ペットは大切な家族。しかし、災害時には「一緒に避難するかどうか」「避難所でどう過ごすか」という現実的な課題に直面する。
飼い主が日頃からできる備えとは?ペット災害危機管理士の上野貴子さんに話を聞いた。
ペットも「一緒に避難」が基本
広島県内で飼われているイヌやネコは約41万匹(2021年時点)。3世帯のうち1世帯がイヌやネコを飼っている計算になる。大切な家族を守るには、日頃からの備えが欠かせない。

東広島市を拠点に“ペット防災”の講演などを行う上野さんがまず強調するのは「命を守る備え」だ。
「避難所に届く物資は人用が優先。だからこそ、ペットフードは常に1カ月分を備蓄しておきましょう。心臓や腎臓が悪く療法食や薬が必要な子は、2~3カ月先までの余裕を持っておくと安心です」

そして災害発生時に忘れてはならないのが「ペットと一緒に避難する」こと。
「ペットがいるから避難しない、置いて行くというのは絶対に避けてください。環境省や広島県も『同行避難』を呼びかけています。能登半島地震でも、倒壊した建物から亡くなったネコが見つかる例がありました」
広島市の場合、212カ所ある指定避難所すべてで原則ペットの受け入れを可能にしている。ただし、多くはクレート(持ち運びできるハウス)に入れて屋外の専用スペースや軒下での対応となり、飼い主と同じ部屋に一緒に入れるわけではない。各市町で条件や対応が異なるため、事前の確認が必要だ。
災害時に役立つ「しつけ」
もう一つ大切なのが「日頃のしつけ」。避難所という慣れない環境はペットにとって強いストレスになる。環境の変化で排せつができなくなったり、食欲を失ったりする子もいるという。
ドッグトレーナーでもある上野さんは、災害時に役立つ「しつけのポイント」を3つあげる。
①いろんな場所に慣れておく
「クレートごと車に乗せて外出するなど、環境が変わっても静かに過ごせるようにしておきましょう。クレートに慣らすにはフード入りのペットボトルやおもちゃが有効です。最初は扉を開けたまま出入り自由にし、集中して食べられるようになったら5~10分扉を閉める。まだフードに集中している間に開けてあげるのがポイントです」

②トイレトレーニング
「排せつ行動に合わせて『ワンツー、ワンツー』などと声をかけ、成功したらご褒美を与えることを繰り返します。やがて声かけで排せつできるようになれば、環境が変わってもペットシートの上でできるようになります」

③“呼び戻し”のコツ
「災害時にはパニックで逃げ出すことがあります。ペットを呼び戻す練習をしておきましょう。練習方法は、呼ぶ前にご褒美を見せて両足の間に置き、それを食べている間に触って逃げなければ首輪やハーネスをつかみます」
取材した河野アナが実践すると、呼び戻したイヌがご褒美を食べている間に首輪をつかむことに成功。上野さんは「追うと逃げるので、呼んだら“捕まえるまで”をできるようにしてほしい」と話す。

しつけは一朝一夕には身につかない。幼い頃からの習慣化や、必要に応じてしつけ教室の力を借りるのも有効だ。
非常時こそ試される「家族の絆」。日頃のしつけが防災につながる。いざという時、人もペットも安心できるように備えておきたい。
(テレビ新広島)