育休を取得し会社へ復帰する際、不安を抱えている人は多いだろう。

育休前の部署に戻りたいと希望している人もいるかもしれない。ただ、場合によっては元の部署に戻れないこともある。

社会保険労務士でキャリアコンサルタント・村井真子さんの著書『「知らなかった」で損をしない、働く人の必携書「職場問題グレーゾーンのトリセツ」』(アルク)から一部抜粋・再編集して紹介する。

本書で取り上げている事例は実際に相談されたものがベースとなっている。

休業前の部署へ復帰が原則だが…

「育休復帰面談で『人員補充したから異動して』と言われましたが、元の部署に戻りたいです」

育休から復帰後に自身が望んでいない部署への配属を言われてしまったら、どうすればいいのでしょうか。

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まず、休業前の部署で復帰することが原則ですが、例外も認められます。

育児休業から復帰するには、元の部署・元のポスト(原職)への復帰が原則になります。一方、保育園の入園可能な時期や、本人のライフプランの兼ね合いから、育児休業は長期間に及ぶこともあります。

そうした状況に備えて、また休業期間中の他の労働者への負荷軽減のために、休業者に代わる人員補充は多くの会社でごく普通に行われています。

育児・介護休業法第10条では、原職への復帰を義務づけることまで会社に要求していません。

育児・介護休業法第10条で定める不利益取扱い禁止の例外として、厚生労働省は次のような場合は、妊娠出産等がきっかけでも不利益扱いの例外として認められるとしています。

(1)業務上の必要性から不利益取扱いをせざるをえず、業務上の必要性が、当不利益取扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情があるとき。
(2)労働者が当該取扱いに同意している場合で、一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき。

就業規則に異動についての記載があり、かつ、原職復帰がどうしても難しい事情があるときは、最大限の配慮のもとに異動を打診することも許容されています。

相談のケースでは、まずは補充された人を異動することが本来の対応になるので、会社には元の部署での復帰希望を伝えたほうがいいでしょう。

気になることは納得いくまで相談

しかし、休業中に始動した重要プロジェクトがあったとして、補充された人が主担当者になっていたとしたら、即時に異動させるのは難しいという会社側の事情も考えられます。

仮に自分が異動することになれば、異動先はどんな部署か、どのような仕事を行うことになるのか、ポストは元の職位と同程度かなど、気がかりなことは事前に話し合いたいものです。

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復帰後はただでさえ育児と仕事の両立が求められるので、納得できるまで会社と調整をすることをお勧めします。

また、異動によって賃金が変動するときは、雇用契約の変更になります。

たとえ本人にとって不利益な変更でも、異動に関する同意書にサインするなど、本人が同意したとみなされるような状況があれば、雇用契約の変更が適法に行われたと解釈されることもあります。不安な点や懸念な点は解消できるまで相談してください。

もっとも、会社に合理的な理由があっての異動であれば、適切な業務命令といえます。十分に納得できる説明があれば、最終的には会社に従う必要があるでしょう。

『「知らなかった」で損をしない、働く人の必携書「職場問題グレーゾーンのトリセツ」』(アルク)
『「知らなかった」で損をしない、働く人の必携書「職場問題グレーゾーンのトリセツ」』(アルク)

村井真子
社会保険労務士、キャリアコンサルタント。家業である総合士業事務所で経験を積み、2014年に愛知県豊橋市にて独立開業。中小企業庁、労働局、年金事務所等での行政協力業務を経験。あいち産業振興機構外部専門家。移住・結婚とキャリアを掛け合わせた労働者のウェルビーイング追求をするとともに、労務に関する原稿執筆、企業研修講師、労務顧問として活動している。


 

村井真子
村井真子

社会保険労務士、キャリアコンサルタント。家業である総合士業事務所で経験を積み、2014年、愛知県豊橋市にて独立開業。中小企業庁、労働局、年金事務所等での行政協力業務を経験。あいち産業振興機構外部専門家。地方中小企業の企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築、組織設計が強み。現在の関与先160社超。移住・結婚とキャリアを掛け合わせた労働者のウェルビーイング追及をするとともに、労務に関する原稿執筆、企業研修講師、労務顧問として活動している。