日本人にとって人気の旅行先「韓国」。
しかし、街中を歩く時には気をつけなければいけないことがあります。
韓国は歩行者が死亡する交通事故の割合が日本の2倍となっていて、韓国メディアが「歩行者地獄」と報じたこともあります。
韓国をよく訪れる日本人女性(30代)はこう話します。
「車より歩行者が(安全を)意識するのは日本と全然違うと思う。
よく言われます周りにも。旅行で来る場合は気をつけた方がいいと思う」
また日本から観光に訪れた女性(30代)は次のように話します。
「(韓国では)車が歩行者を見ていないのかと思う時がありました。
歩行者優先じゃないと感じた」
こちらは歩行者が事故に遭った実際の映像です。
【映像】横断歩道でひかれる女性2人
2021年4月 慶尚北道・慶州 提供:ハン・ムンチョルTV
地方都市の道路を走る車のドライブレコーダー映像です。
隣車線の車は停車していますが、この車は横断歩道で止まらずに進入。
ルールに従って渡っていた女性2人をはねました。
1人はボンネットに乗り上げた後、地面に叩きつけられました。
【映像】横断歩道でバイクにひかれた女の子2人
2022年2月 京畿道 提供:ハン・ムンチョルTV
一方、こちらは2人の女の子が横断歩道を走りながら渡っています。
すると車の脇を抜け、赤信号を無視したバイクにはねられてしまいました。
この事故で女の子2人は重傷を負いました。
バイクは宅配中の未成年が運転していました。
歩行者の死亡割合が日本の2倍 “歩行者地獄”との報道も…
韓国では交通死亡事故のうち、歩行者が犠牲になる割合が高く、人口10万人当たり1.8人と報告されていて、これは日本の0.9人の2倍にあたります。

死亡者数は減少傾向にあるものの、死亡事故で歩行者が占める割合は、2023年から再び上昇。
政府系の研究機関「韓国交通研究院」は、2023年の報告書で「交通事故死亡者の10人中4人は歩行中に死亡するという発展途上国型事故の特徴を持つ」と指摘しています。
タクシーや路線バスまで…1時間に65台の「信号無視」
実際にはどんな危険が潜んでいるのか、ソウル中心部の交差点で取材してみると…
【画像】横断歩道に突っ込んで来る車両の数々
目に飛び込んできたのは、車やバイクによる「信号無視」の多さです。
歩行者用の信号が青に変わってからかなり時間がたっているにもかかわらず、横断歩道に突っ込んでくる車両も多く、中には路線バスや歩行者の間をすり抜けるバイクも見られました。

交差点脇に定点カメラを設置して、信号無視をした車両の数を数えてみると…
・一般車両46台
・バイク8台
・バス(路線バス含む)6台
・タクシー5台
1時間に合計65台が信号を無視していました。
【映像】歩行者の前を横切るトラック...記者がスマホで撮影
筆者が出勤途中に街中を歩いた際も、歩行者が青信号で横断歩道を渡っている目の前を複数の車両が横切って行きました。
信号のない横断歩道では車が止まらない…
一方、信号機のない横断歩道はさらに危険です。
若者が多く訪れる弘大(ホンデ)の近く、日本人観光客もよく訪れるエリアにある交差点の様子を取材してみました。
【映像】車が歩行者を“威嚇”するような場面も
車が止まらずに行き交うために、歩行者がなかなか横断歩道を渡れず、歩行者が渡っていても車が近づいてきて、まるで威嚇しているような場面も。
歩行者のすぐ近くを車が通り過ぎる様子が何度もみられました。
また横断歩道を渡ろうとするとクラクションを鳴らして、通り過ぎる車両も目にしました。
韓国で根強い「車優先」 歩行者には憤りも…
こうした状況に憤る市民も少なくありません。
80代女性:
横断歩道を渡ろうとするとバイクが横から来る。マナーが良くないよね。ますますひどくなる。
50代男性:
海外では人が優先ですが、韓国はまず車が優先だから。運転手の意識が足りないと思います。
20代女性:
違反がすごく多いです!ひかれそうになったこともあるし。怖い時が多いです。
「車優先」が根強い韓国 “韓流交通事情”に注意を
韓国ではいまだに「車優先」の感覚が根強く残っていて、専門家は運転手の安全意識が不足していることが背景にあると指摘します。
ソウル大学環境大学院 ハン・サンジン教授:
特に歩行者が横断する時の安全がとても重要ですが、運転手が横断歩道周辺でどんな注意をして運転をしなければならないかについて、認識が足りない側面がある。
では、日本から観光に訪れた場合、どのような点に注意すればよいでしょうか?
在韓日本大使館の「安全マニュアル」では「歩行者、車とも安全に対する配慮が日本と異なるため、車両、バイクなどの動きに常に注意が必要」と呼びかけています。
横断歩道を渡る時は、青に変わっても、しばらくは車が来る恐れがあるので、すぐには渡らず、車両が来ていないか確認することも重要です。
韓国政府も右折車両に横断歩道前での一時停止を義務化するなど、交通ルールを改正し、歩行者保護に乗り出していますが、韓国を訪れる際には日本とは違う“韓流交通事情”を頭に入れておく必要がありそうです。
(ソウル支局長 一之瀬登)