人気の観光地、韓国・ソウルで日本人観光客が相次いで事故の被害に遭っている。
11月2日深夜、横断歩道を渡っていた日本人観光客の親子が飲酒運転の車にひかれ、母親(58)が死亡。娘(38)も腕を骨折した。
事故現場は日本人観光客も多く訪れる「東大門」前の交差点だったこともあり、日韓で大きく報じられた。
しかしこの事故の3週間ほど前に、別の日本人観光客が被害に遭っていることがわかった。
「ストップ、ブレーキ」と叫んだが……被害者が衝撃事故の瞬間を語る
10月21日の午後7時頃、ソウル市内でタクシーが対向車線にはみ出し、走ってきた車と正面衝突した。タクシーは衝突の勢いで道路脇のフェンスを壊し、さらに先の公園まで突っ込んだという。現場には車両の破片が残されていた。
この事故でタクシーに乗っていた日本人男性(29)が肋骨を骨折するなど全治10週間、妻(26)も胸の骨を折るなど全治12週間の重傷に。
そして生後9カ月の長女が意識不明の重体となった。
タクシーを運転していたのは70代の運転手。
当初、警察の取り調べに「車両が急発進した」と主張していたが、その後、「アクセルを踏み間違えた」と供述を変えたという。
意識不明の長女の父親は事故当時の状況について、弁護士を通じてFNNの取材に応じた。
Q)事故当時のタクシー運転手の様子は?
父親(26):
運転手はスピードを出す前から鼻歌を歌っていて、急に加速してからも慌てる様子は特にありませんでした。私たちが『ストップ、ブレーキ』と叫びましたが、変わることはありませんでした。ここで死ぬんじゃないかと思いました。運転手は事故後、運転席でうなだれているだけでした。
「家族旅行に来ただけなのに…」父親が悲痛心境語る
事故現場はソウル中心部の小高い丘を走る片側2車線の比較的直線の多い道路だ。
父親はアクセルを踏み間違えたとする運転手の供述に疑問を呈した。
父親(26):
(アクセルを)『踏み間違えた』と言ってるようですが、特に信号もないような道を普通に走っている最中に、急にアクセルを踏み込んでスピードを出し始めたという感じです。『踏み間違えた』いう主張は理解できません。
家族は事故当日に旅行で韓国を訪れ、ソウル駅からホテルに向かう途中で事故に遭った。
生後9カ月の長女は事故から23日たった今も自発呼吸ができず、意識不明のままだ。
父親(26):
ただ家族旅行に来ただけなのに、当たり前の日常が突然なくなり、今でも信じられないです。
外国人被害者が相次ぐ現状に韓国メディアは「国家の恥」
11月2日、ソウルの繁華街・東大門で日本人観光客2人が飲酒運転の車にひかれた事故の1週間前、10月25日の夜には同じくソウルの繁華街・江南で30代のカナダ人男性が犠牲になった。
横断歩道を渡っていたところ、飲酒運転の車にひかれ死亡。
一緒に横断歩道を渡っていた20代の韓国人女性もひかれ、重傷だという。
韓国メディアによると、韓国を訪問した外国人の交通事故被害者は年々増加している。
2023年は1579人だったが、2024年は1718人に増加。今年は8月までで1169人だ。
韓国では2018年に飲酒運転の処罰を強化、2022年には右折車両に横断歩道前での一時停止を義務化するなど、交通ルールを改正した。
しかし韓国メディアは「政府が処罰を疎かにし国民も関心を傾けない結果、『国家の恥』につながった」(11月12日付「毎日日報」)と厳しく批判している。
東大門前の事故現場には花が供えられ、日本語と韓国語で次のようなメッセージが添えられている。
「韓国人として恥ずかしく申し訳ありません。ご冥福をお祈りします」
2025年中には外国人観光客数が2000万人を突破するとみられる韓国。
相次ぐ外国人の事故被害によって「韓流」のイメージが大きく揺れている。
(ソウル支局長 一之瀬登)
