少子化が進むなか、いま高校進学のかたちが大きく変わろうとしている。その現場を取材した。

60年以上の歴史ある女子高が共学へ

福岡市中央区にある中村学園女子高校。この日、中学3年生とその保護者を対象にした学校説明会『オープンスクール』が行われていた。

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私立の女子校として60年以上の歴史がある中村学園だが、この日の参加者には男子生徒の姿もみられた。実は、来年度から男女共学校に姿を変えるのだ。

福岡で共学化といえば、男子校だった東福岡高校も2024年度から共学になった。これにより、男女問わず高い人気となっている。それに続く中村学園の共学化。学校側によると注目度は予想以上だったという。

石丸篤志校長は「当初、説明会は午前中だけで予定していたんですが、応募の方がたくさんおられたということで、急遽、午後まで二部構成でさせて頂きました」と嬉しい悲鳴を上げていた。

当初、予定していた1000人の枠は、あっという間に埋まり、約2000人が参加。そのうち3分の1は、男子生徒だった。

オープンスクールでの模擬授業を覗いてみた。教室のひとつでは、液体窒素を使った実験が行われていた。参加した中学生たちも目を輝かせている。私立高校ならではの特色ある授業は、学校選びの大きなポイントになりそうだ。

そして気になる学食。中学生たちは、実際に食べてみることで学校生活へのイメージを膨らませていた。「学食がおいしそうで、校舎がきれい。男子が増えることによって、また違う世界観というかいろんなことができるからいい」(女子)。

「ほかの学校は先に男子がいるけど、ここは僕たちが初代なんで楽しみです」(男子)と参加した中学生は、みな高校生活に夢を抱いていた。

私立高校授業料無償化への動き

中村学園の人気の理由は共学化だけではない。2026年度から所得制限なしで私立高校の授業料を実質無償化しようという国の動きも追い風になっている。石丸校長は「『私学に行きたいけれど費用の面で公立を』という生徒さんも多かったと聞いてますので、今回の件は私学としては大変、嬉しいかなと思っています」と話す。

福岡市東区の中学校で開かれた進路説明会。私立高校の授業料無償化について保護者の1人は「上の子が、いま私立に行ってるが、公立と違うのは、施設の充実とか、やっぱりいいところはたくさんある。国から補償が出るならいいんじゃないかな」と話す。

また別の保護者も「『私立はちょっと厳しい』と思うところもあったけど、余裕ができるのであれば、視野に入れてもらいたい」と前向きだ。

高校無償化に向け保護者の期待感も高まるなか、現在、国会では私立高校の無償化について2026年春からの実施を目指し審議が進んでいる。しかしまだ実施内容などは固まっておらず、学校として明確に説明ができないのが現状だ。

「進路選択する際に幅が広がるので、国に早く決めてもらいたい」と話すのは青葉中学校の進路指導主事、相良洋介教諭。12月1日からの三者面談で志望校を決めていくことにしている青葉中学校では、判断材料となるお金の話だけに気を揉んでいるという。

「金銭面で公立志向が強かったんですが、もし国の支援金で、そこが考慮されるのなら、私立の人気は高まるのではないか」(青葉中学校進路指導主事・相良洋介教諭)。

一方、福岡県の担当者は高校無償化が実施されるにしても注意しておく点があると指摘する。福岡県私学振興課堺裕之課長は「高校無償化については、授業料が対象ですが、私立高校ではこれ以外に入学金とか施設整備費、授業料以外の納付金が必要になりますので、事前に各学校の納付金についてはその内訳をしっかり調べて自己負担が発生するかどうかを十分に確認してほしい」と話す。

定員割れ続く大坂 進む“公立離れ”

一足早く私立の無償化を実施している大阪府では、2025年春、私立高校に進学する人の割合が初めて40%を超えた。そして、この私立人気に伴って大阪府でははっきりと『公立離れ』が進んでいて、公立高校の定員割れが相次いでいる。

東福岡高校や中村女子に続いて、2027年度には、福岡市立の福岡女子高校も共学化を予定している。共学化することで受験希望者が増え、全体の学力も上がるという流れはこれまでも福大大濠などでもみられてきた。福岡県は、昔から公立志向が非常に強くて、いまもその傾向は根強く残っているが、私立の無償化が決まれば福岡でも地殻変動みたいなものが起きるかもしれない。

(テレビ西日本)

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