神戸市中央区のマンションで、女性が殺害されてからおよそ1カ月。この事件で浮き彫りとなったのが、マンションのオートロックをすり抜ける「共連れ」の危険性だ。

「共連れ」とは、オートロックを解錠する際に、マンションの住人と一緒に中へ侵入する手口。

「共連れ」に遭った経験がある女性を独自取材すると、「共連れ」の恐怖が明らかに。

また、AIセンサーで「共連れ」ができないオートロックも紹介。「共連れ」の実態とその対策に迫った。

マンションのオートロックをすり抜ける“共連れ(ともづれ)”
マンションのオートロックをすり抜ける“共連れ(ともづれ)”
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■神戸の事件の容疑者は“共連れ”の常習者

8月20日、神戸市中央区のマンションで24歳の女性が殺害された事件。

殺人の疑いで逮捕された男(35)は、「好みのタイプで後をつけた」と話していて、その際にとったという行動が…「共連れ」。

“共連れ”とは、オートロック付きのマンションに、住人と一緒に中に入ることで、不正に侵入する手口。

男は、“共連れ”の常習者で、2020年と2022年にもそれぞれ別の女性のマンションに同じ手口で侵入していたことが分かっている。

“共連れ”とは
“共連れ”とは

■4人に1人を超える人が“共連れ”に遭う 相次ぐ“共連れ”を入り口とした凶悪事件

こうした“共連れ”を入り口とした凶悪事件が後を絶たない。

9月1日、東京都世田谷区で起きた女性殺害事件でも、逮捕・起訴された男は犯行前、“共連れ”で7回も侵入していた疑いが…。

さらに、ことし6月、大阪府内で発生した女性への性的暴行事件で“共連れ”が行われていた。

パナソニックが実施した調査では26.6%、つまり4人に1人を超える人が、「共連れ」に遭ったことがあると回答したのだ。

街で聞いてみると…。

高校1年生:(マンションへ)一緒に入ってこられるみたいなのは、めっちゃあります。誰か分からない人。

会社員(20代):自宅のマンションでエントランスにおじさんがいて、私も住人なんで鍵でオートロックを開ける作業をして、開いた瞬間に一緒に入ってくる。

(Q.一緒のエレベーターに?)
会社員(20代):乗りました。気持ち悪いですけど、そういうもんなのかなって。

つまり4人に1人を超える人が、「共連れ」に遭ったことがある
つまり4人に1人を超える人が、「共連れ」に遭ったことがある

■「死を覚悟」“共連れ”に会った女性の生々しい体験

取材を進めると“共連れ”に遭い「死を覚悟した」と話す女性に接触することができた。大阪市に住む34歳のカナさん(仮名)だ。

“共連れ”に遭ったことがある カナさん(仮名):ずっと何か見られてる感じがあったので、ちょっと普通じゃないなと感じていました。

およそ6年前のある日の夜、自宅近くのコンビニエンスストアで買い物をしていた時だった。

40代くらいに見えたという男。カナさんは買い物を終え、後をつけられているとは気が付かないまま、歩いて帰宅した。

自宅マンションに着くと…。

“共連れ”に遭ったことがある カナさん(仮名):オートロックを開けたと同時に一緒に入ってこられたので、『住人の方かな』と思ったんですけど、後ろを見たら、さっきの記憶にある男性だった。

違和感を覚えたカナさんは、オートロックの外へ避難。男は1人でエレベーターに乗り、向かった先は最上階だった。

“共連れ”に遭ったことがある カナさん(仮名):(最上階は)オーナーの方が住んでいたかなんかで。『多分、住人の方じゃないのかな』っていうのは、そこで(分かった)。

“住人ではない”という疑惑が一気に深まったカナさんは、男との鉢合わせを防ぐため、階段で自室まで向かうが…。

“共連れ”に遭ったことがある カナさん(仮名):上からちょうど降りてきて、のぼっていく私と遭遇してしまいました。『もう死ぬな』っていうのは、一瞬思いましたね。

共連れ被害に遭った当時の状況を再現
共連れ被害に遭った当時の状況を再現

■「タイプだったのでついてきた」と男 女性は引っ越しを余儀なくされ「フラッシュバック」も

すると男はカナさんにこう言い放った。

男:タイプだったので、家まで付いてきてしまいました。

“共連れ”に遭ったことがある カナさん(仮名):このままだと何かされるという、命の危険を感じたのと、ここが自宅とバレてしまうのが嫌だったので、『友達の家に来たのですみません』って。

さらに男はカナさんに「連絡先を教えて欲しい」と迫る。

その場を収めるために連絡先を伝えると、男は立ち去っていった。

その後、引っ越しを余儀なくされたカナさん。「今でもこの時のことを忘れることはない」と話す。

“共連れ”に遭ったことがある カナさん(仮名):神戸のニュースは衝撃的で。フラッシュバックするような感じがあった。女性の方には警戒心を持って、対処する方法を色々考えて家に帰ってほしいとすごく思いました。

共連れ被害に遭った当時の状況を再現
共連れ被害に遭った当時の状況を再現

■「犯罪者は気付かない相手に攻撃」と専門家

相次ぐ“共連れ”の危険性について専門家はこう、指摘する。

防犯ジャーナリスト 梅本正行さん:オートロックを開けて、まっすぐエレベーターに後ろも気にしないで行くってことは、そこには危険が潜んでる。犯罪者っていうのは、気付かない相手に攻撃をかけてくる。気付くことが一番大事、早く気づけば気づくほど。

防犯ジャーナリスト 梅本正行さん
防犯ジャーナリスト 梅本正行さん

■マンション向けに開発 “共連れ”対策用の防犯セキュリティ

このような状況を受けて対策に乗り出す企業も。

セキュリティ関連の商品を手がける「セキュア」。8月末、ある商品の販売を始めた。

セキュア 平本洋輔取締役:これは“共連れ”を防止するために、施錠されている扉を顔で開けることができる認証機。

マンション向けに開発された“共連れ”対策用の防犯セキュリティだ。

“共連れ”対策用の防犯セキュリティ
“共連れ”対策用の防犯セキュリティ

■AIセンサーを使ってランプが点灯 音でも異常を知らせる

どのように防ぐのか。

まず、入居者は事前に顔を登録する。

記者リポート:顔をかざすだけで、オートロックが解除されます。

顔認証でのオートロック解除というのは、これまでもあったが…2人で扉の前に立つと…。

記者リポート:認証制限中となって、扉が開かなくなりました。

セキュア 平本洋輔取締役:認証機の前に複数人いると、認証できないモードに自動的に切り替わる。

この認証機、AIのセンサーを使って「人数」をカウントしていて、“1人ずつしか”入れない仕組みになっている。

仮に“共連れ”を許してしまった場合でも、“複数人”が同時に入ると「ランプが点灯」。

さらに…「音」を使って入居者に異常を知らせることもできる。

今、マンションの管理会社などから、問い合わせが相次いでいるということだ。

セキュア 平本洋輔取締役:神戸の事件きっかけに、マンションでも安心安全な環境作りに寄与するのではないかと。発報とかアナウンスによって、不審者っぽい人がいるな、不安だなというのを、自分が気づくことによって、一緒にエレベーターに乗らないなど予防ができる。

身近に潜む“共連れ”。今一度、自身の行動を見直す必要がある。

「音」を使って入居者に異常を知らせることも
「音」を使って入居者に異常を知らせることも

■自衛も必要だが、テクノロジーの進化にも期待

4人に1人以上は経験したことがあるという“共連れ”。防犯ジャーナリストの梅本さんによると「エントランス以外も進入路になるため注意が必要だ」という。

例えば、非常口や、駐車場・駐輪場とマンションとの連絡口なども犯罪者が入ってくる恐れがあるということだ。

菊地幸夫弁護士:多くのマンションにあるように、オートロックでカードキーや普通のキーで、自動ドアが開く。ところが自動ドアは、一旦開くと次に閉まるまで、10秒とか15秒とかかかるので、“共連れ”ができちゃうわけですよね。

だから逆に不便なようでも、1人1人が1回ガチャっとドアを開けて、自分で閉めて中に入るとか、便利なようでも、セキュリティと言っても、一旦中に入ってしまうと、今度はマンションって密室になってしまい、すぐ助け求められない。

セキュリティをテクノロジーで精度を高めていくことを、企業にやっていただきたい。

関西テレビの谷元アナウンサーは日頃から「帰り道に何度か後ろを振り返り、イヤホンやスマートフォンは使わない。それからエントランスでは必ず入るときに周りを見て、異変がないかを確認している」という。

複数の対策を合わせて講じていくことも大切だ。

(関西テレビ「newsランナー」2025年9月25日放送)

菊地幸夫弁護士
菊地幸夫弁護士
関西テレビ
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