JR人吉駅の隣に展示されている『SL人吉』が、11月18日で製造から103年を迎える。このSL人吉の誕生日を前に、人吉市は11月16日に列車をレールで走らせる『動態展示』を開始し、その姿を一目見ようと多くの人が集まった。
現役引退も動力を圧縮空気に換え再び
JR肥薩線の人吉駅隣に展示されている蒸気機関車・58654号機。

1922年(大正11)製造で、『ハチロク』の愛称で親しまれ、SL人吉として肥薩線を走る人気の観光列車だったが、肥薩線が2020年7月豪雨で被災し、いまなお、一部区間で運休が続いていて、58654号機も車体の老朽化などのため、2024年3月に現役を引退した。

JR九州から58654号機を無償で譲り受けた人吉市は、『SL人吉』として人吉駅の隣に展示していた。

人吉市は、SL人吉を単に展示するだけでなく、動く姿を見てもらおうと、動態展示を検討していて、動力をこれまでの『蒸気』から『圧縮空気』に換えて、レールも25メートル延長するなど、準備を進めてきた。
現役のころのように汽笛を鳴らし動き出す
そして、11月16日に動態展示お披露目の日を迎えた。

16日には金子恭之国交相も参加し、「令和2年豪雨から5年4カ月がたった。被災前の人吉を取り戻すためには、いろんな努力の中で地域創成をやっていかないといけない。きょうからはSL人吉の動態化で全国の『鉄ちゃん』のよりどころになると思う」と述べた。

「再始動、出発進行!」の掛け声に合わせて、現役のころのように力強く汽笛を鳴らしたSL人吉は多くの人たちが見守る中、ゆっくりと車輪を回し、約1年8カ月ぶりに自分の力で前に進んだ。

熊本市から来た小学生は「〈うぉーーっ〉て感じがした。すごいを超えた〈すごい〉だった」と興奮した様子で、鹿児島市から来た中学生も「汽笛を久々に聞けてよかった。生きている感じがする」と話した。

また、SL人吉を整備してきた玉井明人さんは「汽笛を久しぶりに聞いて〈また動き出す〉と思い、うれしかった」と話し、鉄道ファンで小学生の村上一心くんも「まだ…言葉が出ない。動くのだけでも十分…」と、言葉を詰まらせながら話した。
製造から103年 再び自らの力で走り出す
11月18日で製造から103年を迎えたSL人吉。

わずか20メートルほどの走行はあったが、汽笛を上げ、白い煙を吐きながら、再び自らの力で走り出したその姿を、訪れた多くの人が見つめていた。

人吉市によると、SL人吉の動態展示は月に1回ほどを計画していて、市のホームページやSNSで告知を予定。今後、格納庫を整備して、より充実した保存や整備を検討している。
(テレビ熊本)
