島根・松江市の老舗茶舗「加島茶舗」が、カフェインが含まれていないのに抹茶の味わいを楽しめる新商品「まるで抹茶」を開発した。
この商品は、カフェインが体質に合わず茶道部への入部をあきらめた高校生の発案がきっかけとなり誕生した。
TSKとJALのコラボ企画で、JALふるさとアンバサダーの藤田エミさんがリポート役を務め、開発への思いなどを取材した。
茶の湯文化息づく松江で130年の歴史を持つ老舗
松江市の中心部にある茶町地区。
この地名は、松江城築城の際に働いていた人々にお茶をふるまったことに由来するとされている。
そんな茶どころで明治24年(1891年)から130年以上にわたりお茶を作り続けているのが「加島茶舗」だ。
店主の加島浩介さんは、お茶の鑑定技術を認定する茶審査技術の最高位・十段を中国地方でただ一人取得している茶のスペシャリストだ。
店では、加島さんがブレンドしたオリジナルのお茶も販売され、店内で味わうこともできる。
抹茶なのに抹茶を使っていない?
「まるで抹茶」と名付けられたこの新商品は、その名の通り抹茶のような味わいが特徴だが、実は抹茶どころかお茶の葉を一切使っていないという驚きの商品だ。
リポート役を務めたJALふるさとアンバサダーの藤田エミさんが試飲すると、「まるで、というか抹茶ですね、おいしいです」と感想を述べた。
加島さんから「抹茶を一切使っていないお茶です」と聞かされ、「そう考えるととても不思議です」と驚きの声を上げた。
カフェインゼロの秘密は30種類の食材
この「まるで抹茶」の原料として使われているのは、ほうれん草や小松菜、スギナやクロレラなど約30種類の食材だ。
加島さんが、藤田さんに乾燥させて砕いたほうれん草を見せると、藤田さんも驚きの表情を浮かべた。
さらに本物の抹茶に近づけるため、意外な食材も加えている…それはバニラだ。
「華やかな香りを入れることでより抹茶のような香りになるというブレンド」と加島さんは説明する。
お茶の葉を使わずに独特のお茶の香りや色、味わいを再現するため、約1年半の試行錯誤を重ねたという。
きっかけは1人の高校生の相談
この商品開発のきっかけとなったのは、松江北高校2年生の岩本実久さんだった。
彼女は茶道部に入部したいと思っていたが、カフェインが体に合わず、お茶を飲むと眠れなくなってしまうため、入部をあきらめていたという。
その経験から「カフェインのない抹茶」を作ろうと決意し、若者の課題解決の取り組みを支援する「みらチャレ」で提案。
お茶のプロフェッショナルとして加島さんが協力して商品化にこぎつけた。
加島さんは「高校生らしい発想で、お茶以外のもの、ノンカフェインの素材を入れることで、カフェインの少ない、もしくはカフェインのないものができるのは、その時初めて気づかされました」と語る。
「とてもうれしい」妊婦や子どもなど上々の反響
11月2日の発売に合わせて開催された試飲販売会では、市民や観光客が「まるで抹茶」の味わいを確かめた。
「カフェインレスのコーヒーや紅茶はいっぱいあるけど、抹茶ってあんまりないのですごいなと思って来ました。今妊婦で、こういうのが飲めるのはとても嬉しいです」と喜ぶ声や、「抹茶感がとてもあります。でもカフェインレスだから、本当に子どもから楽しめるなっていうのがあって、すてきだなって思います」との感想が寄せられていた。
岩本さんも「抹茶を使わないで抹茶を再現するっていうことで、やっぱりそれが難しくて。本当にできて商品として売られるということで、本当になんか嬉しいなと思っています」と喜びを語った。
茶の湯文化「世界に広げたい」老舗の新たな挑戦
加島茶舗ではこれまでも高校生の実習や課題研究に協力してきたが、商品化されたのはこれが初めて。創業130年を超える老舗にとっても新たな挑戦となった。
加島さんは今後の展開について「いろんなお店においてもらいたいという意識があります。世界にも広がっていけたらいいなというのもあります。カフェインの少ない抹茶とかカフェインの少ない抹茶スイーツとか、お客さんが選べる世の中になればいいなと思う」と語った。
高校生の豊かな発想とそれに応えた老舗の知恵。茶どころ・松江から新たなお茶の世界が広がろうとしている。
(TSKさんいん中央テレビ)
