「知っておきたい!気象・防災のキホン」
気象予報士と防災士の資格を持つ伊藤瞳アナウンサーがお伝えします。
今回のテーマは「台風」です。宮城県内でも甚大な被害が出た2019年の東日本台風から10月で6年になります。
今年は、日本近海の海水温が高いので、今後10月に入っても台風が強い勢力のまま接近する可能性もあります。
台風の威力や宮城で台風による被害が出やすい条件、対策などをお伝えします。
【キホン1】台風の強さ
熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びますが、このうち北西太平洋または南シナ海にあって最大風速が秒速17.2m以上に発達したものを「台風」と言います。
台風は「非常に強い」「猛烈な」といった言葉で表現されますが、これはイメージではなく具体的な基準があります。
最大風速が秒速33m~44m未満…「強い」
最大風速が秒速44m~54m未満…「非常に強い」
最大風速が秒速54m以上…「猛烈な」
台風情報は、この部分にも注目してその勢力を把握してください。
宮城野区にあるハウスメーカーの施設では台風の強さを体験できます。
暴風や大雨に対する住宅の耐久性をテストするための施設です。
台風を想定した秒速30mの風と1時間120mmの雨を体験しました。
伊藤瞳アナウンサー
「いきなり傘が壊れました。ものすごい勢いで雨が体に吹き付けてきます。痛い。前を向くこともできません。風も強いので堪えていないと体が押し倒されそうになります」
立っているだけで精一杯。視界も遮られて屋外にいる危険を感じました。
気象庁は風速30m程になると細い木の幹は折れて倒れたり看板が落下し飛んできたりする危険があるとしています。
【キホン2】宮城県と台風
県内では、平成以降、土砂災害や洪水など甚大な被害をもたらした台風の到来が4回ありました。
これらの条件を見比べると、2つの共通点が見えてきました。
まず一つ目、4枚の天気図、どれも宮城付近に前線があります。
秋は秋雨前線が停滞しやすい特徴がありますが前線があるところに台風が接近すると、前線に向かって台風からの暖かく湿った空気が流れ込み、前線の活動が活発になる傾向にあります。
つまり、台風接近前から大雨になり、被害が大きくなる可能性があるのです。
二つ目が進路の共通点です。過去4つの進路を色分けしましたが、どれも太平洋側から北東に進むルートをとっています。
この場合、台風の風向きにより東の海上からダイレクトに暖かく湿った空気が宮城へ届きやすくなり、大雨になる危険性が高くなるのです。
必ずしもこうなるとは限りませんが、台風発生の際には事前の備えのためにも注目しておくと良さそうです。
【キホン3】被害と対策
台風の際には大雨により土砂災害や洪水・浸水の危険も高まります。
2019年の東日本台風の際は阿武隈川や吉田川の流域で大規模な氾濫が発生。
県内の死者・行方不明者は22人にのぼり、最も被害の大きかった丸森町では家屋などの全壊・半壊が1000棟を超えました。
また県内の都市部にも危険はあります。
伊藤瞳アナウンサー
「青葉区荒巻にあるアンダーパスです。路面が低くなっていて大雨の際、水が流れ込みやすい構造になっています。冠水に注意が必要です」
東日本台風の際には仙台市内のアンダーパスで車が水没し、死者が出る事故も起きています。
仙台駅西口周辺ではアスファルトやコンクリート舗装で地面に水が浸み込みにくくなっていて、大雨の際、たびたび浸水する被害がありました。
こうした被害を防ごうと、仙台市は五橋公園から広瀬川に流れる大規模な雨水管の整備を2020年から行っています。
伊藤瞳アナウンサー
「直径10.5mもあるこちらの場所に各所から雨水が流れ込み合流します。そしてその雨水が直径2.6mもある雨水管、大人でもすっぽりはまることができる大きさです。この雨水管に流れこんできて広瀬川につながっていくということです」
完成すれば、最大で1時間当たり52ミリの記録的な大雨に対しても、浸水被害が発生しない見込みです。
今年度末には一部を除いて使用が始まる予定ですが、市の担当者は引き続き一人一人の対策も必要だと話します。
仙台市管路建設課 柴田誠主幹
「1時間あたり100mm程度の雨が降ってしまうと、広範囲で浸水被害が発生することが想定されます。そのため各自、自分が住んでいる場所がどの程度浸水しやすいのか、過去にどのような浸水被害があったのか浸水リストを事前に把握しておくことが大切です」
そのために有効なのがハザードマップです。
地域の土砂災害や洪水・浸水リスクが分かります。
例えば青葉区の洪水・土砂災害ハザードマップ。
危険がある場所には段階ごとに色付けされていますが、指定避難所も掲載されています。
住んでいる場所の危険と、危険が迫った時どこに避難すべきなのか、災害が起きる前から理解しておきたいところです。
宮城県や各自治体のホームページに掲載されています。
一方で、気象庁には「リアルタイム」の危険度を示す「キキクル」というツールがあります。
危険度を5段階で示していて、自主的な避難の判断に役立てることができます。
平時はハザードマップ緊急時はキキクルを組み合わせて活用するのが有効です。
知っておきたいキホンまとめ
ポイント1 台風の強さを表す言葉は風速が基準ポイント
ポイント2 宮城での被害の傾向は台風×前線太平洋側から北東に進ルート
ポイント3 平時はハザードマップ緊急時はキキクルを確認
こうしたポイントを理解して台風から身を守りましょう。