高円宮妃久子さまは、12月3日、都内で開かれたAED推進フォーラムに出席されました。
AED推進フォーラムを主催する日本AED財団は、AEDの普及、啓発、教育そして訓練を進めることで突然死から人を救える社会を目指して2016年に設立されました。
久子さまは、2017年から財団の名誉総裁を務めていて、推進フォーラムには毎年出席し、おことばを述べられています。
「まず呼ぼう、AED」
久子さまは、今回のおことばで「まず呼ぼう、AED」というスローガンについて話をされています。
「『まず呼ぼう、AED』の一番の目的は、よくある『どなたかお医者様いらっしゃいますか』という、あの声に慣れている私どもからすると、素人の誰かが頑張ってAEDを探してきて、どうにかしよう、と思っているときに、その声を聞いた途端に、自分の出る幕ではないかもしれないと思って、引っ込んでしまうかもしれません。なかなか一般人としては、そこで手を貸そうと思うよりは、専門家に任せようと思いがちかと思います。そうではなくて、『まず呼ぼう、AED』なんです」
持ってくることの大切さだけでなく、素人の立場であっても勇気を持ってアクションすることも大切だと話されています。
そして、立ち止まってしまったとき、後悔する結末がやってくるかもしれないことをご自分の経験から話されています。
高齢男性が突然倒れ…
久子さまは、2023年6月にスコットランドを訪問し、レセプションに出席された際、高齢の男性が倒れたということでした。
スコットランドも温暖化が進み、伝統的な衣装では暑くなる季節だったのです。
日本では、まず熱中症を想像しますが、レセプションにいた医師は、産婦人科医に精神科医、そしてリュウマチを専門とする医師で、倒れた男性は車の陰に横たえられただけだったといいます。
久子さまは、熱中症を疑い、2回ほどその疑いを声にしましたが、医師も3人いて、自分の出る幕ではないと思われたそうです。
結局その方は熱中症で、命には別状は無かったのですが、その時こんなことを思われたそうです。「私はあそこで引いたけども、もうちょっと強く言うべきではなかったか。もし本当に命になにか支障をきたされた場合には、私は一生悔いたのではないか」と。
「皆様とご一緒に勉強」
フォーラムのシンポジウムではAEDにより救われた方のほか、AEDを含めた蘇生術で救助を行った方から経験談が語られました。

そこには、勇気を持って一歩前に踏み出したことで、後悔しなかった話、さらには、置き場所を調べたり使い方や蘇生術を学び、いざというときのための訓練の大切さも語られました。
久子さまは、最愛の高円宮さまを2002年に心室細動で亡くされました。
その後AEDの重要性は広まっていきました。
今回のフォーラムで久子さまは「皆様とご一緒に勉強させていただくのを楽しみにしております」と述べられています。
AEDの認知度はあがり、設置台数も増えています。
ただ、こうしたAEDも、使われなくては本当の意味での普及には繋がっていきません。
そうした意味で、「まず呼ぼう、AED」というスローガンには、動く大切さも含まれていると感じています。
このスローガンは、久子さまのおことばから生まれたものでした。
【執筆:フジテレビ報道局解説委員 橋本寿史】
