事例を通じて、どんな被害にあいやすいのか、どのように対処すればよいのかを学んでいただければ幸いです。
真面目な人も被害を受けやすい
「真面目で責任感が強く、自分を責めやすい人」は、上司や同僚からの叱責や不当な要求があっても「期待されているのだから応えなければならない」と努力したり、「自分の努力が足りないから」「周囲に迷惑をかけているのは自分だ」と考え、問題を訴えることなく自らを納得させてしまう傾向があります。
また、実際に業務指導を受けている場合、パワハラと思われるような指導でも「正当な指導」だと誤認してしまい、自己効力感(自分にはできると信じ考えられること)を損なうことがあります。
そのため、上司からの過大なノルマや繰り返される叱責をハラスメントとして認識できず、結果的に心身の不調に至るケースも少なくありません。

さらには、このタイプの人は周囲から「我慢強い」と見られやすく、組織の中で問題が表面化しにくい特徴があります。職場でハラスメントや不当な扱いに対して声を上げられないことには、個人の性格的要因だけでなく、組織全体に横たわる構造的な問題が深く関わっています。
例えば、「周囲に迷惑をかけたくない」「評価に響くのではないか」「相談しても何も変わらない」という不安は、多くの労働者が抱える共通の心理です。
加えて、上司との力関係、同調圧力、業務の属人化、相談窓口の不信などが複雑に絡み合い、声を上げること自体が困難な状況を生みます。