中国・雲南省のホテルが、日本人であることを理由に、宿泊を拒否した動画が拡散され話題となっている。
なぜ拒否したのか、ホテル側の思惑とは。
■【動画で見る】中国で日本人宿泊拒否 防犯ブザーを鳴らし日本人宿泊客に「出ていけ!」 宿泊拒否したフロント係女性は“ヒロイン”に
■「われわれは日本人も、いかなる外国人も受け入れません」
この記事の画像(9枚)フロント係:われわれは如何なる日本人も受け入れません。
宿泊予定の女性客:あなた一人が政府の代表ではないでしょう?
これは11月6日、中国南部にある雲南省騰衝市のホテルで撮影された動画。
現地メディアによると、日本人と中国人がチェックインしようとしたところ、ホテルのフロント係の女性が「日本人は宿泊できない」と、宿泊を拒否したという。
別のスタッフ:もう一回“日本人お断り”って言って。
フロント係:われわれは日本人も、いかなる外国人も受け入れません。
別のスタッフ:政府の規定ですよ。
ホテル側は、「中国政府の規定により宿泊できない」というが…。
宿泊予定の女性客:ホームページには、いかなる国(の宿泊客)も受け入れると書いてある。
フロント係:勝手に決めたのではありません。われわれ、騰衝(とうしょう)はいかなる日本人も受け入ません。
宿泊予定の女性客:あなたは政府の代表じゃない。あなたの一言で泊めさせないなんて、あり得ない。
男性:怒らないで、怒らないで、落ち着きましょう。
■防犯ブザーを鳴らし日本人宿泊客に「出てけ!」
口論はしだいにエスカレート。すると、
フロント係:出てけ!
フロント係の女性が防犯用の警報を鳴らす事態に。
宿泊予定の女性客:録画しているようだけど、SNSに載せないで。
■「宿泊拒否」のフロント係女性は「愛国心」がある“ヒロイン”に
しかし、この動画は中国のSNSで拡散された。
すると、「愛国心がある」「みんなで騰衝市に旅行に行こう」など、ホテル側の対応に賞賛の声が集まり、ホテルには中国各地から大量の花や贈り物が届き、対応したフロント係の女性は、“ヒロイン”扱いされる事態に。
フロント係の女性:皆さん、こんにちは。私は騰衝の夏安甜(かあんでん)です。ホールには合わせて1030個のヘルメットが展示されています。皆さん、ご覧ください。
騒動の後、フロント係の女性はSNSでの露出が増え、日中戦争で死亡した兵士らを弔う記念館を案内する動画も投稿されたのだ。
■ホテル側は「忙しい」と取材拒否
今回の騒動の後、ホテルの予約サイトを確認すると、「日本人お断り」と表記されている。
しかし、中国政府は外国人観光客を呼び込もうと、どの宿泊施設でも外国人を宿泊させるよう指示を出している。
では、なぜ宿泊を拒否したのか。
ホテルを取材すると…。
(Q.なぜ日本人の宿泊を断ったのでしょうか?)
ホテル担当者:それに関しては、これ以上コメントはしません。仕事中ですので。
ホテル側は「忙しい」などと、拒否した理由については答えなかった。
この事態の背景には一体なにがあるのだろうか。
■中国国内でも問題視 動画が次々と消える
ホテルが日本人を宿泊させなかった理由は、やはり反日感情が原因なのだろうか?
上海支局 沖本有二支局長:はい。そうですね。その後、ホテルにもう一度電話取材をかけてみました。すると、『外国人はこのホテルには泊める資格がない』と火消しに走るような回答が返ってきました。
実際、このホテルの予約サイトを見てみると、はっきりと『日本人は宿泊することができない』と書かれています。つまりこのホテルは、日本人を少なくとも特別視しているのは確実だと言えると思います。
日本では、外国人という理由で泊めないとなると、法律違反になるわけだが、中国国内では問題になっていないのだろうか?
上海支局 沖本有二支局長:これが問題になっていると思われます。今、中国ではどの宿泊施設も『外国人を受け入れなさい』というお達しが出ているんですけれども、今回、ホテルがやったことというのはそれに明確に反しているんですね。
この数日、この問題の動画、そしてこの問題を報じるメディアというのが次々とネット上から姿を消していきました。この話題が、はるばる日本のメディアでもこうして報じられるようになったことから、おそらく何らかの指導があったのではないかなと思われます。
■「今のセリフもう一度言って」動画は宣伝目的で撮影か
なぜこのホテルは、『日本人宿泊拒否』としたのか?
上海支局 沖本有二支局長:そこがポイントなんですけれども、実はこのホテル、この夏にオープンしたばかりなんです。この動画を撮影している人は、明らかにホテルのカウンターの中にいます。
しかも、しゃべっているフロント係の人に、『今のセリフもう一度言ってください』とか、そういう指示まで飛んでいるんです。
撮影している人がホテルの関係者と見られる以上、おそらくこの動画というのは日本人宿泊客を拒否したということで、話題作りを狙った売名行為のようなものなのではないかなと考えてしまいます。
SNS上では、この行為について、中国の方から称賛するような声も投げられているのも確かなんですけれども、私が多くの中国の方と話した中では、宿泊拒否やこうした行為を称賛するというのは、眉をひそめる人、非難する人がほとんどでした。
私も中国で生活している日本人ですけれども、こうした声が大多数だとは思わずに、冷静に受け止め、過敏になりすぎないように気をつけた方がいいかなと思っています。
■中国の社会の中にある不満やストレス 閉塞感があるのは明らか
ジャーナリスト 安藤優子さん:こうした事態を見ると、記憶によみがえるのは日本人学校の男児への襲撃事件なんですね。中国全体なのか、それとも騰衝市の反日感情っていうのはここへ来てもう一度盛り返してるというか、新たに反日感情が盛り上がってるようなところはあるんでしょうか?
上海支局 沖本有二支局長:日本人を対象にしたものだけではなくて、中国は色々な事件も多発していまして、停滞している中国の景気のことなどもあって、みんなの鬱憤がたまっているというのは1つあると思います。そうした鬱憤を晴らす、ストレス解消の行為の一つがこうした反日感情を爆発させることなのではないかなという風に、現地にいる私たちは感じています。
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:今、中国の経済が低迷しているところは、私たちも注意して見ていかないといけないのかなと思うんですけれども、中国に住んでいて肌で感じるところもありますか?
上海支局 沖本有二支局長:この1年2年を見ていると、やはり事件が多すぎるというような感じがします。中国の社会の中にある程度の不満だったり、ストレスだったり、閉塞感、そうしたものがあるのは明らかだなと感じています。
ただ、それを必要以上に怖がって、何でも敏感になりすぎて、日本人は狙われていると思いすぎるのも、日常の行動に支障をきたしますし、それもまた違うのかなとも思っている非常に難しい状態です。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年11月13日放送)