2年前、道路の中央分離帯に無許可で植えられていた3株のバナナ。別の場所に移されたのだが、その後、どうなったのか。

市道中央分離帯に“無許可バナナ”

2年前の2023年10月。福岡・久留米市の中心部を走る道路の中央分離帯。大きな葉を持つ植物が生えていた。そこだけ南国の風景だ。植物は3株のバナナ。たわわに実をつけていた。

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当時、現場を訪れた取材班の前に現れたのは、バナナに水やりをする男性。バナナを植えたという近くに住む江頭聡さん(53)だ。この市道付近でゴミのポイ捨てが相次いでいたため、景観を綺麗にしたいという思いからバナナを育て始めたという。

「綺麗にしたいと思っただけ。許可は得ていませんし、許可のとり方は知りませんでした」と話す江藤さん。善意でバナナを育て始めたというが、中央分離帯で植物を無許可で育てることは法律に触れる恐れがあった。「“無許可バナナ”です」と江藤さんは笑った。

この“無許可バナナ”は、全国的に注目を集め、久留米市は交通の妨げになる恐れがあることなどからバナナの伐採を要請。約1カ月後、“無許可バナナ”騒動は、収束した。

植えられていたバナナは、モンキーバナナという品種で、九州大学熱帯農学研究センターの濱岡准教授によると年中、実をつける可能性があり、株分けした場合も条件が揃えば2~3年で実をつけるという。

バナナは2年が経ってどうなった?

あれから2年が経過した“無許可バナナ”騒動の現場を再訪したが、バナナが植えられていた場所には、その跡形がない。小さなシバザクラが綺麗な花を咲かせていただけだった。近くの人に尋ねたが「バナナ?店の名前?バナナの木?」と既に忘れ去られているようだ。

取材を続けていると2年前、許可を得ずにバナナを植えた張本人、江頭聡さんの姿を見つけた。「分離帯を綺麗にしようから始まったけど無許可はダメだった」と後悔するように江頭さんは、中央分離帯を眺めた。

無許可バナナのその後について尋ねると「バナナ、上にあります」と住居の階段を上る。屋上にあったのは、植木鉢に植えられたバナナ。3歳の子どもが大のバナナ好きということで、バナナの株を自分でも育てているという。

朝の水やりが日課になっているという江頭さん。「ここで朝、タバコとコーヒーが“癒し”なんですよ。分離帯にない分はですね、この新しい芽が出てくるのが可愛らしいでしょ」と美味しそうに煙草の煙をくゆらせた。

2年の時を経てもしっかり育っていたバナナ。しかし肝心の実がついていない。江頭さんは「所詮、鉢ですから根が伸びませんからね」と苦笑するばかり。植木鉢で育てるには限界があるようだ。

しかし知人に譲ったバナナの株については「土手みたいな傾斜に植えられている。そこは庭みたいなことをいってました。栄養の吸収がいいみたいで」と株分けされた“無許可バナナ”が、とてつもない成長をみせているというのだ。

果たして実を付けているのか?江頭さんに案内してもらった。

バナナは“無許可”から“許可”へ

朝倉市に広がる田園地帯。風に葉を揺らしていたのは、江頭さんが譲ったバナナ。しっかりと根付いていた。その一角だけが南国のような趣だ。

背丈はヒトの背丈を優に超えている。2年前に比べ、かなり成長していた。

「最初は、バナナが育つか、半信半疑やったけど、育つと可愛いもんです」と話すのは、2年前に“無許可バナナ”を江頭さんから譲り受けた熊谷佳樹さん。江頭さんと高校時代からの知り合いだという。

バナナが植えられているのは熊谷さんの土地なのか?まさか、ここでも“無許可”なのか?「この間、見てもらったんですよね。あそこらへんが(自分の土地の)境界線。『無許可から無許可に』とかいわれよったけど、ギリギリセーフ」と笑う熊谷さん。しかし大きく育っていたが、残念ながら実をつけたことはないという。

2年前、大きな話題を呼んだ“無許可バナナ”。“許可バナナ”として、実をつける日も近いかもしれない。

(テレビ西日本)

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