伊東市の市議会議員選挙は10月19日に投開票が行われ、当選者20人の顔ぶれが決まった。このうち19人を“反市長派”が占め、田久保眞紀 市長の失職は確実な状況となっている。
すべての発端は学歴詐称問題
議会の解散に伴う伊東市議選(定数20)は10月19日に投開票が行われ、一連の騒動が1つの節目を迎えた。
騒動の発端となっているのは田久保眞紀 市長の学歴詐称問題だ。
田久保市長は大学を除籍されていたにもかかわらず市の広報誌などに「東洋大学法学部卒業」と記し、「卒業していたと勘違いしていた」などと弁明したが、市議会の百条委員会は調査の結果、「正規の卒業証書が授与された事実はないということが正式に判明した」とした上で、「田久保眞紀 氏(伊東市長)が、卒業していたものと勘違いしていたとの主張は明らかに無理が生じる状況であることが確定するとともに、田久保眞紀 氏(伊東市長)は、6月28日以前から自身が除籍であったことを知っていたものと断定できることとなった」と結論付けている。

このため、市議会は9月1日に市長に対する不信任を全会一致で議決したが、これに対抗して田久保市長が議会を解散したことから今回の市議選が実施されるに至った。
20人のうち19人は“反田久保派”
田久保市長は「伊東市が衰退の道から再生の道へ至る過程において、今のこの在り方で良いのか改めて市民のみなさんに信を問いたい」と市議選の意義を強調したものの、選挙戦は実質的に市長の“信任選挙”と位置付けられ、田久保市政を継続させるか否かが最大の争点に。市民の関心も高まり、投票率は2年前の前回選を10.34ポイントも上回る59.22%となった。
その結果、田久保市長に不信任を突き付けた前職18人全員が再び市政壇上に戻ることになったほか、“反田久保”を掲げる新人1人が当選。田久保市長を支持する候補の当選はわずか1人に留まった。
地方自治法では不信任の議決に伴い議会が解散された場合、解散後初めて招集された議会で市長に対する不信任決議案が提出され、全議員の3分の2以上が出席した上で過半数が賛成すると自動的に失職となることから田久保市長の失職は確実な状況で、再選を果たした前議長の中島弘道 氏は「先頭に立って不信任決議を進めていきたい」と述べている。
また、市議会本会議や百条委員会で舌鋒鋭く田久保市長を追及し、今回の選挙戦では「田久保市長!退場!」とのキャッチフレーズを打ち出した杉本一彦 氏も「2回目の不信任決議案を必ず可決に持っていき、田久保市長には伊東市政から退場してもらうという約束を果たしていく」と気勢を上げた。
市議選を通じて見えた“民意”とは?
このように結果だけ見れば、前職が強さを見せた今回の選挙戦。
それは突然の解散に伴い準備期間が短く、支持基盤の弱い新人にとって不利に働いたという側面もあるが、同時に田久保市長の“退陣”を望んだ有権者が多かったことの証左でもある。
なぜなら、すでに一度不信任決議案に賛成している前職は再び不信任案が提出された場合も賛成票を投じることは確実だからだ。
それ故に、新人の中には田久保市長に近い立場でありながら、市長の支持・不支持や不信任決議案への対応を問う事前のアンケートに態度を明確にしない候補が複数いた。
にもかかわらず、田久保市長を応援演説に呼びながらアンケートへの回答を拒否した、いわゆる“ステルス田久保派”の男性候補のひとりはSNSに「市議選なのに、政策ではなく、田久保市長についての姿勢で、決まった感じが強いと感じています。伊東市の未来は、ますます厳しい状況になるかもしれません(原文ママ)」と記し、田久保市長の支持・不支持を表明しなかった女性候補も「この町の民意に深く失望しています。現職の人たちが圧倒的な票を得て当選したという事実には、本当に驚きました。延々と人の文句を演説し続ける人たちが、圧倒的支持を得る。この街の人たちは何を求めているのか。もう改革の火はほとんど残っていないように感じます。あまりにも、自分の身の回りのことしか考えない人たちが多い。公共よりも保身、未来よりも目先の安定。それが『民意』だとしたら、悲しいけれど、伊東はもうダメなのかもしれません。(中略)新しい名前の下に、古い構造がそのまま生き延びていく、それがこの町の政治の現実です(原文ママ)」と恨み節をこぼしている。
田久保市長は市議選から一夜明けた20日朝、「もうちょっと政策論争できればよかった」と述べ、選挙経費として6300万円もの予算が計上されていることについて、12日の取材に「選挙は民意を示す民主主義にとって大切な制度なので、そこに対してお金がもったいないというのは果たしてどうなのか?新しい風を吹かせたい」と口にしていたが、市長が言う新しい風を“望まなかった”有権者の民意をどう受け止めているのだろうか?
(テレビ静岡)