創業から30年以上の歴史がある水炊き専門店が、福岡市の本店をリニューアルオープン。開店に向け、連日奮闘する名物女将に密着した。

コロナ禍でも奮闘 名物女将

福岡を代表する郷土料理の水炊き。創業から30年以上の歴史がある水炊き専門店『博多華味鳥(はかた・はなみどり)』では、自社で育てた銘柄鶏の華味鳥を使い、スープ作りから調理までを一貫して行っている。

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そして店には、料理とともに“名物”と言われている存在がある。各店舗に1人ずつ配置されている女将の存在だ。

博多華味鳥の女将歴8年の松田美香さん。旧中洲本店ではコロナ禍にも関わらず、月間売り上げ3000万円を達成。売上げが伸び悩んでいた東京・銀座店の立て直しも果たしたカリスマ女将だ。

今回、松田女将は、1年半の建て替え工事を終え2025年10月にリニューアルオープンした中洲本店の女将に抜擢されたのだ。

「え~!なんでこんな字なんですか?」

2025年9月16日。オープンまで約4週間。この日は工事業者と行う施主検査の日。工事が終わったばかりの店の各部を1つずつ確認していく。博多華味鳥を展開する『トリゼンダイニング』の会長、河津善博さんも同席。スライドドアの音を抑えるためのストッパーや空調の位置、移動式パーテーションの動きなど、入念にチェックしていく。

施主検査(9月16日)
施主検査(9月16日)

そうしたなか「え~!なんでこんな字なんですか?安っぽくない?」と松田女将が思わず声をあげたのは、それぞれの個室に付けられていた札の文字。

納得がいかない様子に河津会長も「分かった、分かった。ここは変えよう」と女将の意見を尊重する。検査は1時間に及んだ。

合間には、新人スタッフの指導も行われる。この日の研修は客を前にした調理の作法。華味鳥ではスタッフがテーブルで鍋を仕上げる。

「12時から6時に、反時計回りに回すように転がす感じ。12時から6時」と細かい所作まで教えていくため研修はマンツーマンだ。こうした新人の成長が、中洲本店の力となる。

オープンまで2週間を切った9月末、思わぬ事態に見舞われた。床に段差が見つかったのだ。「床を張り直しになってしまって…」と松田女将も困惑気味な表情を見せる。

結局、僅か数ミリだったが、妥協はせず、張り直すことに。「あと1週間しかないから…。(間に合います?)間に合わせないといけないですよね」と話す松田女将。オープンまでの時間が迫り、焦りは募るが、出来ることからひとつひとつ進めていく。

「飛び切りの笑顔でおもてなしを」

そしてオープン当日の10月10日。松田女将の表情には、喜びと決意が漲っていた。

約6億円を投じて建て替えられ、1階から5階までに合わせて180席が設けられている中洲本店。おもてなしをより丁寧にしたい。そんな松田女将の思いが、店内のさまざまな箇所に散りばめられている。

開店20分前の朝礼。松田女将の声を抑えた静かな“檄”が、店内に飛ぶ。

「1年半の休業を経て、やっときょうオープンできます。数多くの方のお力添えがあって、きょうという日を迎えられたことを本当に感謝申し上げます。ホールもキッチンも飛び切りの笑顔で、おもてなしをお願いします!」。

オープン直後から次々と訪れる客。この日を心待ちにしていた人は「最高ですね。華味鳥のスープを飲むと本当にお酒が進んで、最高に美味しい」(男性)、「すごく素敵なフロアになっていて癒されます」(女性)、「お店に来ているのに家にいるような、ほっとするホスピタリティ」(男性)と誰もが満足気だ。

目標は年間3億円の売り上げ

「デザート出して。出せない?出せないなら出せないで指示出して」。松田女将はフロアを行き来しながらスタッフに声をかける。「おしぼりだすタイミングとか、どこに置くとか向きだってあるから教えてあげて下さい。ボーッと立っている暇はない!」

厳しくも愛情のこもった指導。「愛のある指導をしてくれる神様的な存在」「みんなの憧れ」「元気をもらえる!」とスタッフたちも松田女将の言葉を真っ直ぐに受け止めているようだ。

オープン初日の売上は、旧本店時代の約1.5倍。順調なスタートとなった。「嬉しかったです。馴染みのお顔、みなさんに見せて頂けたので、オープンできてよかった。年間3億売り上げる店にするという大きな目標は必ずかなえようと思っています」

新たなスタートを切った『博多華味鶏』中洲本店。松田女将は、きょうも店内を飛び回る。

(テレビ西日本)

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