秋田県内有数の観光地、仙北市の田沢湖周辺でいま、新たな乗り物の実証実験が行われている。16歳以上は誰でも運転が可能なこの乗り物。観光客の移動手段の不足が課題となる中、新たな足として期待が高まっている。
「二次交通」の少なさが課題

2024年の1年間に訪れた外国人観光客の数を都道府県別にみると、100万人以上は東京・大阪・名古屋の周辺、いわゆる三大都市圏に集中している。秋田県は11万9610人で全国44位だった。
地域によって外国人観光客の数に偏りが生じている原因の一つが「二次交通」の整備の差だ。
二次交通とは、拠点となる空港や駅から観光地までの交通手段のことで、秋田などの地方では路線バスの本数が少ない、三大都市圏と比べて移動手段の選択肢が少ないといった課題がある。
モビリティサービスを全国に
こうした課題の解決につなげようと、秋田・仙北市の田沢湖周辺で9月13日から“自転車型の電動モビリティ”の実証実験が行われている。

電動キックボードと同じ「特定小型原動機付自転車」に分類され、16歳以上は免許がなくても運転できる。

ハンドル部分にあるスロットルをひねるだけで前に進み、ブレーキは自転車と同じで難しい操作はいらない。
実証実験は、移動手段の課題解決や地域活性化を目指す経済産業省の事業に採択され、東京のスタートアップ企業・DXTRL(デクストラル)が担っている。
カーシェアリングやシェアサイクルなどのモビリティサービスは現状、都心中心に展開されている部分が大きく、日本全国に広げていけないかという点では課題意識があった。

そこで「自分たちで車両を抱え込む形ではなく、地域の人たちに協力してもらいながらモビリティサービス自体を根付かせられるようなサービスをつくっていこうと立ち上げた」とDXTRLの佐久間俊輔代表取締役CEOは語る。
安定した乗り心地 風を感じて湖畔巡りを
車両の予約や料金の支払いは、専用のスマートフォンアプリで行う。料金は1時間1100円で、予約アプリは日本語と英語に対応しているので、外国人観光客でも安心して利用できる。

1回の充電で走れる距離は100キロほど。田沢湖の外周は約20キロなので、余裕を持って一周することができる。
乗り心地はかなり安定していて、道路のでこぼこや水たまりも気にせず進むことができる。座って運転できるため、電動キックボードよりも楽に走れる。
最高速度は時速20キロ。湖畔の風を感じながらゆったり走ると、車では見落としがちな田沢湖の様々な表情を楽しむことができる。

車両は、田沢湖周辺の宿泊施設や飲食店など9カ所に計25台設置されている。
田沢湖観光の新たな足として期待
単なる移動手段ではなく、移動の道中も楽しめる新たな乗り物に、仙北市の担当者は期待を寄せている。

仙北市企画部・泉谷衆次長:
田沢湖エリアでは、路線バス・市民バス・タクシーと主に3つの系統が動いているが、木に例えると幹の部分は良いが、枝葉の部分まで二次交通を行き渡らせるのが難しい状況。実証実験によって、枝葉の部分まで観光客や市民が広い選択肢を持って行くことができるように期待している。

実証実験は、雪が降り始める11月下旬まで行われる予定で、新たな電動モビリティが田沢湖観光の定番として根付くのか、今後に注目だ。
(秋田テレビ)