8月に秋田県内を襲った記録的大雨からまもなく1カ月。深い爪痕が残る中、仙北市西木町でも実りの秋を迎えました。田んぼで稲刈りが始まったものの、どれだけ出荷できるかは見通せず、農家は「手放しでは喜べない」と複雑な思いを抱えています。

8月19日からの記録的大雨では、農作物の冠水や農業施設の損壊などが確認されていて、農林水産関係の被害額は9月10日午後1時までに46億9000万円余りに上っています。調査は現在も進められていて、被害額はさらに膨らむ可能性があります。

桧木内川が氾濫し、大きな被害が出た仙北市西木町上桧木内地区であきたこまちを生産する若松章二さんは、所有する5ヘクタールの田んぼのうち4ヘクタールが冠水し、稲が倒れるなどの被害を受けました。

流れ込んだがれきを撤去するなどして収穫の時期を待っていましたが、8月28日に取材した際は「いくらかは刈り取りできるのかなと思っているが、下に泥がたまっているので、どれだけ稲が頭を出すか、刈る時にならなければ分からない状態」と不安を口にしていました。

あれから2週間。若松さんの田んぼでは、12日に稲刈りが始まりました。

一部でまだ穂が青く、本来は9月下旬に刈り始める予定でしたが、冠水で倒された稲は腐りやすいことから地区で一番早く取り掛かりました。

若松章二さん:
「複雑な気持ち。喜びという感じではない。まるっきり喜んでいられない」

流れ込んだごみや木の枝などが残っている可能性があるため、慎重にコンバインを走らせます。

菅原咲子アナウンサー:
「大きながれきが残っていたり土砂が流れ込んだりしている部分には機械が入ることができないため、手刈りも交えながら作業を進めている。やはり例年以上に手間がかかっているようだ」

稲の下に紛れ込んでいた小さながれきを見つけては機械を止め、取り除きながら刈り進めるため、例年の3~4倍もの時間がかかりました。

若松章二さん:
「いくらか状態の良いところも残っているので、ある程度長くかかるけれども辛抱強くやらなきゃならないと思っている。これくらいのところはまだ良いが、がれきの上がったところはどんな方向になっていくのか、行政も力を貸してくれると思うが、来年の春のことが心配」

稲を刈り取ってもどれだけの量を出荷できるのかは不透明。それでも若松さんは前を向き、懸命に作業を続けています。

秋田テレビ
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