2013年、京都市で『王将フードサービス』の社長が殺害された事件。殺人などの罪に問われている特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部、田中幸雄被告(59)の初公判が2025年11月26日、京都地裁で開かれ、被告は無罪を主張した。
大学中退 サラリーマンを経て暴力団に
特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部の田中幸雄被告(59)。田中被告は、大学を中退後、サラリーマンを経て30代で工藤会石田組に加入した。
2003年には、みかじめ料を巡ってパチンコ店にトラックで突っ込む事件を起こしたとして逮捕された。

そのときの取り調べを直接、傍らで見ていた元福岡県警の捜査員、花田英治氏は「(被告は)事件についても、背後関係は言っていない」と当時のことを記憶している。

「(被告は)新しいシノギ先を見つけたと(話していた)。パチンコ店から“みかじめ”を取って、親分に喜んでもらおうと思って。それでトラックに乗って行ったと(話していた)」

「そのときは、犯歴もなかったんじゃないかな。だけど意外とヤクザに向いているような性格だとは思った。これで刑務所に行って俺は名前を挙げられるというようなことに、本人はワクワクしていたような感じだった」と花田氏は田中被告の印象を語った。

さらに「工藤会のいろんなIT文書とか、そういうの『私が全部しよるんですよ』って。『私が詳しいんですよ』ってなんか自慢しよってね。パソコンが得意だと言うて」と田中被告の意外な一面を語った。
工藤会がかかわった“狂暴事件”
2008年1月17日に発生した大林組銃撃事件。田中被告はパチンコ店襲撃事件から5年後、今度は福岡市博多区の路上で大手ゼネコン、大林組の社員が乗った車に向けて拳銃を発砲した。
事件の背景には、工藤会または田中被告が所属する石田組の利益のため大林組を脅迫する狙いがあったとされている。田中被告はこの事件により、福岡刑務所で懲役10年の服役中だった。

福岡県警で暴力団対策を担っていた藪正孝氏は「工藤会にとって『北九州は自分たちの縄張り』。以前は大型工事をやるなら工藤会に『みかじめ料』を払うのが大前提だった。ところが多くの企業がそれを断ち出し始めた。小倉(北九州市)の大型工事を大林組が受注した」と事件の背景を語った。

さらに「大林組の下で工事を受注した会社経営者が何者かに刺されて後日、亡くなる事件も発生している。工藤会側の脅しがあったが大林組は屈服しなかった。あえて社員の人が乗っている車に銃撃することで、脅迫の度合いを強めた」とその凶暴性について語った。
「息を潜めて行動しろ」とメモに…
田中被告は『王将事件』にも関わっているのか? 検察は冒頭陳述で事件現場付近から見つかった2本のタバコから検出されたDNA型が、田中被告と一致したと主張。

事件前からほかの組員らに「旅行にいく」「電話は出られない」などと伝えて音信不通になり、組事務所への出入りもなかったとも指摘した。

さらに検察は冒頭陳述で、社長殺害からちょうど半年が経過した2014年6月19日に田中被告が自身の携帯電話のメモ帳にある文面を残していたことを明らかにした。
「見張りを怠ってはならない。警戒を解いてはならない。常に用心を怠らないこと。だからといって怯え過ぎないこと。目立つことはするな。息を潜めて行動しろ。深海魚のように人知れず、泳ぎ回れ」
それまで組織のために事件を繰り返してきた田中被告。
しかし『王将事件』に関しては、工藤会の組織的犯行や田中被告本人の個人的な動機もないという声もある。

元福岡県警の藪正孝氏は「王将の社長や会社と工藤会は、接点やトラブルは私が担当しているときは一切、聞いたことがない」と話す。

そして「工藤会本体については、ちょっと考えにくい。田中被告本人は、恐らく接点はない、原因も動機もないはず」と首を捻る。

「私は決して犯人ではありません」と罪状認否で無実を叫んだ田中被告。
捜査関係者によると、殺害された大東さんは事件前、周囲に「殺されるかもしれない」と話していたという。

大東さんは一体何に怯えていたのか? いまだ不明な点が多い『王将社長射殺事件』。
今回の初公判を含め11回の審理を経て、2026年10月に判決が言い渡される予定だ。
(テレビ西日本)
