地方移住への関心が高まる中、福井・南越前町の河野(こうの)地区が注目を集めている。兵庫や岐阜から移住した個性豊かな3組の家族を追った。
3組目は、岐阜から移住し、築100年の古民家を改装してカフェ兼、宿泊施設「おうちごはん 千と泊」をオープンした村井真由美さん(56歳)。子育てが一段落したタイミングで移住し、地域活性化に貢献したいと意欲を燃やしている。
地域に新たな息吹
岐阜県各務原市から南越前町河野へ移住して2年になる村井さん。明治時代に建てられた古民家を購入し、カフェ兼、宿泊施設「千と泊」を営んでいる。

“地域の人が集う場所を作りたい”という思いから2025年5月にオープン。日替わりランチは1200円で、刺身やフライ、小鉢などがズラリと並ぶ。

村井さんは、この古民家にほれ込んで移住を決めたというが―
「去年は、ここの工事、一択でしたね。けっこうひどかったんで…」

土壁がむき出しで畳も古く、捨てようと思って持ち上げたらボロボロと崩れてしまうほどの状態だったという。
そのため、村井さんは丸1年を古民家の改装に費やした。畳を新品に交換し、土壁の補修。建物を再生させるための作業に没頭した。
移住のきっかけは…偶然訪れた河野海水浴場
村井さんが河野に移住するきっかけとなったのは、10年以上前に河野海水浴場を訪れたことだった。

「透明感があっていいところだな」と感じたという。

いつもは、もっと南にある海水浴場に行っていたが、なぜかその日は、分かれ道で「行ったことないけどこっちに行ってみよう」とたどり着いたのが河野海岸だったという。その偶然の出会いが“いつか河野に住みたい”という思いを芽生えさせたというのだ。

若い頃から、当時は女性がほとんどいなかった大型トラックのドライバーを務めるなど、思い立ったらすぐに行動に移す気質を持っていた村井さん。年齢を重ねるごとにさまざまな経験も増え「何とかなるや」と考えられるようになったという。「若い時だったら多分、お店を持とうという気持ちはまずなかったですね」
「地域の困りごとを探したい」
村井さんが移住を決断したことについて、岐阜から宿泊に訪れた友人は「移住はなかなか大きな勇気がいりますよね」と村井さんを尊敬していると話す。

南越前町の町民も「外から入ってくる人は新しい考えも持っているからアイデアが出てくる」と歓迎。「地元の人たちにとっても刺激になって、やる気も出て、なお街が活性するんじゃないかな」と期待を込める。

村井さんの元には現在、地域の特産だったウメ畑の再生に向けた依頼がきているという。他にも「地域の困りごと探しをやっていきたい」と意欲を燃やす。
偶然訪れた縁から移住した先で、地元住民からも頼りになる存在になっている。