事故直前にもLINE送信か…
午前4時過ぎに会社を出発した被告のトラックは、神奈川県内と東京都内の会社に立ち寄り、荷物を積み込んでから埼玉県内の目的地へ向かった。
判決は、高速道路を走行中に被告の意識が遠のき、車体がふらついて車線逸脱の危険を知らせる警告音が鳴り響いたことで、被告は運転に支障が生じる恐れを認識したと認定。しかし、それでも休憩を取るなどせず、漫然と運転を続けたとしている。
さらに、検察側によると、被告は運転中にもかかわらずハンドルを握りながら女性とLINEでのやり取りをしていたという。
事故を起こす約30分前となる午前7時8分には、女性からLINEで送られてきた弁当の写真に対して、「めっちゃ美味しそう」などと返信していたという。
その後、埼玉県戸田市の美女木ジャンクション付近で、被告の運転するトラックは、ほぼ減速することなく、渋滞の車列に突っ込んでいった。
“無謀な運転”の重み
裁判では、被告の過失の程度が焦点となった。
判決は、「安全運転への配慮を高度に求められる立場にありながら、危険性を全く顧みない無謀な運転行為を開始し、漫然と継続した」と指摘。
弁護側は「勤務先の健康管理がずさん」と管理体制の問題を主張したが、裁判所は「体調不良であろうとも運転を余儀なくされた事情は認められない」と退けた。
正常な運転ができないと認識していた中で、交替を申し出る機会があったにもかかわらず、被告は自ら運転を選択したと認定された。
運転中に意識が朦朧とし、事故直前に車線逸脱を知らせる警告音と振動を認識していたことも、過失を重くした要因とされた。
さらに、押収されたスマートフォンには、児童のわいせつな動画や画像が保存されていたことも判明。事故とは直接の関連性はないものの、常習性もうかがえると指摘され、過失運転致死傷とあわせて児童ポルノ禁止法違反にも問われた。
「前例にないほど犯情が悪い」
体調不良に睡眠不足という複数の危険因子を認識しながら、漫然と運転を続けた結果、3人の命が奪われた事故を起こした被告。
しかも、被告は過去にも事故を起こして過失運転致傷罪で略式命令を受けており、それから1年たたないうちに今回の事故を起こしたことを判決は指摘している。
「何の前触れもなく、ある日、突然、大切な家族を失った遺族らの心痛も計り知れない」
判決は遺族の悲痛な思いに触れつつ、「過失運転致死傷事案の中でも、前例にあまりないほど犯情が悪い事案というべき」と断じ、懲役7年6カ月を言い渡した。
