いよいよ迎えた実りの秋。新米が店頭に並ぶこの時期、米価の価格高騰に歯止めはかかったのか。

新米の販売価格 2024年の1.5倍

福岡市内のスーパー『エムズ 美和台店』を訪れてみると店頭には、待ちに待った新米が並んでいた。ただ、価格は税込み4500円超えだ。この店では新米の販売価格が2024年の1.5倍にも上るという。

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とどまることを知らない“令和のコメ騒動”に店長の久松浩一さんも「できるだけ安く売りたいが、仕入れ価格が高い分、赤字で売るわけにもいかないので…」と頭を抱えていた。

あらゆる物価が上がり続けるなか、消費者は「新米が出ると思って、値段がもっと下がると思ったけど、全然、下がらないので、ちょっとがっかりです」(女性客)「季節的には、おいしいコメが食べられるときなのに、もっと食べたいのが本音だけど、なかなかそうは行かない」(女性客)と一様に肩を落とす。価格高騰に落胆する声が相次いでいた。

生産者「米価は30年前に戻った」

一方、生産者はどんな思いを抱いているのか。JAグループが主催した水田農業の現地視察で話を聞いた。

農事組合法人『西小田』の藤井徳浩さんは「今年は今のところ目視でしか判断できないんですけど、目視だと前年並み以上じゃないかな」と話す。

この法人では、福岡県産の銘柄米『元気つくし』を栽培。黄金色に実った稲穂は、9月30日から収穫を始めるという。

2024年並みの豊作が見込まれているが、コメの価格高騰について聞くと、藤井徳浩さんは「米価が戻ったというかたちだと思っています。1990年や2000年ぐらい。30年前に戻ったということです」と話す。

農林水産省によると主食用米の価格は1993年産で60キロあたり2万3600円余り。

その後、食生活の変化に伴う消費者のコメ離れで、需給バランスが崩れ、価格の下落傾向が続いたが、昨今の“令和のコメ騒動”で、2024年産は2万4800円余りに上昇。

生産者からすると「ようやく戻った」という感覚なのだが、農機具や燃料、資材の値上がりなどで経営は依然として厳しい状況に変わりはないという。

「農家を支えたいし食卓も守りたい」

こうした現状についてJA福岡中央会の乗富幸雄会長は記者会見で「農家は赤字で、やっぱり我慢をされてきたわけですから、再生産ができる苦労が報われるような価格にお願いしたいというのが私の考えです」と述べた。

値上がりに理解を求める一方、消費者の「もっと安く」という声もあるコメの価格。「農家を支えたい」と「食卓を守りたい」という双方の思いの間でJAは、“板挟み”の対応を迫られている。

(テレビ西日本)