石破茂前総理が、退任から2か月余りが経った2025年12月7日に地元の鳥取・八頭町でTSKさんいん中央テレビの単独インタビューに応じた。
「石破らしさ」が鳴りを潜めた理由と辞任決断への葛藤と背景…。地方創生や農政問題に持論を展開するとともに、「言論空間を変えたい」と自由闊達な議論の重要性を訴えた。
辞任の決断「国の政治に停滞があってはいけない」
7月の参院選で与党が大敗したあとも続投の意欲を見せていた石破前総理。しかし、自民党内では責任を問う声が高まり、総裁選の前倒しの是非について国会議員・地方組織の意思を確認する動きが進んだ。
事実上の「リコール」につながる可能性もはらんだ中、「意思確認」実施前日の9月7日に辞任する意向を表明した。
「分裂、分断、対立、それはあまり顕在化させるのはよくないよね」と振り返る石破前総理。
「国の政治に少しでも停滞があってはいけない」という最高責任者としての判断があったという。
一方で「選択肢のひとつ」として解散総選挙も念頭にあったことを明かした。
FNNの8月の世論調査では「首相を辞任しなくてよい」という回答が過半数となっており、「解散していたら、アメリカと中国の狭間にあって『日本はどうあるべきか』ということも訴えていたと思う」と述べた。
「石破らしさ」が鳴りを潜めた理由

総理就任後、"石破らしさ"が鳴りを潜めたことについて、「それは石破らしさを出して法律が通らない、予算が通らないということになったらそれは総理大臣として失格でしょう」と説明。「自民党内の権力基盤っていうのはそんな強くなかった」と率直に語った。
コメ政策 議員定数削減―現政権に異論
「ライフワーク」ともいえる地方創生について石破前総理は「東京の富を日本国中に“ばらまこう”みたいな話ではなくて、その財源の偏在というものを是正する」ことが重要だと述べた。
農水大臣を経験し、農政の分野で一家言を持つ石破前総理は、自身の政権で打ち出したコメ増産の方針を事実上撤回した高市政権の対応に異論を唱えた。
「世界中が食料増産、農地の増大に本当に真剣に取り組んでいる中にあって、日本だけが農地を減らして、そして農業者の数を減らして、そして税金使っていろんな対策を打つっていうのはどうなんでしょうね」と疑問を投げかける。
コメの価格高騰対策として打ち出された「おこめ券」の配布についても「原資、税金でしょ、自治体の負担ものすごいでしょ」「米の値段は下げません。困った人には税金でお米券に配ります。どうなんだろう、政策として本当に整合性がある政策だとは私には思えない」と批判した。
衆議院議員定数削減に「本当に正しいのか」疑問呈す
高市政権が自民と維新による連立の肝と位置付ける衆議院の議員定数削減についても、「地方分権が完全にできていない中で、地方の定数も減らしましょうということは本当に正しいのか」と疑問を呈した。
1年以内に結論が出なければ小選挙区と比例代表であわせて45議席を自動的に削減すると規定したことに「違和感」があると持論を述べた。
「物言わないなら議員の仕事を辞めた方がいい」
総理経験者が現政権を批判することへの懸念について問われると、「何があっても意見を言わないのが正しい言論空間ですか?」と反問。
「政府の言っていることは皆正しいんだっていうのは、それは何かかつての日本みたいな」と危惧した。
「『この戦争の目的は何だと、どうすれば終息に向かうのか』という発言しただけで、斎藤隆夫議員は除名になった」
例として挙げたのは1940年、衆議院議員だった斎藤隆夫氏の「反軍演説」だ。言論弾圧として象徴的な出来事で、総理在任時の10月に発表した『戦後80年所感』でも言及した。
「議会がきちんとした役割を果たすというのは、国にとって大事なことだと思います」「物言わないなら議員の仕事を辞めた方が良い」と語気を強めた。
「『自分の考えに誤りはあるかもしれないな』と謙虚に耳を傾けるのが保守」と話す石破前総理。2026年の抱負を尋ねられると「言論空間を変えたい」と語る。
「私らが議員になった頃は、もっといろんな人がいろんなことを言った」と振り返り、自由闊達な議論の重要性を訴えた。
(TSKさんいん中央テレビ)
