真面目で責任感があるほど、こうした状況を作り上げてしまった自分を責める傾向があるので、組織には早期に声を上げられる仕組みづくりが求められています。

<このタイプの特徴>
▼組織的な問題(上司の指導姿勢や制度不備)も「自分が至らないからだ」と思い込み、改善要求に踏み出せない。
▼期待に応えようと過剰に努力したり、相手の言動を正当な指導と誤認しやすいため、ハラスメントを受けていても表面化しにくい。
▼声を上げること自体への心理的なハードルが高い。

20代男性会社員のケース

【上司の他責的な発言を無条件に受け入れ、被害を認識できない若手】

相談:
小さな輸入商社で働いています。私はもともと仕事ができるタイプではなく、入社直後から、電話を受けてもメモが不十分だったり、頼まれた仕事を忘れてしまうなどの問題を起こしていました。

ただ、データ入力や処理は得意で、上司はそういうところを評価して仕事を割り振ってくれていました。私はいい環境で働けていると思っていましたが、その上司が昨年転職してしまいました。

今の上司からは毎日のように「お前のせいで仕事が進まない」「みんなに迷惑をかけているのがわからないのか」「小学校からやり直せ」などとフロア中に響くような大声で叱責されています。

私が悪いことは事実で、周囲のみなさんがこんなに教えてくれるのに…と情けなくて悲しいです。もう辞めるべきなのでしょうか。ハルト(20代・男性)

必要な範囲での指導も必要

仕事において、必要な範囲の指導は組織が円滑に運営されるために必要です。

指導の域を超えていることもある(画像:イメージ)
指導の域を超えていることもある(画像:イメージ)

しかし、「自分が悪いから」と思えることであっても、繰り返される厳しい言葉や大声での非難が日常化しているのであれば、それは「指導」の域を超え、パワハラに該当する可能性が高いと考えられます。

例えば、神戸市交通局の裁判(神戸地判令和3年9月30日)では、上司が部下に対して「ここは学校じゃない」「基本給に見合う働きをしろ」などと、人格を否定するような発言を大声で繰り返していたことが問題になりました。