かつて筑豊の産炭地として賑わった福岡・田川市で、廃校となった小学校を再利用して、新たな観光名所として注目を集めている“給食室”を取材した。
生まれ変わった筑豊の廃校小学校
訪れたのは、2014年に廃校となった田川市の旧猪位金小学校跡。佇まいは、昔のままだが、校舎の中は、大きく様変わりしている。市が、跡地を活用して『音楽を中心とするコンテンツ産業の創出・集積』を目指す『いいかねPalette』をオープンさせたのだ。

施設内には、本格的な音楽スタジオや宿泊施設なども完備され、“小学校内”は、幅広い用途で利用できる複合交流施設となっている。

中でも注目されているのが、かつての『給食室』だ。北向きの暗い部屋が、今では『おいとま食堂』という名前のお洒落な飲食店に変貌している。

店内は、『光と闇』をコンセプトに、黒を基調とした内装が施され、自然光と間接照明を使って落ち着いた雰囲気の空間を作り上げている。

そんな『おいとま食堂』の看板メニューが、拘りの『チキン南蛮定食』(ドリンク付き 税込み1580円)だ。

揚げ物でも“重く”ならないよう、高タンパクな胸肉を使っているのが特徴で、独自レシピを開発している。「柔らかくて美味しかった」と女性客の反応も上々だ。

コロナ禍だから叶った施設内飲食店
しかし、なぜ、この場所に新しい飲食店を出店したのか?『おいとま食堂』の責任者、山野真実さん(37)によると、宿泊業をメインに2017年にオープンした『いいかねPalette』だが、3年後の2020年にコロナ禍が直撃し、施設全体が休業を余儀なくされた。

そこで以前、飲食関係の仕事などの経験があった山野さんが、「来客の動機として、飲食は欠かせない存在。なので、集客の意味でも飲食店の開業を提案した」というのだ。

開業資金は、コロナのセーフティ融資で得た資金。それを元に、『いいかねPalette』の長年の課題だった施設内飲食店の開設に踏み切った。山野さんは、それまで手付かずになっていた『給食室』に目を付け、すぐに改装に着手。

2021年の店舗オープン以来、他にはない魅力がSNSなどで広まり、地元だけでなく、県外からも客が足を運ぶ人気スポットに成長した。山野さんは、オープン以来、来客数は、右肩上がりだと胸を張る。
店名『おいとま』に込めた思い
「近所のお母さん達も来てくれて、ゆっくりした時間を過ごしてもらっている。何かそういう手伝いができたら嬉しい」と山野さんは、店舗を開業して良かったと嬉しそうに話す。。

そんな山野さんの思いは、店の名前にも込められている。「『おいとま』って、『帰る』という意味合いがあるが、ネガティブに捉えるのではなく、『私たちの店に帰ってくる』という意味合いで付けたところがある」と話す山野さん。いつでも帰って来てゆっくりした時間を過ごしてほしいという願いは、地域の活力となる場所にも繋がっているようだ。
(テレビ西日本)