福島県郡山市のJR郡山駅前で飲酒運転の車に10代の女性がはねられ死亡した事故の裁判で、被告の男に懲役12年の判決が言い渡された。

厳しい非難に値する 懲役12年の判決
判決によると、郡山市の池田怜平(いけだりょうへい)被告(35)は、2025年1月に酒気帯びの状態で車を運転した上、信号を無視して時速約70キロで交差点に進入し、大阪府から大学受験に訪れていた10代の女性をはねて死亡させるなどした。裁判は池田被告の信号無視が故意によるものか、危険運転致死傷罪の成立が争点となっていた。

9月17日開かれた判決公判。福島地方裁判所郡山支部の下山洋司裁判長は「赤信号を殊更に無視して交差点に進入したと認められ、危険運転致死傷罪が成立する」とした上で「アルコールが残っていることを自覚しながら運転するなど、あえて無謀な運転を継続した意思決定は厳しい非難に値する」などとして、懲役16年が求刑されていた池田被告に懲役12年の判決を言い渡した。
検察・弁護側の主張
裁判では池田被告の信号無視が「故意」によるものか?危険運転致死傷罪の成立が争点となっていた。
改めて検察・弁護側の双方の主張を整理すると、検察側は信号を確認する時間は十分にあり、飲酒などの影響により運転が出来ない事情は無く信号に従うことが十分にできる状況であったとして、故意による信号無視を主張。

弁護側は飲酒や眠気で注意力が散漫となり、事故直前にはエアコンの操作をして視線を落としていたなどと、信号無視が故意ではないと主張していた。
危険運転致死傷罪が成立
争点について裁判所は
●一切減速することなく一貫して加速していて、信号を意に介することなく赤信号でも無視して進行しようと考えていた
●事故前後の状況から酔いの程度がそこまで強いものであったとは考え難く、長時間目をこすったりエアコンのダイヤルをみたしたという点は不自然。
などとして、池田被告が「赤信号を殊更に無視した」と認め、危険運転致死傷罪が成立するとした。

今回の判決について刑事事件などに詳しい弁護士・滝田三良法律事務所の滝田三良代表弁護士は「妥当な判決。無謀な運転をすると結果が重大だって誰でも分かること。そもそも信号機を無視したら故意。青で進んで行ったというなら過失・故意ではないということを争えるが、信号無視したということは争えない事実」と語る。
担当記者の視点
裁判を取材した福島テレビ・丹野裕之記者は、判決が言い渡された時に池田被告の目からは涙が流れているようにも見えたが、終始姿勢は崩さず前を向いて判決の言い渡しを聞いていたと話す。

また、検察の求刑が懲役16年だったのに対し、判決は懲役12年。裁判所の判断については「検察側が求めた懲役16年は、これまでの同じような信号無視による危険運転致死傷罪の判例に照らすと最も重い部類の求刑だった。これに対し裁判所は池田被告に前科がないこと、任意保険で相応の賠償がなされる見込みがあること、また同様の危険運転事案の量刑傾向を踏まえて検討すると、最も重い部類に属するとまでは言えないとしたと」話す。
池田被告の弁護人は、控訴について本人と相談して決めるとしている。
被害者遺族がコメント
この判決を受けて、亡くなった女性の母親がコメントを出している。
【以下、コメント全文】
裁判所が、危険運転致死傷罪の成立を認め、私達家族の悲しみや、被告人を許せない気持ちを十分酌んでくださったことは良かったですが、それにも関わらず懲役12年というのはあまりに刑が軽いと思います。
池田怜平被告は、飲酒をしてスピードを出したまま4力所も信号無視をして娘の命を奪ったのにどうしてこんなに刑が軽いのでしようか。

裁判でも池田被告は危険運転致死傷罪の成立を争い、言い訳ばかりを繰り返し反省の態度は一切見られず、その態度を見て私達は怒りと悲しみを深めるばかりでした。
他の同種事件と比較して出した判決なのかもしれませんが、私たち家族にとっては大切な娘の命が奪われたのですから到底納得できないものです。
今後、危険運転の罪については更なる厳罰化を強く望むとともに、これ以上私達のような悲しい思いをする家族が出ないことを切に願います。

危険運転致死傷罪については、適用のハードルの高さや裁判所の判断のばらつきが問題視されていて、現在法改正に向けた議論が進められている。
(福島テレビ)