宮城県栗原市の山林で、クマに襲われたとみられる女性が死亡し、別の女性が行方不明となってから、10月10日で1週間です。捜索も難航し、いまだに手がかりも見つかっていません。

防災無線
「本日午前6時50分ごろ、河川敷付近でクマが目撃されました」

栗原市栗駒では、10日も、防災無線で注意が呼びかけられました。

1週間前、近くの山にキノコ採りに出かけた志水春江さん(75歳)が血を流して倒れているのが見つかり、その後死亡が確認されました。

また、別の70代女性が行方不明となっていて、2人はクマに襲われたとみられています。

関係者によりますと、亡くなった志水さんは飲食店を営み、自ら採ったキノコを店で提供していたといいます。

志水さんの知人
「志水さんを悪くかたる人はいないんじゃない?」
Q.現場に行ったことは
「あります」
Q. 自分が襲われていた可能性も
「そうだね」

行方不明の女性も飲食店を営んでいたということです。

2人と一緒に、キノコ採りに来ていた男性は対策を講じていたと話しています。

一緒に山に入った男性
「いつも入っている山で、よく分かっている。爆竹3発クマよけに鳴らしたけど、かえって爆竹がクマ呼んだのかなって」

事故発生から1週間…。

記者リポート
「ドローンによる捜索が始められます」

警察などは2次被害防止のため山の中には入らず、パトカーとドローンで女性の捜索を続けていますが、これまでに手がかりは見つかっていません。

また、ドローンの稼働は、市は9日まで、警察は10日までとなっていて、11日からはパトカーによる定期的な巡回へと捜索態勢が変わります。

栗原市 佐藤智市長
「非常に残念でなりません。早く発見してあげたかったんですけれども、現場が非常にやぶが深い。人海戦術で、捜索でできれば一番いいんですけれども、それもできない悔しさがあります。キノコは毎年採れますが、命は一個しかありません。やはりここは我慢していただいて、クマなどへの対策を講じてもらうほかない」

クマの捕獲状況です。事故の発生後、現場近くには箱わなが2基設置され、これまでに子グマ2頭が捕獲されました。

ただ、体長などから2人を襲った個体とは別のクマとみられていて、市などはわなの設置を継続しています。

この時期、全国で相次いでるクマによる人身被害。ツキノワグマの生態に詳しい、東京農工大学の小池伸介教授です。

東京農工大学 小池伸介教授
「クマにとって非常に大事な時期。冬眠中のクマは飲まず食わずで過ごす。冬眠は寒いからするわけじゃなくて、食べるものがないから冬眠する」

そのため、餌を求めて、秋は最も活動時間が長くなるほか、行動範囲も広がります。

東京農工大学 小池伸介教授
「秋の時期のクマの主食はいわゆるドングリ。ドングリは自然のリズムで実りのいい年と悪い年がある。山の中には何種類かのドングリがあって、どれかのドングリがなればいいが、どのドングリもならないという巡り合わせがある」

県はブナの実が“大凶作”と予測されることから、クマ出没警報を10月末まで延長していました。今年は、ブナ以外の不作が重なっている可能性があるといいます。

東京農工大学 小池伸介教授
「通常は行かないようなところまで、食べ物探しに行ったり行動範囲を広げる。集落の近くに行ったときに、収穫していない柿とかクリとか、民家の倉庫に置かれた漬物とか、クマにとって魅力的なものがあると、誘引されて森から出る、目撃が増える、出没が増える」

今週、白石市の住宅の敷地内に、2日連続でクマが出没しました。柿の実を食べていたのです。

自治体などはクマに狙われるとして、こうした柿の実などを回収するよう呼びかけていますが、社会環境の変化で難しい世帯があるのも実情です。

10月8日、仙台市宮城野区の住宅では、樹齢50年を超える柿の木の剪定が行われていました。この家に住む、宮本強さん(95歳)です。

宮本強さん(95)
「もったいないね、甘柿だから」

50年ほど前に宮本さんが植えた柿の木。多い時では1年に1300個もの実が取れ、家族で食べたり、近所におすそ分けしたりしていたといいます。

宮本強さん(95)
「4、5年前までは自分で全部やっていたからね」

その後の剪定は知人を頼っていましたが、その知人が亡くなったのを機に、造園業者に依頼するようになりました。

こうした依頼は年配の人だけでなく、比較的若い世代からも増えているといいます。

東北Reアース 佐藤祐希代表
「空き家、県外に住まれている方で、元々親が住んでいて、親が施設に入ってという方もたくさんいて、依頼がある」

クマから自分や周りの人たちを守るために…管理が難しければ、業者に依頼するのも講じられる対策のひとつです。

アウトドア用品店では、クマ対策グッズの需要が高まっています。

モンベル仙台 甚野清英店長
「クマの目撃例や被害が増えている影響で、対策グッズの売り上げもだいぶ伸びている」

最大12メートル先まで届く「クマ撃退スプレー」や、車のクラクションよりも大きな音を出してクマが近寄るのを防ぐ「ベアホーン」。なかでも撃退スプレーは、10月の紅葉シーズンを前に、入荷からわずか数日で売り切れたといいます。

モンベル仙台 甚野清英店長
「一番はクマに遭わないことが非常に重要なので、その対策品として人間が登山していることを、クマに分かってもらうためには、音を鳴らすことが重要。万が一出くわしてしまった場合、クマも驚いて向かってくる可能性があるため、クマ撃退スプレーで追い払うなど備えが必要です」

レンタルも行っていますが、10月の予約はほとんど埋まっているということです。

一方、クマ対策の制度も変わり始めています。9月から始まった「緊急銃猟」制度。市街地に出没したクマに対し、これまでは警察の判断で許可されていた「発砲」を一定の条件を満たした上で、市町村長の判断で可能とするものです。

山形県では鶴岡市と米沢市で、すでに2件、許可が出されたケースがありました。

山形・米沢市 近藤洋介市長
「クマがわなに入る可能性も、入らない可能性もあった。逃げる状況であれば、どこに向かってくるか分からないので、その時点で銃猟してほしいと、条件付きで発令した」

小池教授は被害拡大を防ぐためには、捕獲に時間を要する箱わなの設置よりも有効だとする一方で、各市町村の態勢を見直す必要があると指摘します。

東北農工大学 小池伸介教授
「専門知識を持った専門的な職員を配置する。かつ市町村なり行政で捕獲に従事する人を雇用していくようなことをしていかないと。猟友会も高齢化が進んできているので、長期的には人材をどうやって育成して、配置していくかということを考えていかないと、市街地出没には対応できない」

これ以上、人的被害を増やさないために…抜本的な対策を急ぐ必要があります。

仙台放送
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