”サ活”という言葉に代表されるように近年ブームとなっているサウナ。このサウナを通して地域経済の活性化を目指す取り組みが始まった。活用したのは役目を終えた路線バスだ。

サウナの聖地にサバス誕生

フィンランド発祥と言われるサウナ。

心身のバランスが取れた状態を意味する「ととのう」は2021年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたほか、最近では災害時に風呂代わりに活用できるトレーラー式のサウナも開発されている。

移動型サウナバス「サバス」
移動型サウナバス「サバス」
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こうした中、8月28日に静岡県静岡市でお披露目されたのが移動型のサウナバス、通称・サバスだ。

元々は静岡鉄道の路線バスとして使用されていた車両を5カ月かけて改良した。

なぜ、バスでサウナなのか?

“静岡らしさ”にこだわる

段々茶畑をイメージしたスノコの配置や水のかわりにお茶を熱した石にかけて蒸気を浴びるロウリュなど、静岡らしさにこだわったというサバスは兵庫県、そして神奈川県で運行している車両に続いて全国で3台目になる。

サバスの内部
サバスの内部

静岡鉄道未来事業創造部の二村昌輝 部長は「静岡には富士山・駿河湾・お茶などさまざまな観光資源があるが、オーバーツーリズムと言われている状態でありながら観光の消費額が上がっていない。こうした課題の解決に向けてサウナをきっかけに人を呼ぶ強烈なコンテンツを作った」と話す。

9月に御殿場市で開催されたイベントには、県内だけでなく関東や関西方面から100人の愛好家が集結。

サバスの体験会参加者
サバスの体験会参加者

参加者からは「茶畑をイメージした椅子で静岡を感じられる室内が良かった」「初めて入るが他にない空気、雰囲気が味わえてとても良い」「お茶の良い香りが漂ってくる中でのバスという空間が、今までに体験したことがないサウナだった」といった声が聞かれ、反応は上々だ。

条件付きで条例緩和

だが、実現までにはいくつかのハードルが存在した。

中でも最大の障壁が公衆浴場に関わる静岡県の条例で、サウナは外から中の様子が見えないようにしないと設置が認められないというものだ。

鈴木知事とサバス関係者
鈴木知事とサバス関係者

そこで、二村さんたちは「(サバスは)富士山や駿河湾を見ながら、川の近くや茶畑の中など自然環境を生かして観光に活用できる」と条例の緩和を鈴木康友 知事に要望。

その結果、水着などの着用を条件としてサバスの運行が可能になった。

地域経済活性化へ発車オーライ

県によると、宿泊費や飲食費など旅行者が旅先で使う支出額を示す観光消費額は全国の平均が4万4034円。

観光消費額(静岡県調べ)
観光消費額(静岡県調べ)

これに対し、静岡県内は2万2529円と大きく下回っている。

このため、二村部長は「イベントで静岡に足を運んでもらうことももちろん、ツアーの中にこのサバス体験を組み込んだウエルネスツーリズムを売ることやホテルや飲食店と連携をすることによって、消費額を増やしていく取り組みにチャレンジしたい」と意気込む。

静岡らしさを活かした新しい形のサウナは観光資源になり得るのか…目指すは地域経済の活性化だ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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