貸金か、カジノの軍資金か…
この裁判の争点は、2人の間を行き来した多額のお金が、貸金だったのか、あるいは彼女がオンラインカジノで遊ぶための軍資金だったのかだ。
判決はまず、「元彼に貸した584万円あまりが返済されていない」という原告の主張について、「金銭のやり取りは同居する若年の男女間のものであり、原告自身も個々の支払いが貸し付けなのか、単なる資金移動なのかが曖昧なものであると自認している」と認定した。
契約書や領収書がなく、SNSのやり取りを精査しても「具体的に返還合意がされた事を裏付ける客観的な証拠は見当たらない」とした。
また、1500万円を精算するという被告のSNSでのメッセージについては、被告の主張通り、「交際解消を切り出されたことから、関係を続けるために、具体的な支払計画等もないままに投稿されたにすぎない」と認定。これらの点から、原告が主張する返還合意を裏付ける証拠はないと断じた。
オンラインカジノの影
さらに、判決は、元カノである原告の主張に「疑義を生じさせる事情」があるとした。
裁判所は、被告である元カレがオンラインカジノのVIP会員であったと認定し、2人のSNSでのやり取りに注目した。
2021年6月、原告から被告に「カジノいてきます」と連絡。翌日には「1万かけたら増えた」「バカラでへた」などと連絡していた。
さらに8月には、被告から、「必要なやつ以外全部振り込んで俺のからスポーツベットやる」「VIP特典あるからたぶん」と原告に送信し、原告は「まじ!アツ!」と返信し、翌日に69万9560円と11万円を振り込んでいた。
これらの点から、判決は「原告が被告に渡したお金は原告がオンラインカジノで遊興したり、被告からの借り入れの返済をしたりする趣旨のものが多く含まれていた」と認定した。
認容額わずか0.15%
原告は貸金返還請求584万円や、不当利得返還請求419万円、FX資金返還請求110万円、詐欺による損害賠償50万円を求めていたが、東京地裁は11月4日、いずれも「的確な証拠を欠く」として退けた。
判決では、「交際中の若年男女間で、金銭の性質に関する認識が曖昧だった」とし、契約書や領収書もなく、LINEやSNSのやり取りも返還合意を裏付けるものではないと判断した。
唯一認められたのは、交際終了後も返さなかったノートパソコンの占有に関する損害賠償。金額は1万7000円。請求総額1165万円に対し、認容額はわずか0.15%だった。
恋愛関係における金銭のやり取りが、法廷ではどれほど曖昧になり得るかを示した判決となった。
