かつて「安定」の代名詞だった公務員。しかし今、各自治体は人材確保に苦戦している。限られた人員で行政サービスをどう維持するのか。県内自治体の新たな取り組みを追った。

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窓口時間を短縮、南砺市の決断

南砺市役所では、証明書発行やマイナンバーカードの手続きで多くの市民が訪れる。この窓口の受付時間を、県内自治体では初めて短縮する決断を下した。

「やはり人材不足。時間外の勤務を少しでも減らせるようにと考えた」と南砺市総務部の片田健一次長は説明する。

現在の窓口受付時間は午前8時30分から午後5時15分まで。来年1月からは午前9時から午後4時までと、1時間45分短縮される。

南砺市によると、午前8時台と午後5時台は窓口の利用が特に少なく、最近はオンラインでの手続きも増加傾向にあるという。時間短縮によって職員の労働環境改善を図る狙いだ。

「午後5時前後に市民の方が来られたとき、対応しなければいけないとなると、職員はどうしても5時以降、6時、7時近くまで対応しなければならない」と片田次長。「職員の採用試験をしてもなかなか来てもらえない。今いる職員がいかに働きやすい環境で長く続けてもらえるか。離職防止にもつながると思う」と期待を寄せる。

20年で2割減、深刻な人材不足

県内の一般行政職員は2005年に1万1000人以上いたが、昨年は9000人あまりと、この20年でおよそ2割減少した。県の人口減少を上回るスピードだ。

総務省のまとめによると、全国の地方公務員の採用試験の倍率は1999年度の14.9倍から最新データでは4.6倍と、過去30年で最低となっている。

人手不足に加えて良い人材の確保も難しい状況に、行政の人事に詳しい人事・行政実務パートナーズの鳥羽稔代表は、民間企業との人材獲得競争が激化していると指摘する。

「民間企業の給料が上がっている。公務員は予算の中でやっているのですぐには追いつかない」

採用スケジュールの問題も大きい。「民間企業の採用は最近はインターンが中心。大学3年生のあたりから事実上始まっている。公務員試験は早くて大学3年の年度末から。その時期には同級生が就職先を決めている。公務員が選択の対象にならない」と鳥羽代表は説明する。

「スケッター制度」で助け合う射水市

人手不足に直面するなか、射水市は8月から「スケッター制度」という新たな取り組みを始めた。

こども福祉課に所属する9年目の佐伯美夏さん。出勤からおよそ1時間半後、「スケッター制度行ってきます」と席を立ち、同じフロアにある社会福祉課へ移動した。

スケッター制度とは、職員の育休や退職により人員が足りない部署へ、余裕がある部署から「助っ人」の職員を派遣する仕組みだ。「助っ人」は期間限定かつ業務時間の20%以内に収めるのがルールで、この制度で活躍すれば職員の人事評価にも反映される。

佐伯さんは社会福祉課で障害者サービスに関するシステム入力をサポートしている。「前に社会福祉課にいた。業務量が多いのは感じていた。自分が異動になり、いま人員が足りていないことは分かっていたので、何か自分が役立てることがあったらと思って」と佐伯さんは話す。

制度導入から3カ月、助っ人として活躍しているのは佐伯さんを含めてわずか2人だが、市は柔軟な人員配置に手応えを感じているという。

「突発的な状況(人手不足)がどうしてもある。そこですぐに不足する分を採用して、そこに当てるのはなかなか難しい。今ある人的資源でどうやってうまくやっていくか。そこが大きな課題になってくる」と射水市人事課の四日利香課長は説明する。

「職員が『お互い様』の精神で助け合える。そういったサポート体制があることで働きやすい職場作りにもつながっていけばいいなと期待している」

変わる公務員のイメージ

公務員の仕事の実態も、学生の就職先選びに影響している。鳥羽代表は「公務員の仕事は感謝される仕事も多いが、厳しい仕事も多い。防災だとか選挙、クマ対応とか急遽求められるものが増えてくる」と述べる。突発的な仕事を避けたいという学生も多いという。

限られた人員をどう活用するか。南砺市の窓口時間短縮や射水市の「スケッター制度」など、これまでにない柔軟な発想が求められている。

(富山テレビ放送)

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