光客 カギはリピーター確保

ドラマ効果は観光スポットの人出にも表れている。

八雲のひ孫・小泉凡さんの妻 祥子さん
八雲のひ孫・小泉凡さんの妻 祥子さん

「私たちも想像していないくらい、たくさんの方に来ていただいた」こう話すのは、八雲のひ孫・小泉凡さんの妻の小泉祥子さん。

松江市にある小泉八雲記念館の学芸企画ディレクターを務めている。

小泉八雲記念館(島根・松江市)
小泉八雲記念館(島根・松江市)

小泉八雲記念館では、ドラマ「ばけばけ」放送開始後の11月の来館者が2024年に比べて約2.5倍に増加。隣りにある「小泉八雲旧居」は約4.3倍にものぼっていて、ドラマ効果は絶大のようだ。

ドラマをきっかけに八雲や八雲が愛した松江にも関心が集まっていると実感しているという。

松江市によると、11月に国宝・松江城を訪れた人の数は、過去3年間で最多に。

八重垣神社・鏡の池(島根県松江市)
八重垣神社・鏡の池(島根県松江市)

さらにロケが行われた「八重垣(やえがき)神社」でもその効果を感じているとしている。

ドラマ放送による観光への効果について、記念館や八雲の旧居がある「塩見縄手(しおみなわて)」地区で聞いてみると…。

愛知からの観光客:
やっぱり小泉八雲だよね。

大阪からの観光客:
今テレビでも放映されているので、来たいなと思いました。

千葉からの観光客:
朝ドラを見ていて気になったので、実際にテレビで見たものもいっぱいあったので、楽しかったです。

訪れていた観光客の約60%が「ドラマをきっかけに松江を訪れた」と回答。

さらに、もう一度来たいと答えた人は約70%にのぼり、こうしたリピーター候補をどのように呼び込むかがこれからの課題と言える。

ドラマ効果をどう持続? 独自の取り組み模索

村上遥アナウンサー:
小泉八雲記念館や八雲旧居など、松江市を中心に観光客は増えていますが、このドラマ効果をブームで終わらせないという課題も残ります。

セツにスポットをあてた企画展(小泉八雲記念館)
セツにスポットをあてた企画展(小泉八雲記念館)

小泉八雲記念館で開かれているのが、小泉八雲の妻「セツ」にスポットを当てた企画展。

小泉八雲記念館の学芸企画ディレクター・小泉祥子さんも「ドラマの放送が終わってからが勝負かなと思っている」と語る一方で、「どうしても企画展ですので、期間が決まっていて、そこで見て頂けるのは限定的で通り過ぎていくもの」と話し、息の長い取り組みを模索している。

また今回の企画展の展示資料のほとんどが他の施設の所蔵品で、「セツ」をテーマにした大がかりな展示は今後難しいということで、記念館では「ドラマ頼り」にならない独自の企画を考えていきたいとしている。

キャッチコピー「あげ、そげ、ばけ」
キャッチコピー「あげ、そげ、ばけ」

松江市観光部福間千恵部長「小泉八雲を忘れられないように、『あげ・そげ・ばけ』というキャッチコピーを作りましたので、全国に向けてPRを続けて行きたいと思います。

松江市は2008年放送のドラマでも舞台にもなったが、観光への効果は「1年ほどで薄れた」という。

それだけに松江市観光部の福間千恵部長は「放送中から放送後にかけては、朝ドラの効果でたくさんの方が来てくれると思うので、長く松江の認知度を上げて松江の魅力を全国の方に知って頂きたい」と話し、効果を一過性に終わらせないよう、「リピーター」づくりにも取り組みたいとしている。

効果の広がりが課題 周辺地域への波及を

また、ドラマ効果の広がりはほぼ松江市だけ…という現状も。

観光客の入り込み数をみると、出雲市、安来市など周辺地域には届いていないようだ。

観光面でも効果絶大のドラマ「ばけばけ」の放送。この千載一遇のチャンスをどのように生かしていくかが問われている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

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