TKUライブニュースのスタジオに熊本県の木村敬知事を招き、2025年一年を振り返りながら県政の課題や今後の展望について話を伺う。空港アクセス鉄道や渋滞対策など県が行う事業や、大きな節目の年を迎える来年について話を聞いた。

空港アクセス鉄道の概算事業費610億円

空港アクセス鉄道について、熊本空港とJR豊肥線を結ぶ空港アクセス鉄道は、肥後大津駅から分岐し、約6.8キロの区間を高架橋やトンネルを通って、空港南側に設置される駅まで整備される計画だ。

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この鉄道の線路が通る大津町と益城町では住民説明会が開かれ、騒音や景観に対する懸念の声も上がったが。

木村敬熊本県知事:
この点については丁寧に説明をしていきたい。今の熊本空港のアクセスは特に週末の夕方は空港から通町筋まで、へたしたら1時間半かかり、定時制が問題になっている。電車で定時で安心して行けるようにしたい。バスに乗ろうとしていっぱいで乗れないなどもある。ある程度の量が運べる点でも、空港アクセス鉄道の重要性は県民にも認識してもらえると思う。あとは丁寧に騒音にしても、景観にしても、しっかり配慮していく点を説明を重ねていきたい。

また、当初410億円と見込んでいた概算事業費について、物価上昇などの影響から約610億円に膨らむ見込みと9月議会で示されたが。

木村敬熊本県知事:
最後は費用と成果、費用対効果だと思う。費用は上がるが今の計算では効果も上がる。以前は1.03だったが、今は1.21の費用対効果が出ている。その分は快速列車などによる利用者増を見込んでいて、費用対効果が成り立たないと鉄道事業の認可が下りない。この点は安心して進めていけると思っている。

TSMC「熊本への投資は続けていく」

続いては菊陽町に進出した半導体製造大手・TSMCについて、2025年は10月に菊陽町での第2工場の着工が発表され、知事も11月にTSMC本社を訪問。TSMC本社では幹部とどのような話をしたのか。

木村敬熊本県知事:
1年3か月ぶりにTSMCの本社に行き、第2工場着工のお礼を申し上げた。TSMCのシーシー・ウェイ会長兼CEOが熊本の渋滞に不安を持っているという話を聞いていたので、3年・5年・10年先の考えを示して、最高幹部の方に理解いただいた。そしてTSMCからは「トランプ関税などいろいろあるが、日本への投資、熊本への投資はこれからも続けていく」と言っていただいた。

一方で、「当初の計画よりも最先端の半導体を製造するために、第2工場の計画変更が行われているのでは?」という声もあるが。

木村敬熊本県知事:
私たちは何も知らない。TSMCからは「第2工場の事業はちゃんと続いている」と。「ただパートナー企業と相談をしている」という話なので、『中断』や『中止』ではない。何か少し変わることがありうると思っているが、そこは少し前向きに考えている。

「来年を公共交通強化元年の一年に」

半導体産業の集積が進む一方で課題となっているのが熊本都市圏の交通渋滞対策だ。現状と今後の対策についてどのように考えるか。

木村敬熊本県知事:
2024年末に短期・中期・長期の取り組みを決めた。短期は30カ所の交通渋滞の交差点改良や信号の操作を変えた。その中でも一番わかりやすいのが、熊本市が造った西環状道路の成果だと思う。それを第2空港線や産業道路など、どんどんやっていこうと思っている。熊本の長年の懸案だった渋滞対策は、TSMCが来る前から問題だった。逆にTSMCが来たことによって、国のプロジェクトとして別枠の公共事業の予算も取りながら進めている。目に見えて進むよう頑張りたいし、県民の皆さんが少し車に乗る割合を減らすなど、公共交通の充実にも、もっと頑張っていきたい。

前日は熊本市の大西一史市長に生出演いただき、木村知事と取り組みたいことを聞いた。大西熊本市長は「木村知事とは、とにかく交通問題。公共交通を徹底的にやる。公共交通を2倍にしたいので、環境をよくするのももちろん、〈無料の日〉を都市圏に広げられたらいい」と話した。

木村敬熊本県知事:
番組を見ていて、私も「その通り」と言っていた。大西さんと日々連絡を取っているが、特に公共交通については、来年を強化元年と思えるような一年にしたい。

来年度当初予算119億円の財源不足

ここまで、災害からの復旧・復興、県有スポーツ施設空港アクセス鉄道、交通渋滞対策などと、熊本県の事業について話を伺った。こうした事業を進める一方で、2026年度の当初予算について、熊本県は約119億円の財源不足の見込みと試算している。

知事が予算編成で職員に異例の訓示も行っていたが、2026年度の予算はどのように対応するのか。

木村敬熊本県知事:
財政状況はどこの自治体もよくない。ただ熊本の場合はいろいろな新しい投資をしていかないといけない。ただ私は財政のために、県民生活にやるべきことを、手をこまねいているようなことはあってはならないと思っている。だから、何とか必要な財源を見つけて、新しい事業、やるべき事業に投資したい。県庁の中でも、スクラップ&ビルドのスクラップを、若い職員に聞くと「やらなくていいと思う」というような事業があったりする。それを一つひとつ予算編成の過程の中で抽出している。

そして2026年は熊本地震から10年の節目の年でもある。県としての取り組みは。

木村敬熊本県知事:
地震がなければ私は知事になっていることもなかったと思うぐらい、私にとっても人生を変えた大きな出来事。多くの熊本県民、被災された方、家族や親族が犠牲にあわれた方など、そのつらい気持ちはまだ癒えることはないと思う。来年は10年の節目の年なので、いま一度、県民と振り返って、二度とあのような災害が起きないように、起きてもしっかりと対応できるように、県民の防災力を付けていく、みんなで確認しあえる1年にしたい。

また、2026年は水俣病の公式確認から70年の節目でもある。被害者の高齢化への支援が課題だが、どのように取り組むのか。

木村敬熊本県知事:
患者・被害者の方にはしっかりと寄り添い福祉サービスの充実を図っていく。70年の歴史の中で、今年は水俣病に関する誤った知識を民間や自治体が流した件がある。私は今一度水俣病の教訓、正しい知識を県民やいろんな人に分かってもらえるような、啓発活動に力を入れる一年にしたい。

忙しく走り続けた一年だったと思うが、最後に木村知事に2026年の抱負は。

木村敬熊本県知事:
来年も現場主義を徹底して、皆さんの声を聴きながら行政を進めていきたい。特に来年は熊本地震から10年、水俣病の公式確認から70年と大きな節目の年なので、その時だからこそできる発信、または県民との地震の教訓を忘れないようにするための試みをやる一年にしたい。県民の皆さんとともに歩んでいきたい。

(テレビ熊本)

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