スーパーに行ってもコメが買えない…この“令和のコメ騒動”はいつまで続くのか?背景には、2023年の猛暑によるコメの流通量の減少などがある。コメの品薄状態は私たちの食卓に今後どのくらい影響するのか…最新状況を取材した。

購入は「1人1袋まで」

全国で騒がれている“コメ不足”だが、コシヒカリ発祥の地でもある“米どころ”福井県の状況はどうなのか。8月16日、福井市内のスーパー「Aコープやしろ店」のコメ売り場を訪れると、1人1袋の購入制限を知らせる掲示がされていた。

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買い物客に話を聞くと「5kgずつ買っている。この先コメがなくなるのか不安はある」と話す人がいる一方で「もうすぐ新米が出るのでなくなる心配はしていない」と反応は様々だった。

Aコープやしろ店の山上剛副店長は「バックヤードには在庫が全くなく売り場に出ているだけの状態なので、すごく品薄。例年はこのようなことはなく、かなり前にあったかなという印象」と話す。

系列の他の店舗でもコメの在庫は逼迫(ひっぱく)しているといい、やはり福井県内でも全国同様に品薄状態のようだ。

店は、この時期のコメ不足は「異例な状況だ」という。その理由として昨シーズンの猛暑の影響があるといい「(去年)高温が続いたことで一等米の比率がすごく低く、精米された商品が少なかった」と、山上副店長は説明する。

銘柄によって店頭から消える可能性

“異例のコメ不足”の要因は、「需要の増加」にもあると言われている。農林水産省によると、ここ10年、コメの需要量は年間約10万トンずつ減少してきた。しかしこの1年で、約11万トン増加している。

大きく2つの理由があり、1つは外国人観光客、いわゆるインバウンド需要の増加、もう1つは麺やパンなどと比べて値上がり幅が小さいため、主食としての消費が伸びたことが挙げられている。 

取材した16日は完売している銘柄はなかったものの、今後は銘柄によって店頭から消える可能性もあるという。山上副店長は「新米のハナエチゼンが来週には出荷されると思うので売り場の方は持つと思うが、コシヒカリは9月10日前後に販売されるまでは、不足するのではないか」と予測している。

同日、福井市・清水杉谷町のJA福井県・農業施設センターでは、農家が収穫したばかりのハナエチゼンを出荷していた。2024年の出来(でき)について農家は「水不足もなかったし、天気もよかったので十分やと思う。皆さんに喜んでいただけると思う」と話していた。

JA福井県の担当者によると、ハナエチゼンの収量と品質は平年並みで、数日中に新米の販売が始まる見込み。店頭からコメが消える事態は避けられそうで、消費者には“買い占め”を控えるよう呼びかけている。

コメの店頭価格“高くなる”

“異例のコメ不足”の要因は、猛暑の影響で2023年産のコメの収量が少なかったことに加え、インバウンドや主食としての需要増加が要因だった。では、新米が出荷される今後の見通しはというと、JA福井県は「店頭価格は高くなる」と見込んでいる。

その理由の1つは、JAなどが農家からコメを買い取るときの価格を引き上げているからだ。コメ農家の収入は、コメが卸売りなどに売れてから収入が入るのではなく、JAなどの集荷業者が販売額を見越して前払いし、さらに実際に売れた金額との差額を追加で払う仕組みになっている。

JA福井県は、2023年の暑さによる収量の減少やインバウンド需要の増加に伴う品薄の状況、そして全国的な相場から、今後取り引きされるコメの価格が2023年よりも高値になると想定している。

そこで、農家がコメを出荷する際に支払う2024年産ハナエチゼンの「前払い金」を、1俵(60kg)あたり1万6000円と、去年より大幅に4800円引き上げた。

この前払い金の引き上げについて農家は「肥料や燃料、機械や資材が上がっているので、それを考えると今年上がった分は適正か最低ラインくらいだと思う」と話している。   

コシヒカリなど他の銘柄については、8月末に開かれるJA福井県の理事会で「前払い金」が決まるが、ハナエチゼンの例を見ると上昇基調だ。全国的にじわじわとコメ価格上昇が広がり始めていて、今後の食卓にも影響がありそうだ。

(福井テレビ)

福井テレビ
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