農林水産省が12月5日に発表した全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は5キロ税込み4335円で、2022年の調査開始以降、最高値を更新した。福井県内のスーパーや卸売業者を取材すると、コメの高値が続く理由が見えてきた。
小売店が卸売業者に値引き交渉
福井市にあるスーパー「Aコープやしろ店」を訪ねると、コシヒカリやいちほまれ、ハナエチゼンなど県内産の新米の一部が値引きされていた。新米が出回り始めた9月以降も価格は高止まりしていたが、歳末セールに合わせて価格を下げたという。
県がブランド化を進める「いちほまれ」は通常、5キロ税込み5702円を4730円に、コシヒカリは5キロ5270円のところ4622円と、600円から1000円程度安く設定。この価格が実現できたのは、卸売業者に要望し、仕入れ価格を抑えられたからだという。
山上剛副店長は「お客さまに少しでもコメを安く提供したいと思い、仕入れ価格を提示して卸売業者に協力してもらい、この値段になっている」と話す。
高止まりが続いているコメの価格。ただ、歳末商戦とはいえ卸売業者が値引き交渉に応じ始めた背景には、コメの在庫に余裕が出てきたのではないかとの見方もある。
JA福井県「コメの回転が悪い」
実は、11月25日に開かれた定例会見でJA福井県は、生産者から集めたコメのうち卸業者へ出荷した割合が前年の6割程度にとどまっていることを明らかにしたのだ。松田修昌常務は「新米の販売の進みが近年になく遅い。倉庫に預かったコメの回転が悪く、ずっと倉庫に眠り出庫されない状況が続いている」とした。
11月25日の定例会見でJA福井県は、生産者から集めたコメのうち卸業者へ出荷した割合が前年の6割程度にとどまっていることを明らかにした。松田修昌常務は「11月は17.6%と、新米の販売の進みが近年になく遅い。倉庫に預かったコメの回転が悪く、ずっと倉庫に眠り出庫されない状況が続く」とした。
JA福井県は、卸業者への販売契約は完了していて「最終的に倉庫にコメが余ることはない」 としている。だが、少なくとも現時点では例年に比べて集荷倉庫にコメが残っているということになる。
「それなりの価格で買い付けたので…」卸業者の葛藤
倉庫にコメがあるのは卸売業者も同じようだ。
県内のある業者が、匿名を条件に福井テレビの取材に応じた。

「ウチの倉庫には、かなりの在庫が残っている。ただ、それなりの価格で買い付けたので簡単に安売りすることはできない。全国的に騒がれているような1000円、2000円単位での大暴落が起きれば、大赤字になる」こう打ち明けたのだ。
県内でもコメの高値が続く背景には、高値で買い付けた卸売業者が“安売りをしたくない”という思惑があるようだ。
「徐々に価格は下がるのでは」
一方、消費者に近いスーパー側はというと…「春先に少し安くなるのかな。今月、販売している価格が通常の価格になるのでは」とコメ価格の低下を見越す。
また、県内の大手スーパーでコメの買い付けを担当するバイヤーも、福井テレビの取材にこう答えている。
「石川県や新潟県産のコメに値下がりの兆候が見られる。福井県産米も徐々に価格が下がってくるのではないか」
依然として続く「令和の米騒動」。値下がりを期待する消費者と、できるだけ高値で売りたい業者。それぞれが納得できるのは、どれくらいの価格で、それが実現する日は来るのだろうか。
