10月9日に告示される宮城県知事選挙では、村井知事の5期20年の評価も争点の1つとなります。村井知事は病院再編や外国人労働者の受け入れなど、人口減少を強く意識した施策を展開しています。
過去最多の6人の立候補が見込まれる今回の県知事選挙。
村井知事は宮城県政史上最多となる6期目を目指し、立候補を表明しました。
宮城県 村井知事
「今までずっと継続してきたことが、知事が変わることによって止まってしまう可能性があるというようなこともありまして、今回出馬をすることにいたしました」
大阪府出身の村井知事。陸上自衛隊の出身で、県議会議員を経て2005年の県知事選で初当選を果たしました。
以来、東日本大震災からの復興に取り組んできたほか、県内総生産10兆円を目指す肝いりの経済政策「富県宮城」に注力。「トヨタ自動車東日本」や半導体製造装置の大手「東京エレクトロン」の誘致を次々と決め、2018年度には名目で初の10兆円を達成しました。
そして、近年、力を入れているのが人口減少対策です。県内の人口は村井知事が就任する2年前の2003年をピークに減少に転じ、2045年には現在の8割ほどのおよそ181万人になると試算されています。
減少率は年を追うごとに増加し、今後は単純計算で1年あたりおよそ2万人のペースで減少すると予想されています。
こうしたことなどを踏まえ、村井知事は施設の所有権は県が持ちつつ、運営と維持管理それぞれを民間で構成する共同出資企業に委ねる水道事業を導入したほか、仙台市内の4つの病院の再編を目指す病院再編構想を推進。
宮城県 村井知事
「宮城県はみなさんを家族として迎え入れたいと思います」
県内企業の人手不足を補うため、主にインドネシアからの人材の受け入れも加速させてきました。
宮城県 村井知事
「東北の人手不足、若い人の人口減少を少しでも支えられるように、宮城県が音頭をとってやっていきたい」
一方で今年1月に課税が始まる宿泊税や、公営土葬墓地の設置計画など、打ち出す施策の中には反対の声が挙がるものもあります。
時にトップダウンとの批判もつきまとい、9月にはそれまで「批判があっても進めなければならない」としていた公営土葬墓地の設置計画について、検討自体を撤回しました。
街の声は…。
「実行力があって、全国の知事の代表にもなって慣れてらっしゃるから、もう少し続けてほしい」
「やっぱり病院の看護師さんや、老人ホームで働く人にもうちょっと愛情持って接してもらえると、働き手も少ないって騒がれているよね。いずれ私たちお世話になるところなので、しっかり支えてほしい」
中には知事の多選を懸念する声も…。
「ずっと同じ方が知事という立場にいることが、権力がずっとそこから動かない可能性があるのかなと思って」
9月、新人候補の決起集会にオンラインで参加したのは、前の県知事・浅野史郎氏です。
浅野史郎元知事
「12年知事やっていますと、『この件については一番詳しいの知事だ』ということになるんですね。最後は知事に持っていけばなんとかなる。これが長い、長すぎる弊害である」
浅野氏は「権力は陳腐化する」と3期限りで退任していて、6期目を目指す村井氏の姿勢を批判しました。
浅野史郎元知事
「多選をする人はこう言う。『今私が辞めたら、やり残したことがあって辞められない』。それは当たり前なんですよ。何期やったってやり残したことはあるんですよ」
一方の村井知事は、「何期やるか」よりも「やることがあるかどうかが重要だ」と強調します。
宮城県 村井知事
「5期20年、正直言って長いと言えば長いというふうに思いますが、前々から言っておりますように、今まで何をやってきたのか、そして何をやろうとしているのか、そのやろうとしていることが、自分じゃなければできないかどうかというようなことを、自分なりに真剣に考え、また色んな方に相談した結果、今回は私が出るのが一番いいだろうと判断したということであります」
政治学が専門の拓殖大学の河村和徳教授です。河村教授はまず、村井氏の多選について「対抗できる有力な候補者を擁立できていない側にも責任がある」とします。
そして、村井知事については「多選の弊害はあまり見えない」とする一方、県の組織としては組織が硬直化する恐れがあると指摘します。
拓殖大学 河村和徳教授
「職員には浅野県政時代を知らない方も大勢いるわけですね。そうすると、それが当たり前になってくると、いくつか問題があって、それは例えば知事の人事が固定化されてくる。さらに知事の意向が大体分かってきてますから、知事の指示を待とうとしちゃう。あるいは知事の意向に沿うような提案しか出さなくなってくる。いわゆる忖度が働いてくる。これは知事自身が、どんなに節制していても職員だから起こりうるわけです。だからそこに対してどういう仕掛けをするのかは、実は多選の首長さんに問われている、突きつけられてる大きな問題」
知事選については人口減少で税収の減少が見込まれる中、候補者が対応した政策を打ち出せるかどうかがポイントだと話します。
拓殖大学政経学部 河村和徳教授
「将来的にも人口が減ることは決まっていて、税金も減るんです。じゃあ自分たちでどう稼ぐのという話と、国には頼れないけど、じゃあ何やるのというアイデアの勝負の時代になってくる。そうするとアイデアを出せるか出せないかといったところがポイントだし、横並びのようなことはできない。そうすると、今あるものを、どううまく使うのかとか、今ある仕組みの中で、どううまく対応していくのかっていったところが問われる」
県知事選挙は10月9日告示、10月26日に投開票されます。