鹿児島空港の駐車場は約1600台を収容できるが週末や祝日前後は混雑が深刻な事態に陥っている。背景には空港バスの減便と自家用車利用の増加があり、解決策として立体駐車場の設置や駐車料金の見直しなどが検討されている。
満車日数が1.3倍に増加、その背景は
3連休の中日となった2025年10月12日、鹿児島空港駐車場は車でびっしりと埋まり、入口ゲート前には長蛇の列が発生した。
空港ターミナルビル前にある鹿児島空港駐車場。満車となる日数は年々増加している。63日だったコロナ禍前の2019年度と比較すると、2024年度は1.3倍増の83日に達した。
国土交通省大阪航空局空港管理課・比嘉直哉課長は「主に空港バスで減便や路線廃止もあって、自家用車の利用が増加していると理解」とその背景を説明する。
鹿児島交通と南国交通が運行する空港バス。コロナ禍前には計266便あったが現在は156便と100便以上減少している。鹿児島交通によると、減便の背景にはコロナ禍での運転手の離職に伴う人手不足があり、便数回復への見通しは立っていない状況だ。
県のデータに基づいて計算すると、空港への移動手段の第1位は自家用車で、その割合は86.9%に達している。また「バスが不便になったため、空港への乗り入れ手段を自家用車に変えた」との回答も多く、今後も自家用車が主要な空港アクセス手段であり続けることが予想される。
対策のひとつ、立体駐車場の可能性
駐車場の混雑解消に向け、国や県、駐車場運営会社などで構成される検討会では、立体駐車場の設置が重要なテーマとなっている。参考となるのが、4年前に立体駐車場を完成させた熊本県の阿蘇くまもと空港の事例だ。
阿蘇くまもと空港の駐車スペースは約2400台分で、そのうち約800台分が立体駐車場に収容されている。2016年の熊本地震でターミナルビルなどに被害があった同空港では、立体駐車場の設置はターミナルビル建て替え計画とともに進められた。その結果、駐車場の収容台数は以前より1000台ほど増えている。熊本空港株式会社の友清佳樹経営企画本部長は「当時と比べると、相当状況は改善しているのではと捉えている」と話す。

ただし、立体駐車場の設置には課題もある。比嘉課長は「費用が発生するので、費用を回収する適切な料金体系や整備期間中の一時的な駐車場容量の確保が課題」と指摘する。
阿蘇くまもと空港の場合、立体駐車場設置に要した期間は9カ月だったが、友清本部長によると「ちょうどコロナの最中、旅客者数が大幅に減った状況だったので、満車になるという状況には陥らなかった。タイミングが非常に良かった」という。
鹿児島空港の立体駐車場については、国と契約した事業者による調査結果が2026年2月までに出される予定で、検討会はそれを踏まえて最終判断を下すことになる。
短期的対策として駐車料金の見直しも
立体駐車場が「中期的取り組み」と位置づけられる一方、「短期的取り組み」として駐車料金の見直しも検討されている。
九州各県の空港駐車場の2時間駐車料金は、阿蘇くまもと空港と宮崎空港が300円で、那覇空港は500円、福岡空港は1,000円だ。一方鹿児島空港は無料。この使いやすさもあり、鹿児島空港駐車場の利用時間は2時間未満が全体の70%と圧倒的多数を占めている。
比嘉課長は「料金見直しで空港滞在時間の短縮などが見込まれるので、駐車枠の確保ができる。これは混雑緩和にもつながる」と説明する。
北海道の新千歳空港では、10月10日に駐車料金を改定し、2時間の駐車料金を300円から1000円に引き上げた。新千歳空港によると、この料金改定以降、駐車場は一度も満車になっていないという。

一方で比嘉課長は「料金を上げても利用者の数が減らず、駐車場事業者の利益だけが増えてしまうと、そもそも上げる意味がなくなる。適正な料金がどれぐらいになるかを見極めながらいくことが課題」と慎重な姿勢も示している。
鹿児島空港駐車場では現在、臨時駐車場の収容台数拡大や警備員増員によるスムーズな誘導、ホームページ上の混雑状況リアルタイム表示などの取り組みも行われている。空港利用客にとって最初の接点となる駐車場を、今後いかに使いやすくしていくか、検討会の判断が注目される。
(動画で見る:週末は満車続出 鹿児島空港の駐車場不足、原因と“立体化”検討の現実味)
