能登半島地震の被災地に明るい話題が届いた。11月6日に解禁されたズワイガニ、その石川県産ズワイガニ「加能ガニ」の最高峰となるブランド「輝」が初競りで2年ぶりに誕生し、過去2番目となる450万円の高値で落札されたのだ。その輝を水揚げしたのは、今も復興途上の珠洲市蛸島漁港の船だった。

「輝」誕生!能登半島地震からの復興に光を灯す高級加能ガニ

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11月6日の珠洲市、蛸島漁港。初めて「輝」がブランド化された2021年の解禁初日に見事500万円の「輝」を水揚げした港だ。地元漁師たちは今年の解禁に期待を寄せていた。

「珠洲からでっかいのが出たらね、励みになりますわね」

「でもあんな高いことはないでしょ。あははは。もし高かったらどうします?笑うしかないけん」

今年の解禁初日、続々とカニが水揚げされる中、「輝」候補が3匹現れた。最も大きくて立派だったのは、長栄丸のカニ。重さは「輝」の認定基準を大きく超える1.7kgだった。

1.7kgのカニを水揚げした長栄丸の森下廣司さんは「(輝に)なってくれればいいけどね。活気がついていいだろうけどね」と語った。

能登半島地震で津波に襲われ、地盤隆起でひび割れするなど大きな被害を受けた蛸島漁港。「輝」が誕生すれば大きなニュースとなり、復興にも弾みがつく。

一方、「輝」を認定する、金沢市のかなざわ総合市場には県内の各港から続々と「輝」候補が到着していた。そんな「輝」候補を見定める人たちの中に、今回なんとしても手に入れようとする人がいた。旅館「つる幸」の主人、竹本啓亮さんだ。

名料亭として全国の食通をうならせた「つる幸」は2018年に惜しまれつつ閉店したが、能登町の旅館、百楽荘が土地と建物を引き継ぎ、初競りの翌日、11月7日に料理旅館としてリニューアルオープンする。

そのつる幸の主人、竹本さんは、「珠洲行ってきたんですけど、やはりまだ復旧復興と言っていますが、まだまだなので、そんな方たちの少しでも力になればと思いまして、そういう方の力になるために落としたいですね。」と語った。

午後7時、輝に認定されたのは長栄丸のカニ

午後6時、蛸島のカニを乗せたトラックが到着。

午後7時、受付が締め切られると、一匹の大きなカニが水槽に入れられた。「輝」の誕生だ。あの長栄丸のカニが「輝」に認定された。

竹本さんは「こいつは全然他とは違いますね。大きさも風格も」と感嘆、「なんとしても落としたい」と決意を新たにした。

午後7時半、いよいよ今年の競りが始まった。まずは今年から始まった各漁船イチオシのカニ「一番推し」から競りが始まり、最後に「輝」の出番となった。

競り人の声が響く…「400万」「420万」「430万」

次々と値が上がり…ついには…

「450万」

競り人から他はどうだと聞かれて、ある仲買人は「ムリムリムリ…」と答えていた。

そして輝は見事、つる幸の竹本さんが過去2番目の高さとなる450万円で「輝」を落札した。

「良かったです、良かったです」と喜ぶ竹本さん。

「日本で一番大きい、一番いいカニ」を味わう幸せ

一夜明け、「輝」を水揚げした長栄丸の船長は「まさか自分にあたるとは思ってなかったです。日頃の行いですかね?いやー、どうかわからんよ」と照れ笑いを浮かべながら語った。

「地震以降もあまり何も変わっていない、復興もまだまだ、市場もそうですけど、町の方もまだ復興には至っていないんで、明るい話題ができれば嬉しいなと思います」

一方、7日にオープンした旅館「つる幸」では、竹本さんが「輝」をお客様に披露した。

「うわさの輝でございます。どれよりもきれいで」

客が「透き通っている」と感嘆すると、竹本さんは「日本で一番大きい、一番いいカニかと思います」と胸を張った。

450万円の「輝」は、宿泊客の夕食に提供された。元々食べる予定だったコース料理のカニが「輝」にグレードアップ。包丁を入れる竹本さんは「1本1本大切に力を込めて」と丁寧に調理した。

そのまま刺身で「輝」の味を堪能した宿泊客の男性は「めちゃめちゃ甘みも感じて、(1本)45万円以上の価値がありますね」と笑顔で話した。

女性客も「もう幸せな気持ちでいっぱいになりました。ただお値段も聞いちゃったので、いただく時にちょっと震えちゃいました。人生に一度あるのかないのかぐらいだと思うので、本当に一番になったと思います」と感激の様子だった。

能登から届いた日本一のズワイガニ「輝」

つる幸の主人が願う復興への願いと共に、多くの人を笑顔にし、復興途上の被災地にも明るい光となる輝きを放っていた。

(石川テレビ)

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