一般的な企業や公務員と比べて定年が早い自衛隊。こうした中、退職する自衛官に熱い
まなざしを向けるのが運送業界です。そのワケとは?
静岡県御殿場市にある陸上自衛隊・駒門駐屯地を走る大型バス。
これは、国土交通省の呼びかけにより自衛隊と富士市にあるタクシー会社が共同で開いた運転体験会です。
ハンドルを握っているのはもちろん自衛官。
いずれも来年定年を迎える12人です。
ほとんどが大型バスの運転は初めてでしたが、これまでに任務で大型車両の運転には慣れているとあってすぐにコツをつかみます。
シンフジハイヤー・三澤賢治 社長:
こんなすばらしい人材はない。もし採用できるなら全員採用したい、このような気持ちでいっぱい
退職自衛官に熱い視線を送る運輸業界。
いったいなぜなのか?
自衛官の定年年齢は階級に応じて55歳から60歳。
一般企業や公務員と比べて早く、第二の人生に向けては再就職が欠かせません。
一方で慢性的な人手不足が悩みの種となっている運輸業界。
県内でもバス会社が説明会を兼ねた運転体験会を開くなど人材の確保や発掘に向けた取り組みが進められている中、国土交通省では2024年から防衛省との連携を始め、2025年7月には退職した自衛官の雇用拡大に向けて運輸や観光に関係する業界団体に協力を依頼しました。
こうした中で開かれた今回の体験会。
大塚雅勝さん:
イメージしているより前へ頭を出してハンドルを切ってもらえれば普通に曲がっていく
運転を指導していた大塚雅勝さんも元自衛官です。
大塚さんが再就職したのは1年前。
現在はスクールバスや貸し切りバスの運転を担っています。
元自衛官・大塚雅勝さん:
ずっと車を運転するのが好きで自衛隊が終わった次の職業も車関係で、景色(観光)や人との付き合いなどをやっぱりやっていきたいなと思った
大塚さんは現役自衛官の時代に任務を通じて大型免許や大型特殊免許を取得。
さらに再就職後、観光バスなどを運転できるように会社の支援を受けて大型の2種免許も取りました。
元自衛官・大塚雅勝さん:
私も自衛隊で大型を乗っていたので、そんなに難しく考えなくても先輩たちが丁寧に教えてくれたので、すごく楽しくやっている
再就職先の会社もまた、即戦力として大塚さんのスキルを高く評価しています。
シンフジハイヤー・三澤賢治 社長:
規律を今まで守ってきた人たちなので、規律は守るし挨拶もする、人間的に素晴らしいものを持った人たちだと思う。退職自衛官は人材の宝庫だと思っている
元自衛官・大塚雅勝さん:
自分でハンドル握るのと周りから見るのは全然違うので、(退職予定の自衛官に)そういうことを体験してもらい、バス業界に入ってもらう、違う業種でも構わないがトラックなど大型に乗ってもらいたい
2025年度、定年を迎える隊員は陸海空あわせて8100人に上ると言われている自衛隊。
人手不足に悩む業界と任務を通じて様々なスキルを持つ退職自衛官とがWin-Winの関係になる体制の構築が求められています。