2013年、京都市で『王将フードサービス』の社長が殺害された事件。殺人などの罪に問われている特定危険指定暴力団･工藤会系組幹部、田中幸雄被告（59）の初公判が2025年11月26日、京都地裁で開かれ、被告は無罪を主張した。
25口径拳銃で胸などを撃たれ死亡
12年前の2013年12月19日の早朝、京都市山科区で起きた『王将社長射殺事件』。『餃子の王将』を展開する『王将フードサービス』の当時の社長、大東隆行さん（当時 72歳）が、胸や腹を25口径の拳銃で撃たれ、殺害された事件だ。
放たれた銃弾4発全てが、大東さんに命中していたことから警察は「銃の扱いに慣れた人物」による犯行とみて捜査を続けた。
そして事件は、発生から9年後、急展開をみせる。警察は、事件現場で回収していたタバコの吸い殻のDNA型が一致したなどとして、福岡刑務所で受刑中の身だった田中被告の逮捕に踏み切ったのだ。
起訴状などによると田中被告は、協力者らと共謀して拳銃を発射し、大東さんを殺害したとされている。
2025年11月26日、京都地裁で開かれた田中被告の初公判。廷内には不測の事態に備えて防弾パネルが設置された。
田中被告を裁判員裁判の対象から除外し、裁判官のみで審理を行った京都地裁は、田中被告が工藤会の組幹部であることを考慮したとみられている。
傍聴人「工藤会が何やねん！」
罪状認否で田中被告は「私は決して犯人ではありません。任侠の志として濡れ衣のひとつやふたつ、甘んじて受け入れます。だからと言ってセンセーショナルな事件まで、到底、承服できない。もう1度言います。私自身は決して犯人ではありません」と力強い声で無罪を主張した。
さらに弁護側も「田中さんの言う通りで、犯人ではありませんので、無罪です」と主張したのだ。
すると法廷には「何が無罪やねん。工藤会が何やねん。一般人に手出していいんか。うちの大切なお父さん殺して！」と叫ぶ声が響いた。
この声を耳にした裁判長が一時、田中被告を退廷させるという一幕もあった。
「事件当日、福岡県にいた可能性」
裁判の争点は、犯人と田中被告の“同一性”だ。
田中被告のDNA型と一致するタバコの吸い殻や犯行に使われたとみられるバイクは見つかっているが、田中被告の供述はなく、証拠はいわゆる“状況証拠”のみしかない。
現場で採取されたDNAを証拠として田中被告を『王将事件』の実行犯と主張する検察に対して、弁護側は冒頭陳述で「検察官は、間接事実によって被告人の犯人性を立証しようとするが、決め手になるものではない。被告人は犯人ではない」と反論した。
さらに「事件当日、福岡県にいた可能性がある。事件当日が、被告人にとっては特別な日ではないからである。弁護人も被告人が捜査機関から見てそのような人物であることは否定しない。しかし被告人は犯人ではない。事件当日に福岡県にいた可能性を立証する」と続けた。
田中被告は事件発生当時、工藤会のなかで二次団体組長に次ぐ役職『上席専務理事』を務めるとともに、工藤会石田組本部長の地位にあった。
その人柄について元工藤会系の組員たちは「おとなしい人だった。見た目は粗暴やけどね、真面目。“今風”のヤクザ。規律正しい」（元工藤会系組員A）。
また「ニュースで逮捕されたときの映像を見たが、あれは私たちが知る田中さんの顔ではなかった。田中さんはいつもニコニコしていて、ヤクザという感じはしなかった」（元工藤会系組員B）などと一様に驚いた表情をみせた。
“今風”のヤクザと呼ばれていた田中被告。一体、どんな人物だったのか？
（テレビ西日本）
