鹿児島市が整備を目指すサッカースタジアムの建設場所について、新たな展開があった。11月19日に開催された県と鹿児島市の意見交換会で、白波スタジアム隣接の「県立鴨池庭球場」が候補地となり得るとして調査を行うことで合意したのである。これまでサンロイヤルホテル跡地が有力候補として挙げられていたが、今回の合意により選択肢が広がることとなった。
県立鴨池庭球場の規模と可能性
県立鴨池庭球場は鹿児島市与次郎2丁目に位置し、テニスコート16面を備え、約1万8000平方メートルの広さを持つ。現在の白波スタジアムが約3万平方メートルであることを考えると、庭球場だけではスタジアム建設に必要な広さが足りないのではという懸念がある。
この点について下鶴市長は「県立鴨池庭球場敷地は周辺に広い園路があるので園路まで含めれば可能ではないか」と述べ、周辺の敷地も活用することでスタジアム建設が可能との見解を示した。
サンロイヤルホテル跡地案との比較
これまで塩田知事と下鶴市長が「候補地となり得る」としてきたのは、同じく鹿児島市与次郎にある鹿児島サンロイヤルホテル跡地であった。しかし、この案には複数の課題が存在していた。
サンロイヤルホテルは本港区エリアの住吉町15番街区への移転を計画しているが、ホテル周辺には多くの地権者がおり、土地取得や費用面で課題があった。さらに、新ホテルの営業開始は2031年4月の予定であり、跡地の活用までに長い時間がかかる点も問題視されていた。
県立鴨池庭球場案のメリット
一方で、県立鴨池庭球場案には複数のメリットがある。まず、庭球場の敷地は鹿児島市が県に無償で貸与しているため、土地取得の費用が不要である。
また、庭球場をスタジアムに転用する場合、庭球場機能は正面にある文化公園に移設する計画が示されているが、この文化公園も鹿児島市の所有地であるため、移設先の確保についても大きな障壁はない。
下鶴市長は「この(庭球場の)案は時間軸や費用面の観点からメリットがあると考えているが、スタジアムおよび庭球場の配置が可能かどうか、専門的な調査が必要と考えている」と述べ、実現可能性を慎重に見極める姿勢を示した。
今後の展望
塩田知事も「できるだけ時間軸を頭に置きながら一緒に取り組んでいきたい。まずはこの2カ所で調査をしてその中からと考えている」と述べ、サンロイヤルホテル跡地と県立鴨池庭球場の両案について調査を進める方針を明らかにした。
北ふ頭案が撤回されてから約1年9カ月ぶりに前進したサッカースタジアム計画。鹿児島市は今後、予算を計上して専門的な調査に着手する予定である。サッカースタジアム建設に向けた動きは、ようやく具体的な検討段階に入りつつある。
(動画で見る:スタジアム計画に新展開 鹿児島・鴨池庭球場を候補地に調査へ、土地取得の“コストメリット”も)
