73年に渡って福岡市の中心部、天神で愛されてきた人気そば店『みすゞ庵』。多くの人たちに惜しまれながら最後の営業を迎えた。

開店前から100人以上の長蛇の列

2025年12月20日。人気そば店『みすゞ庵』の突然の閉店の知らせから約1ヵ月となった最後の営業日。

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開店15分前にも関わらず、常連客や閉店を知った昔馴染みの客も懐かしさに駆られ次々と訪れ、100人以上の長蛇の列ができていた。

「ちょっと最後っていうのは、なかなか信じられない感じですけど、いつも通り食べて感謝の気持ちも含めて…」(40代・男性)。「最後にしっかり味をかみしめたい…」(20代・男性)。「もう今月、4回目です。私、隣の『ベスト電器』に勤めていたので、もう50数年間、ずっとお昼とかに通ってました」(70代・男性)と店に対する気持ちや思い出もさまざまだ。

「お待たせしました」。『みすゞ庵』最後の1日が始まった。開店を待ちわびた人たちが次々と店内に流れ込み、座席は、すぐに満席となった。

多くの人のお目当ては『みすゞ庵』の名物、カツカレーそば。出汁の効いたカレーそばの上に、揚げたての大きなカツを載せた一品は、常連客のリクエストから生まれたという。

「ものすごく寂しいですけど、しっかり味わって胸に刻みたいと思います」(40代・男性)。「いつもと変わらず美味しくて『みすゞ庵』は、唯一無二の味だと思ってます」(50代・男性)と来店者は、それぞれの思いでそばをすすっていた。

73年の歴史に静かに幕

1952年、天神の一等地に店を構え、街の発展を見続けてきた『みすゞ庵』。買い物客やサラリーマンなど多くの客で賑わってきた。共同でビルを所有する『ベスト電器』の閉店や人手不足などもあり、小籏三保子社長は、店を閉めることを決断したという。

「本当に助けられて…、皆様に助けられて…。食べに来て下さる方もいらしたから助けられて…、ここまでできたということ」と話す小旗社長も感慨深げな様子だ。

開店から4時間ほどが経った午後3時過ぎ、約550食分のそばとうどんが完売した。

午後3時過ぎ完売
午後3時過ぎ完売

小旗直幸店長は「本当に『皆様に愛されていたんだなぁ』と思いますよね。代々、引き継いできましたけど、やっぱり悲しい気持ちもありますし、でもこんなに皆さんが笑顔で帰ってもらったんなら、やっててよかったなっていう幸せな気持ちで一杯です」と話していた。

最後まで変わらぬ美味しさを届けた『みすゞ庵』。

静かに降ろされた暖簾
静かに降ろされた暖簾

惜しまれながら73年の歴史に静かに幕を下ろした。

(テレビ西日本)