「教員は長時間労働だ」という声をよく聞くようになった近年、なり手不足が深刻な問題になっている。学校の先生たちは長時間労働なのだろうかと言う点に関して、気になるデータがある。
OECD・経済協力開発機構は2024年、世界の55の中学校と16の小学校を対象に調査を行い、日本と海外の学校の先生の1週間の仕事の時間を比較した。
その結果、日本は小・中学校ともに「国際平均よりも10時間以上、仕事時間が長くなっていた」ことがわかった。

中学校の仕事の内訳を見てみると、書類作成など事務業務に費やす時間が国際平均よりも多くなっている一方で、授業を行う時間は国際平均より少なくなっている。これは子供たちと直接向き合う授業の時間以外の業務が多くあるということだ。
実際の教育現場で働く人たちはこの現状をどう考えているのだろうか。
中学校教員の仕事に密着 朝7時前には出勤し忙しい一日が始まる
大分市立東陽中学校。
12月4日、午前7時前。学校に出勤したのは大分市立東陽中学校の教員芦刈祥悟さん。
教員10年目で現在は中学2年生の担任を受け持っている。
毎日この時間に出勤し、授業が始まるまでの時間はメールの確認や授業の最終確認に追われる。
その間にも校内をまわる。
電気をつけたり換気をするのも大切な仕事の1つだ。
そうしているうちに生徒の登校時間に。忙しい1日の始まりである。
午前8時半過ぎに授業がスタート。
理科を担当する芦刈さんは内容や教え方を工夫し、少しでも退屈しない授業づくりを意識しているという。
授業を終えると再び職員室へ。
成績を付けたりしながら、行事の打ち合わせなどもこなしてく。
「何もしていないというのはまずない。基本的には午前中の授業で午後は空けてもらって、午後の時間で学校以外の業務に取り組むようにしている」と芦刈さんは話す。
「生徒を第一に考える」生徒の評価は…

多くの業務がある中でも生徒を第一に考える芦刈さん。そんな姿に生徒たちも信頼を寄せている。
ーー女子生徒
「悩みがあるときとかに1人1人に寄り添ってくれるところが優しい」
ーー男子生徒
「厳しいけど思いやりのある発言がとても好き」
手当の発生しない部活動の指導も「生徒たちの今後の人生の役に…」

そして午後4時すぎ。
定時では午後4時半に退勤となっているが、教員のほとんどが放課後は部活動の指導に。
芦刈さんも野球部に携わっているが平日は手当は発生しない。
それでも自らの指導が生徒たちの今後の人生に役に立ってくれればとやりがいを持って日々取り組んでいる。
ーー芦刈祥悟さん
「中身がなかなか理解されずに長時間労働と叫ばれて、それで人手不足に陥ってしまうというのは私としても悩ましい。人との関わりというのが自分の人生にとっても貴重な経験になっているし、教員と生徒、保護者という関係だけではなくてそれを超えた繋がりとかが持てたりした時とかは自分にとってやりがいを感じる」
日本も海外も約9割が「やりがいを感じる」一方で給与の満足度は…
冒頭に伝えたOECDの調査では学校の先生の仕事のやりがいについても調査している。
日本も海外も「やりがいを感じている」などと回答した教員は小・中学校ともに約9割に上っている。一方で、「事務業務が多い」「保護者の対応にストレスを感じる」と答えた教員は日本ではいずれも6年前の調査を上回っている。

また、仕事全体の満足度、給与の満足度については前回の調査よりもさらに低下していた。
求められる教育現場の環境改善 進む事務業務の省力化
国もこうした教育現場の環境改善は急務として2018年から働き方改革を進めていて仕事に係る時間は徐々に減少している。
大分市教育委員会によると、市内の小・中学校ではこれまで教員が行っていた資料の印刷や配布の業務を学校で働く事務職員に割り振ったり、勤務時間外の電話対応を自動音声案内にするなどし、事務業務の省力化に取り組んでいる。

部活動については休日の活動を地域のスポーツクラブなどに依頼する「地域展開」を目指しているが、指導者の確保や活動費の保護者負担など様々な課題があり、中々進んでいないのが現状だという。

やりがいを感じる学校の先生たちが生徒と接する機会に多くの時間を費やすためにも、また、なり手を確保するためにも学校の職場環境の改善は必要不可欠かもしれない。
(テレビ大分)
