「もしもし、警察ですが…」その一本の電話が、あなたの全財産を奪うかもしれない。警察官をかたるなどの手口の特殊詐欺が県内でも急増。今年1月から11月末までの被害件数は64件、被害総額は約3億6000万円にも上り、前年を2億円上回る深刻な事態だ。犯人からの電話を記録した音声には、その巧妙な手口が浮かび上がってきた。
国際電話は要注意
「たまたま取った電話が海外からの電話だった」
県内で特殊詐欺とみられる電話を受けた女性は、こう語る。
「人間の声じゃなくて機械の声みたいなものだったので…すぐ切って番号見たら海外の番号だった」といい「その後も同様の国際電話が複数回かかってきた」という。
国税局⇒警視庁へと電話が転送される
また、ある県内の男性は国税庁の職員を名乗る人物から「税金が未納になっている」との電話を受けた。
県警が男性の協力を得て記録した通話では、国勢庁の職員をかたる人物からの電話を受け、転送された先で犯人は「刑事捜査犯罪対策部署」を名乗り、「個人通報記録を取らせていただきます。分かりやすく言うと事情聴取というような感じのもの」と説明。さらに「ビデオ通話でできるものはありますか?」と持ちかけている。
<電話のやり取り>
ニセの警察官:
「はい、こちら警視庁組織犯罪対策部総務課です。どうしましたか?」
通報者:
「いま国税庁のオオタさんから税金が未納になっていると連絡があって。2024年7月10日、タイに行って革製品を大量に買い、その税金が未納になっていると…私の個人情報が利用された可能性があるということで、こちらに相談してみてくださいと言われたんです」
ニセの警察官:「ご自身は身に覚えがないという事ですね?」
通報者:「はい」
ニセの警察官:「個人情報が不正に利用された可能性があるから被害届を出されるということですね?
通報者:「はい」
ニセの警察官:「まず、個人通報記録をというものを取らせてもらいます。分かりやすく言うと事情聴取ですね。1対1の対面で話すのが規則になっているんですが、最近では遠方からの問い合わせが多いので、電話での対応もできます。本人確認をさせていただく必要があるのですが、ビデオ通話等できるものお持ちですか?(中略)LINEも対応しています」
この事例では幸い被害はなかったが、県警によると、実際の詐欺被害では「犯罪の潔白を証明するため」などの理由で指定口座への振込を要求し、金銭をだまし取るケースが多いという。
偽の警察手帳や逮捕状で信用を得る手口
また、犯人が示す偽の警察手帳や逮捕状を見せられて信用してしまうケースも目立つ。
一般人には馴染みのない公的書類だけに、信じ込まされやすい傾向がある。

県警本部生活安全企画課犯防対策室の真杉順子室長は「警察は電話であなたに容疑がかかっているということは絶対言いませんし、SNSや電話で現金の出金とか振り込みを指示することもありません。警察が電話でこういったことを言った時には詐欺だと思ってください」と注意を呼びかけている。
特殊詐欺対策 - 国際電話の利用休止が有効
こうした特殊詐欺は「+」から始まる国際電話番号からの着信が多いことが特徴で、県警では対策として以下の方法を推奨している。

1. 国際電話の利用を休止する
2. 着信を規制するアプリを活用する
県内の特殊詐欺の特徴としては、警察官をかたる人物に金をだまし取られる被害が目立っている。詐欺の手口を知ることが、被害防止にもつながる。
特に「警察を名乗る人物から容疑をかけられた」「お金を振り込むよう指示された」などの場合は慌てず、すぐに信じ込まず、一度電話を切って警察署や家族に相談することが重要だ。
